DXの第一者が語る、「日本企業のデジタル変革に不可欠なのは“Digital-Oriented”への発想の転換」DXを次のステージに引き上げる新しい発想とは

「自組織のDXが進まない」と悩む経営者は多い。“人中心”で属人化と複雑化が進んだ制度やルール、業務プロセス、システムのコントロールを今すぐ「デジタルワーカー」に委ね、Digital-Orientedな業務や組織に転換することが必要だ。

» 2022年02月02日 10時00分 公開
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DXの第一人者が説く変革の極意

『Digital-Oriented革命 DXが進化した究極の姿を描く』(共著者:安部慶喜、柳剛洋、金弘 潤一郎/発行元:日経BP/発行年:2022年1月17日/税込価格:1980円)

 「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるが、期待したほどの成果が出ない」という声が企業の経営層から聞かれる。その原因は、日本企業特有の内部構造にある。

 伝統的な日本企業は、1つの事業に集中して量的に拡大することで大きく成長してきた。この経営スタイルを続けた結果、日本の組織には「人が業務システムの操作方法や制度、ルールを覚えて業務を回す」という人を中心とした考え方が根付いた。人を介して「組織の責任、権限」と「制度、ルール」「業務プロセス」「システム」が複雑に絡み合い、それが変革を阻害する。

 この壁を乗り越える上でカギとなるのが「Digital-Oriented(デジタルオリエンテッド)」への発想の転換だ。これまで人にインプットしていた要素をデジタルツールに移管して「デジタルを中心に業務を回す」ことで、変化に強い業務スタイルや組織を実現する。

 このアプローチを提唱するB&DXの安部慶喜氏(代表取締役社長)は2022年1月、長年にわたり企業のDXを支援してきた経験とノウハウを基に『Digital Oriented革命  DXが進化した究極の姿を描く』(共著者:安部慶喜、柳剛洋、金弘 潤一郎/発行元:日経BP/税込価格:1980円)を出版した。企業がDigital-Orientedに発想を転換することによって目指すべき姿を明らかにしている。本稿では、安部氏へのインタビューを通してDigital-Orientedのエッセンスを紹介する。

日本企業のDXが進まない根本的な理由

──各所で「日本企業のDXが停滞している」と聞かれますが、それについてどうお考えですか。

B&DX 安部慶喜氏

安部慶喜氏(以下、安部氏): 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が2021年6月に公表した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2020年版)」によれば、企業の90%以上がDXの進捗(しんちょく)状況について、「全社戦略に基づいて1部門で推進するレベル」「部門単位での試行・実施」「未着手」と答えています。

 多くの大手企業がすでにRPAを導入していますし、コロナ禍に伴って多くの企業がWeb会議ツールを導入してテレワークに移行しました。それでも企業がDXの停滞を訴える理由は、組織のトランスフォーメーションが進んでいないためです。

──デジタイゼーションやデジタライゼーションは進んでいるけれども、トランスフォーメーションにまでは至っていないということですね。それはなぜでしょうか。

安部氏: 日本企業の多くは、1つの事業に特化してスケールさせる「単一事業、量的拡大モデル」によって成功を収めてきました。そこで築いた経営スタイルを成功パターンとして続けた結果、日本の組織には「人が業務システムの操作方法や制度、ルール、組織の論理を覚えて業務を回す」という“人”を中心とした考え方が根付きました。人を中心とするが故に、「組織の責任、権限」と「制度、ルール」「業務プロセス」「システム」が複雑に絡み合って“がんじがらめの構造”が出来上がります。

 システムを変えるには業務プロセスも変えなければいけません。業務プロセスを変えるためには制度やルールの変更も必要です。制度やルールを見直すには部門を超えて組織の責任・権限や思想を変えなければなりません。これら全ての要素が「がんじがらめ」に硬直化していることが日本企業の変革を阻害しています。

──『Digital-Oriented革命』は、日本企業がいつまでも変われない理由をHuman-Orientedという言葉で説明しています。

安部氏: Human-Orientedな企業では、経営層が「デジタルによってビジネスや組織を変革しよう」と号令を掛けても、せいぜいシステムを少し新しくすることが精いっぱいです。1990年代にERPをはじめとする業務パッケージシステムの導入がブームを迎えました。ERPは標準的な業務プロセスに基づいて設計されているので、スクラッチ開発のシステムと比較してスピーディーに導入でき、保守やアップデートの手間を軽減します。欧米企業の多くはこのメリットを享受するためにERPに合わせて業務プロセスを標準化しました。

 日本でもERP導入は進みましたが、多くの企業はERPと各社固有の業務プロセスのギャップを埋めるためにアドオン機能を追加し、カスタマイズすることを選択しました。業務プロセスが変わるたびにアドオン機能が増え、保守やアップデートを困難にしています。これも「人にとって使いやすいことを重視する」日本的経営スタイルの所産でしょう。

図1 Human-Orientedなシステム(出典:B&DXの提供資料)

Digital-Orientedではデジタルワーカーが中心になって業務を進める

──Digital-Orientedの世界は、Human-Orientedの世界とどう異なるのでしょうか。

安部氏: これまで人が覚えていた組織の責任や権限、制度、ルール、業務プロセス、システム操作の全てをデジタルワーカーにインプットします。それにより、あらゆる情報はデジタルワーカーにひも付き、「デジタルが中心となって」業務を回すという考え方や構造がDigital-Orientedです。

図2 Digital-Orientedなシステム(出典:B&DXの提供資料)

──Digital-Orientedにより、既存の業務はどう変わるのでしょうか。

安部氏: 『Digital-Oriented革命』の中から一例をご紹介します。次の動画は、RPAやチャットbotなどで構成されたデジタルワーカーが、営業担当者とスマートフォンで対話しながら受注登録業務を遂行しています。

安部氏: 担当者がスマートフォンでビジネスチャットアプリを立ち上げ、「受注登録したい」とインプットすると受注登録が開始します。デジタルワーカーは担当者から取引先や受注内容の情報を引き出し、その内容を基に受注管理システムで在庫を確認して確保します。その後、担当者に売価と割引率を提示します。

 この取引の場合、通常の割引率は10%ですが、担当者は15%を希望しています。この割引率の適用には部長承認が必要となるため、デジタルワーカーが稟議(りんぎ)を申請します。担当者が稟議申請書を手入力する必要はありません。

 デジタルワーカーは担当者から希望納期を聞き出し、受注登録に必要な情報がそろいました。しかし、ここで与信オーバーが判明します。デジタルワーカーは担当者に「与信増額申請をするか」を確認し、回答次第で申請プロセスを開始します。最後に稟議申請と与信増額申請の承認内容を確認した上で、受注情報をERPに登録して作業を完了させます。

デジタルワーカーの介在により、人とシステムの密結合も解消される

──受注登録に必要なデータ入力や稟議申請も含めた業務プロセスの起動と実行は全てデジタルワーカーが行うわけですね。

安部氏: デジタルワーカーが人と対話し、意思決定を引き出しながら制度やルール(ガバナンス)に従って業務処理を遂行します。デジタルが業務の主体となることで入力ミスもなくなり、ガバナンスが強化されます。人はシステム操作や業務プロセスの習熟、実行といった負荷から解放されて、本来担うべき創造的な業務に注力できるようになるでしょう。

 人がシステムを直接操作しないので、「人の使いやすさ」を考慮するための要件定義が不要になり、短期間でシステムを導入できます。新しいシステムの操作方法をトレーニングする工程がないことで、システムを入れ替えるハードルも下がります。さらに言えば、スパゲティ状態になった既存システムを使い続けても問題ありません。ヒューマンインタフェースとしてデジタルワーカーを導入しながら、その背後にあるシステムを順次シンプルなものに置き換えればよいのです。

まずは間接業務からDigital-Orientedへ

──B&DXの支援を受けながらDigital-Orientedへの転換を進める企業事例を教えてください。

安部氏: あるお客さまは、経費申請のプロセスをデジタルワーカーに遂行させています。従業員がチャットbotに「経費申請したい」と話し掛けると、デジタルワーカーがOCRを起動して領収書の写真データを読み込み、使用用途や費目などの情報と併せて経費申請システムに入力します。将来的には社内のあらゆる稟議申請の作業をデジタルワーカーに移管したいと話しています。

 製造業のあるお客さまは、健康管理業務にデジタルワーカーを活用しています。デジタルワーカーがチャットbotを通じて従業員に体調や睡眠時間、作業場所などをヒアリングし、回答内容を健康管理システムに登録して管理職にレポートするという具合です。

──バックオフィス業務にデジタルワーカーを導入する企業が多いのですね。

安部氏: 全従業員が関わるバックオフィス業務から適用を開始することで、「デジタルワーカーによって業務を変革できた」というプラスの意識を全社で醸成できます。成功体験を幾つも積み重ねて、徐々に理解を得ることが重要なのです。これが最も抵抗感のない意識改革のアプローチだと考えています。

 全社共通のバックオフィス業務を変革した後に、各組織のオペレーション業務をデジタルワーカーに移管します。オペレーショナルな業務がなくなると人の役割が大きく変わり、従業員は「経営戦略」と「新規事業開発」「主力事業」、そして「Digital-Orientedな仕組みの設計や実装、運用」を担う組織に分かれてビジネスを回します。求められる人材や育成方法も今とは異なるでしょう。この点は、『Digital-Oriented革命』で詳しく説明しています。

DXのゴールは企業文化を変えること

──『Digital-Oriented革命』では、Digital-Orientedによって組織や業務プロセス、システムがどう変わるのかをさまざまな例を挙げて説明しています。また、4人の経営者がDigital-Orientedへの期待や持論を語っている他、「デジタルリーダーサミット」として9人の先端デジタル企業経営者がDigital-Orientedの可能性やそれがもたらす変化について議論しています。

安部氏: DXを進める企業の経営者の皆さまや、DXを支援するソリューションベンダーのキーパーソンに、Digital-Orientedを実現するための指針について忌憚(きたん)のない意見を伺いました。本書から日本のリーダーがいかに強い信念と確信を持って改革に取り組んでいるかが伝わると思います。

 これまでお会いした大企業の経営者に「貴社のDXのゴールは何ですか」と質問すると、ほとんどの方は「企業文化を変えること」だと答えます。単なる効率化や自動化を目指すのではなく、デジタルを活用して企業文化を変え、常に変革を目指すマインドを根付かせることが最終的なゴールなのです。

 私が提唱する“Digital-Oriented”は、そのための手段です。デジタルによって人の考え方や仕事のやり方を変革し、新たな価値を生み出すマインドを持った企業や人がこれからの時代を切り開くと確信しています。

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提供:B&DX株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年2月17日