SAP ERPの移行先に悩む企業へ データの価値を迅速に引き出すポイントとは?――専門家に聞く

システム移行を見据えるSAP ERPのユーザー企業にとって大きな課題の一つが「今までSAP ERPに蓄積したデータをどう活用するか」だ。SAP S/4HANAをはじめ多くの選択肢を前に、企業が正しい判断を下すポイントとは何か。SAP製品に精通した専門家の答えとは。

» 2022年01月06日 10時00分 公開
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 「SAP ERP 6.0」が2027年に保守期限を迎えるタイミングを前に、SAP ERPユーザー企業はシステムの更新を求められている。SAPが掲げるロードマップに従えば「SAP S/4HANA」への移行が自然だが、基幹系システムの更新という大仕事を前に、移行先やアプローチに悩む企業は多い。

 SAP ERPの移行に当たって企業の課題になりやすいポイントは何か。移行によってSAP ERPに蓄積したデータから新たな価値を引き出すには、どのようなアプローチが適しているのか。SAP製品に関連したデータ活用の分野で豊富な経験を持つグランバレイの大谷泰宏氏(代表取締役社長)と、同社と協業関係にありSAP製品向けにデータ活用ソリューションを展開するクリックテック・ジャパン(以下、Qlik)の今井 浩氏(カントリー・マネージャー)に話を聞いた。

――2025年の崖やSAP ERPの更新問題を前に、日本企業はSAP S/4HANAへの移行においてどのような状況にあると見ていますか。

グランバレイの大谷泰宏氏

大谷氏(以下、敬称略): SAP ERPはグローバルビジネスを展開する企業にとって唯一無二とも言えるメリットを持つ製品ですが、使いこなすには専門知識を備えた体制が必要です。一方、これを機に他のSaaS(Software as a Service)型ERPなどに乗り換えてもいい企業もあるはずです。2000年以降、流行に乗って多くの企業がSAPを選びました。その中で、運用面での負担に悩んでいる企業は移行を再考するかもしれません。

 基幹系システムの刷新によって経営データをいかに管理し、活用しやすくするかも課題です。企業経営の基本となる資源(人、モノ、金、情報)を適切に分配して有効活用するのが、本来のERP(エンタープライズリソースプランニング)の考え方です。SAPが示すSAP S/4HANA移行のロードマップは、ERPの理想と経営情報の管理の両方を実現しようとするものです。

今井氏(以下、敬称略): ERPが急速に普及した2000年と比べると、企業の業務範囲は大きく広がりました。ベンダーもERPの対象業務を広げていますが、ERPの中枢はやはり基幹系システムです。IoTデバイスの活用や顧客接点の最適化などは、別のアプリケーションを組み合わせることで実行すべきです。SAP S/4HANAを導入すれば、それらとの連携や融合もやりやすくなるでしょう。

大谷: 自社サーバでのSAP ERPの運用は大変なので、SAP S/4HANAへの移行をきっかけに基幹システムをクラウド化して負担から解放されたいと考える企業も多い。クラウド化したのち、ERPから得たデータをいかに活用するのかも併せて考えなければ、デジタルトランスフォーメーション(DX)にはつながりません。

迅速な処理性能が強み QlikのSAP向けツールを使うメリットとは

――Qlikは、SAP ERPと統合できる最新の分析ソリューションを提供しています。これは何を実現するものなのでしょうか。

今井: QlikはSAP製品向け分析ソリューションとして「Inventory Management Accelerator」や「Order-to-Cash Accelerator」「Financials Accelerator」を提供しています。SAP ERPから生じたデータを可視化し、活用する機能をパッケージ化したものです。

Qlikの今井 浩氏

 上記の3ソリューションは、SAPのデータウェアハウスプラットフォーム「SAP Business Warehouse」(以下、SAP BW)の特性を意識した仕組みになっています。SAP BWは、SAP ERPのビジネスプロセスで生じたデータを蓄積してリアルタイムで可視化、分析します。SAP ERPのビジネスプロセスをデータ分析にまで拡張するのです。

 QlikのSAP向け製品はSAP ERPが持つビジネスプロセスのシナリオを維持したまま、SAP BWの課題である“古くなったデータ分析技術の更新”をクラウドで実現します。その上でSAP BWも含めた外部プロセスのデータも統合して可視化し、分析できるようにします。業種や業態によって異なるデータ分析のニーズに合わせて、SAP ERPのデータと「SAPサラウンド」といわれる周辺のCRM向けSaaSなどのデータも活用できるようにします。

Qlikは、ユーザーがSAP製品の専門用語に精通していなくても、希望するKPIやデータを迅速に引き出せる仕組みを持つ(画像提供:Qlik)

大谷: SAP BWは1997年に登場し、SAP ERPのデータをレポーティングしたり可視化したりする目的に長く使われてきました。しかしインメモリデータベースの「SAP HANA」が登場すると、状況が変わりました。それまで別々に実行されていたERPのOLTP(オンライントランザクション処理:Online Transaction Processing)とOLAP(オンライン分析処理:Online Analytical Processing)がSAP S/4HANAで実行できるようになり、SAP S/4HANAのデータを対象に「エンベデッド分析」機能を使ったレポーティングも可能になったのです。

 一方、SAPサラウンドのデータも扱いたい場合や分析したいデータ量が大きい場合は、外部データを含めたデータウェアハウスとして機能する「SAP BW/4HANA」が必要です。SAP BW/4HANAは「過去数年分のデータを蓄積し、傾向を分析したい」といったニーズにも応えられます。

 とはいえSAP BW/4HANAはやはりERPのデータを中心に扱いますから、操作の過程ではSAPの各種ツールも活用することになり、高いSAP製品リテラシーが求められます。大手企業でSAP製品専任チームのような組織が内部にないと活用は難しいでしょう。専任チームを持たない企業は、他の選択肢も考えるべきだと思います。

SAP ERPユーザーの細かいニーズに合わせた「最適な選択肢」を提供するために

――SAP S/4HANAに移行し、その上でSAP ERPとSAPサラウンドのデータも活用できるようにするにはどこに注意すべきでしょうか。

大谷: SIerやITベンダーではない企業にとって、高いSAP製品リテラシーを一から育てることは困難ですから、Qlikが提供するツールは有効な選択肢だと思います。グランバレイでもSAP製品とQlik製品を組み合わせて使っています。

 通常のBIのツールを使う場合、あらかじめ分析の仕組みを整え、集計処理を効率化する過程が必要です。Qlik製品は最初から高速にデータをアップロードでき、その上で極めて処理が速いのです。さらに、複数のデータソースに対する処理の速さも変わらない点には驚かされました。ERPのデータと外部の複数のデータを関連付けて可視化する場合は特に複雑な処理が必要になりますから、強みが光るのではないでしょうか。

 QlikのSAP向け製品は、データを分析して可視化するだけでなく、多数のソースから柔軟にデータを収集して加工する機能も備えています。データ分析に必要な一連のプロセスを一貫して実現できる点には期待しています。

QlikのSAP製品向け分析ソリューションは、SAP製品から得たデータを統合し、必要に応じてクラウドデータウェアハウスを利用して迅速に分析する(画像提供:Qlik)

今井: Qlikがグランバレイに協業を持ち掛けた背景には、SAPワールドとSAPサラウンドをQlikで融合し、データから得た価値をSAP ERPのビジネスプロセスにフィードバックすることでSAP製品ユーザーに多く価値を提供したいという目的がありました。SAP ERPのデータから引き出した価値をSAPサラウンドの領域にフィードバックしたいとも考えています。グランバレイは、SAP ERPのデータから得た価値を外部で活用することも得意です。だからこそ協業すべきだと思いました。

――SAP S/4HANAへの移行に迷う企業を、今後どのようにサポートしていきたいですか。

大谷: SAP ERPユーザーのうち、SAP製品リテラシーを高めるために十分なリソースを持つ大企業はSAP S/4HANAに移行し、SAPのアナリティクス製品でデータを活用してDXにつなげればいいでしょう。そこまでのリソースがない企業は、データ活用に当たってもう少し使いやすいツールを導入する選択もあると思います。

 データ活用に「こういうやり方でなければ駄目」という決まりはありません。企業ごとに事情もニーズも違いますから、それぞれに合った提案をベンダー側もできなければなりません。Qlikは企業の細かいニーズに応じて幅広い提案ができ、必要なツールを最適な形で提供できると考えています。

今井: SAP ERPとSAPサラウンドのデータを融合させて活用するニーズは、今後さらに広がるでしょう。大谷さんも、その領域でQlik製品の網羅性と柔軟性を評価してくれたと考えています。SAP ERPのユーザー企業が適切なツールを選べるようにするためにも、グランバレイにはしっかりQlik製品を検証してもらいます。複雑な処理を迅速に進められるQlik製品の強みをアピールしたいですね。

大谷: SAP ERPはミッションクリティカルな基幹業務を担っているので、可用性や信頼性の面で高いSLA(サービス水準合意:Service Level Agreement)を誇っています。この点はSAP BWをはじめとするSAP製品群でも同様です。

 データ活用において高いSLAを求めるならば、SAP製品で固める選択になるでしょう。ただしコストはかなり高くなることは覚悟しなければなりません。高いSLAよりも迅速性や操作の効率性を重視するのであれば、Qlik製品のような外部のツールを柔軟に使うべきです。データ活用の目的に応じ、SLAやコストを考慮して顧客に最適な提案をしたいと考えています。

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