インフラのスマート化を支える「デジタルツイン」 多様なデータを取り込む基盤導入を阻む「複数の壁」を解消

「デジタルツイン」の用途が製造業だけでなく社会インフラの整備、オフィス空間の管理などに広がりつつある。なぜ今、デジタルツインの重要性が増しているのか。デジタルツイン導入を成功に導くために必要なものとは。

» 2022年02月21日 10時00分 公開
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 IoT(モノのインターネット)が広がり、多くの設備に取り付けられたセンサーからデータを収集できるようになった現在、注目されるキーワードの一つが「デジタルツイン」だ。

 デジタルツインは製造業を中心に発達した技術だ。サイバー空間(仮想世界)にフィジカル空間(現実世界)と同様のモノやモノづくりの環境を構築し、設計や開発、品質保証、製造などのプロセスをシミュレーションする。実際にモノを作らなくても設計や開発の不具合を見つけられ、改善サイクルも速まり、製造コストや製品リードタイムが劇的に改善する。工場設備および電力設備、橋梁といった社会インフラの整備、オフィス空間の管理など、幅広く用途が広がりつつある。

 ただし、データを蓄積したからといってデジタルツインを使った取り組みをすぐに始められるわけではない。その過程では、現場のデータを迅速に集約して分析、活用する仕組みが不可欠だ。ニーズが高まる半面、現実の活用には課題も多い。デジタルツインを企業がスムーズに取り入れるためには、何をすべきか。

重要性を増すデジタルツイン そのニーズが広がり続ける理由とは

 NTTコムウェアは通信設備の維持管理を中心に社会インフラの設備管理をITで支えてきた。同社の湯本亮伯氏(ビジネスインキュベーション本部 ビジネスインキュベーション部 プロダクトマネージャー)は、デジタルツインの重要性についてこう話す。

 「社会インフラ設備は道路や線路、トンネル、橋梁、鉄塔、ダムなど多岐にわたり、ひび割れなどの不具合を見逃して事故が起これば、市民の生活や安全を脅かすことになります。スマートメンテナンスやデジタルツインの役割は、不具合を迅速に見つけて事故が起こる前に修復や工事を実施することで、サステナブルでレジリエントな社会の実現を支援することにあります。NTTコムウェアではインフラ分野における課題解決を通じて、これらに貢献するため2021年4月にSmartMainTechブランドを立ち上げました」(湯本氏)

NTTコムウェアの湯本亮伯氏 NTTコムウェアの湯本亮伯氏

 同社はこれまで、鉄塔や通信線といった通信設備のデータを組み合わせ、スマートメンテナンスに積極的に取り組んできた。「近年は図面や設計データ、ドローンの撮影画像、公共のオープンデータなどを使い、デジタルツインで鉄塔等の保守を実施し、点検の安全性や業務の効率向上の取り組みにおいて成果を出しています」と、湯本氏は話す。

 NTTグループである同社は、ITの全体最適化に向けた企画や提言、グループ共通システムの開発など「グループCIO補佐」の役割も担う。

 「NTTコムウェアが実践してきた経験やノウハウをグループで共有する他、グループ企業と連携してお客さま向けに提案しています。社会インフラ設備の管理は、持続的な社会を作るために不可欠な取り組みであり、企業からのニーズが特に高まっています」(湯本氏)

デジタルツインを活用したい企業に立ちはだかる3つの落とし穴

 デジタルツインに対するニーズが高まる中、湯本氏によれば、その実現には幾つか課題がある。

 1つ目はデータのサイロ化だ。社会インフラ設備を管理するシステムは規模が大きく、必要な機能を継ぎ足してきた経緯もあり、データの一元的な処理が難しい。

 2つ目はデータを分析する基盤作りの難しさだ。インフラ設備の管理・運用情報および、3D 情報・リアルタイム情報を収集し、設備管理・投資の最適化に貢献するデータ分析・活用基盤が必要だ。

 3つ目はデータ分析のスキル不足だ。「IT運用やデータ分析など、従来の設備管理とは異なるスキルやノウハウが求められるため、人材不足にどう対応するか、多くの企業がここで悩んでいます」と、湯本氏は語る。

 これらの課題を解決するために、企業はIoTやエッジコンピューティングを通してデータ収集を強化したり、データ分析の共通基盤としてデータレイクを整備したりといった取り組みを行おうとする。しかし、デバイスやツールがあっても、現実にデジタルツインを構成し、シミュレーションによる設備管理の高度化まで実現できている企業は少ない。

 「デジタルツインの取り組みは、ツールを導入すればすぐに成果が出るものではありません。トライ&エラーを繰り返しながら、アイデアの価値検証を早期に実現することが重要です」(湯本氏)

 インフラのスマート化を支えるデータ基盤は「Smart Data Fusion」

アイデアの価値検証を早期に実現するデータ分析、活用基盤「Smart Data Fusion」

 上記の課題を解決するのが、NTTコムウェアがSmartMainTechの中でコアプロダクトと位置付ける、デジタルツイン活用に向けたデータ活用基盤「Smart Data Fusion」だ。

 Smart Data Fusionは、インフラ分野の幅広い事業に向けたNTTコムウェアのソリューション群「SmartMainTech」の一環で、社会インフラの管理運用データや3Dデータを収集、統合し、設備の延命や設備稼働率の向上、設備管理の最適化などを支援する。

図1 Smart Data Fusionの概要(出典:NTTコムウェア提供資料) 図1 Smart Data Fusionの概要(出典:NTTコムウェア提供資料)

 「設備管理に最適化したデータレイクを使って、収集した多様なデータを分類、意味付けし、デジタルツインを活用した新しい設備管理や運用業務を早期に実現できるようにします」(湯本氏)

 Smart Data Fusionの最大の特徴は、データ収集の仕組みとデータレイク、プリセットされたアプリケーションをプラットフォームとして利用することで、クラウドの仕組みやデータベースなどが分からなくても、ユーザー自身が検証と改善のサイクルを素早く回せる点にある。

 データ収集においては、3D CADや3D点群などの設備情報からSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)などの各種OTデータ、BIM(Building Information Modeling)や図面、手順書などの文書データの他、ERPから収集したデータ、気象予測や3D都市モデルといったオープンデータなどを統合する。

 NTTコムウェアはSmart Data Fusionの開発に当たり、同グループのNTTコミュニケーションズが提供するIoTプラットフォーム「Things Cloud」と連携し、IoTデータやドローン、ロボットのデータ収集にThings Cloudを活用することも可能にした。

 データレイクには、エネルギー業界や製造業界で豊富な実績を持つノルウェーの企業、Cogniteの「Cognite Data Fusion」を採用した。知見を活用しながら、データをコンテキスト化(分類・意味付け)し、業務に適用しやすくする。分析結果は可視化し、アプリケーション経由で提供される。

多様な機能で「その企業に最適なDXの姿」を明らかに

 Smart Data Fusionは、企業のDXを支援するためのプラットフォームでもある。Smart Data Fusionを活用した次世代オフィスの実証実験に携わったNTTコミュニケーションズの増田知彰氏(プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部 担当課長)はこう話す。

 「Smart Data Fusionの次世代オフィス実装実験は、リモートで会話しながら実働数日という驚くべきスピードで実現しました。なぜ可能だったのかと振り返ると、Things CloudがIoTに必要な各種機能を標準装備し、Things Partnerプログラムと5年にわたる提供実績で培った、さまざまな利用シーンに向けたおすすめデバイスを取り揃えていたからでした。企業のDXには仮説立案と高速での試行錯誤が不可欠です。IoTを始める時にありがちなお困りごとはお任せいただき、これからもSmart Data Fusionの迅速かつ高度なお客さまのDX実現を、エンジンかつドライバーとして支えられればと考えています」(増田氏)

NTTコミュニケーションズの増田知彰氏 NTTコミュニケーションズの増田知彰氏

 DXには、Smart Data FusionのマルチAI機能も一役買っている。マルチAIとは、複数のAIモデルの判定を組み合わせて柔軟に分析する機能だ。カスタマイズも可能で、インフラ点検や診断のノウハウを持つユーザーがそのノウハウを継承するため、ユーザー自身がAIモデルを作成することもできる。AIによる点検業務の自動化や平準化が進めば、スキルやノウハウの継承者不足やエンジニア不足といった課題も解決できる。

 また、Smart Data Fusionはプリセットアプリケーションを提供し、設備情報や点検結果の記録、診断などが可能だ。風力発電の設備点検においては、ドローン撮影した画像を元にしたAI不具合診断や点検情報を設備の3Dモデルにひも付ける。収集したセンサー情報を活用した予兆保全による設備管理・運用の最適化を図る。

 スマートシティ事業においては地形データやBIMデータ、3D都市モデルなどを組み合わせ、防災やまちづくり、モビリティー、エネルギーのスマート化などの課題に対応できる。

図2 ドローンによるAI点検イメージ(出典:NTTコムウェア提供資料) 図2 ドローンによるAI点検イメージ(出典:NTTコムウェア提供資料)

 NTTコムウェアは今後、NTTコミュニケーションズを含むさまざまな企業と積極的に協創し、必要なアプリケーションや機能を順次追加することで社会インフラの設備管理だけでなく幅広い課題の解決を支援する考えだ。

 「われわれは単独で課題解決しようとは考えていません。同じ方向を向いている企業と連携しながら、協創でソリューションを発展させ課題解決に貢献していきます」(湯本氏)

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提供:エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年3月14日