SAPデータ資産をどう生かすか 「SAP Data Warehouse Cloud」の狙いを聞いたクラウドDWHで新旧システムの分断解消

DXに向けたシステム刷新を進めるSAPユーザーにとってSAP S/4HANAへの移行だけでなく、オンプレミスやクラウドに散在するデータ資産をどのようにつないで生かすかが大きな課題だ。SAPシステムの中で効率良く解決する方法が見えてきた。

» 2022年02月28日 10時00分 公開
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SAPユーザーのDX、サイロ化したデータはどうする?

 社会やビジネスのデジタル化が一気に加速している。デジタルトランスフォーメーション(DX)を急ぐSAPユーザー企業は、「SAP S/4HANA」(以下、S/4)への移行とともに業務改革やプロセス改善を進めている。S/4ユーザーの目下の課題は、SAP ERPのデータ資産をさらに活用してビジネスに生かすという点だろう。

 SAPはSAP ERPのデータ資産を活用するためのソリューション提供にも注力してきた。その中心となるのがデータウェアハウス(DWH)パッケージ「SAP BW/4HANA」(以下、BW/4)だ。インメモリデータベース「SAP HANA」をデータ管理基盤とする同製品は、基幹システムに蓄積された膨大なデータに対するリアルタイム処理で圧倒的な性能を発揮する。

 一方で、多様なデータ活用ニーズをBW/4だけで満たすのは難しくなってきたと打ち明けるのは、SAPジャパンでデータ活用基盤の提供に携わる椛田后一氏(Industries and Customer Advisory統括本部シニアディレクター)だ。

椛田后一氏 SAPジャパン 椛田后一氏

 「SAPシステムのデータ活用にはBW/4は最適ですが、SAP以外のシステムのデータをモデリングする場合には、BW/4に関する一定の知識を持つエキスパートが必要です。また近年はセルフサービスBIに加えて、簡単なモデリングまでを担う”セルフサービスモデリング”への関心が国内外で高まっています」(椛田氏)

 椛田氏はSAPシステムのデータをSAP以外のシステムのデータと組み合わせて活用したいというビジネスユーザーが国内でも着実に増えていると指摘する。

 このような事情から、データの可視化や分析のためにデータ活用基盤の見直しも行われているが、従来のDWHの考え方をそのまま適用した「データを貯めるだけの器」を導入して対応するケースも多い。だがDXを支えるリアルタイムデータを求めるならばSAPシステムの中で完結させられた方が望ましい。

ビジネスユーザーとIT部門のデータ活用コラボレーションプラットフォーム

 SAPは、新たなDWHサービス「SAP Data Warehouse Cloud」を2020年にリリースした。椛田氏は、SAP Data Warehouse Cloudを営業や企画などの事業部門、経理などのバックオフィス部門での活用を想定した「ビジネスユーザーのためのデータ活用プラットフォームサービス」だと説明する。

 SAP Data Warehouse Cloudは、ビジネスユーザーとIT部門がデータ活用を推進するためのコラボレーションプラットフォームとして機能する。

 従来のデータ活用にはIT部門の多大な協力が不可欠だった。IT部門が社内からデータをかき集め、データを成形・加工し、レポート作成まで実施している企業も多いが、他部署のリソースを使うことからビジネスユーザー側も気軽に依頼しにくいという声もあった。

 SAP Data Warehouse Cloudはこれらの負担や不満を一掃するものと期待される。IT部門はSAPシステムやSAP以外のシステムのさまざまなデータソースから容易にデータを取り込み、テーブルやビューを作ってデータカタログ化し、ビジネスユーザーに提供できる。検索用のタグ付け、ユーザーの権限に応じたデータアクセス制御も可能だ。

 ビジネスユーザーは、カタログから必要なデータを選択し、分かりやすくビジュアル化されたモデリングツールを使って加工・編集し、活用できる。また「国内のみ」「EU圏のみ」のようにリージョンを限定してデータをアップロードでき、各地のデータ保護規制やセキュリティ、コンプライアンス要件にも対応しやすい。

ビジネスユーザーのためのデータ活用サービスにBW/4の機能を統合

 SAPユーザーにとって特に注目すべきは、SAP Data Warehouse CloudにBW/4の機能が「SAP BW Bridge」として組み込まれたことだろう。

 「オンプレミスのBW/4とクラウドのSAP Data Warehouse Cloudに分かれていたSAPのDWH環境を1つに統合できます。また、長くSAP ERPを利用されているお客さまはSAP Business Warehouse(以下、SAP BW)も利用されていますが、S/4移行と同時にSAP BWの移行先としてSAP Data Warehouse Cloudが最適解となりました」(椛田氏)

SAP BW Bridge SAP BW Bridgeによるデータの統合(出典:SAPジャパン提供資料)

 SAP BW、BW/4からSAP BW Bridgeへの移行ツールも間もなく提供される見込みだ。SAPは今後、他のクラウドサービスと連携したインテグレートも実現しやすいSAP Data Warehouse CloudをDHWソリューションの主軸としていく計画だ。

仮想テーブルでスマートなデータ集約を実現

 各種データソースからのデータ集約をスマートに実現する点もSAP Data Warehouse Cloudの大きな特徴だ。

 通常、DWHにデータを集約する際にはデータ連携方式などの設計と実装に時間がかかり、ビジネスニーズに迅速に対応できない。しかも「試しにちょっと見てみたい」だけのデータを逐一レプリケートすればストレージ容量を大量に消費してしまう。

 SAP Data Warehouse Cloudでは「仮想テーブル」を使い、リモートのデータを仮想的に集約できる。

 「仮想テーブル機能で、SAP ERPのデータだけでなく『Oracle Database』や『Microsoft SQL Server』などのデータもSAP Data Warehouse Cloudのテーブルに存在するかのように扱えます。実際にアプリケーションがデータを参照したタイミングで仮想テーブルを経由してデータソースにリモートアクセスします。大量のデータを逐一レプリケーションすることなく、効率的にデータを活用できます」(椛田氏)

仮想データアクセス 仮想データアクセスのイメージ(出典:SAPジャパン提供資料)

 リモートアクセスで十分なパフォーマンスが得られない場合は、スナップショットを取得して仮想テーブルを作成することも可能だ。さらにパフォーマンスが要求されるデータは、通常のDWHと同様にデータをレプリケートして持つこともできる。

3000社が参加するデータマーケットプレースも統合

 もう一つ注目したいのは、SAPが注力するデータマーケットプレース「Data Marketplace for SAP Data Warehouse Cloud」(以下、Data Marketplace)だ。世界中のさまざまなデータプロバイダーが提供するデータをSAP Data Warehouse Cloudを介して購入できる仕組みだ。

 「社外からデータを購入した場合、通常はテーブルを作ってExcelやCSVのデータを取り込んで利用します。Data MarketplaceはSAP Data Warehouse Cloudに統合されているので、それらの煩雑な作業なく購入したデータをすぐに使えます」(椛田氏)

 購入したデータは、提供元が更新する都度アップデートされ、常に最新の状態が保たれる。独自のルールエンジンにより、購入データと自社データを名寄せしながら加工などの作業を行うことも可能だ。

 Data Marketplaceには現在、気象データや地理空間データ、POSデータをはじめ、多種多様なデータを持つデータプロバイダーがグローバルで約3000社参加し、国内のデータプロバイダーもデータ提供の準備を進めている。自社データを外部に提供することも可能で、今後はData MarketplaceがSAPユーザーのデータエコシステムの核として発展していくと期待される。

部門単位でスモールスタート可能な価格、わずか3カ月で導入の実績も

 SAP Data Warehouse Cloudがスモールスタート可能な料金で提供されることは、古くからSAPを知る人にとって意外と受け止められるかもしれない。SAP Data Warehouse Cloudの最小構成は年間600万円ほどで済む。まず1部門、1プロジェクトで採用して様子を見る選択もできるだろう。

 既に多くの企業がSAP/SAP以外のシステムのデータ活用にスモールスタートで取り組んでいる。

 野村総合研究所は2021年、S/4HANA CloudとSAP Data Warehouse Cloudをクラウド型会計および全社情報活用の基盤として採用した。中期経営計画で財務戦略の一つに掲げる「グローバルスタンダードを意識した開示強化」への取り組みの一環だ。

 別のある国内企業は、海外拠点で運用するSAP/SAP以外のシステムのデータを可視化する目的でSAP Data Warehouse Cloudを利用する。「この事例ではビジネスユーザーがダッシュボードなどを使ってさまざまなデータを可視化し、運用も現場中心に実行するとの方針を掲げています。それに最適なサービスとしてSAP Data Warehouse Cloudが採用されました。ユーザー教育と現場を巻き込んだ要件定義を含めて、わずか半年間で本稼働を実現しました」(椛田氏)

3カ月の無償フリートライアルを実施中

 SAPジャパンは現在、SAP Data Warehouse Cloudを無償で3カ月間利用できるフリートライアルを実施している。

 「トライアル環境ではSAP Data Warehouse Cloudの機能を一通り試せます。私のブログ記事(注)でフリートライアルの開始方法やSAP Data Warehouse Cloudの使い方を具体的に解説しているので参考にしてください」(椛田氏)

(注)椛田氏のブログ記事『Free TrialではじめるSAP Data Warehouse Cloud: Vol1. Free Trialの登録とスペース作成

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提供:SAPジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年3月18日