企業の情報システム担当者やビジネスユーザーは「Microsoft 365」をどのように利用しているのか。調査結果から「Microsoft 365」だけでなく、複数クラウドを利用している企業が多いという実態が見えてきた。
サイボウズとアイティメディアは2022年1月、企業の情報システム担当者やビジネスユーザーがマイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft 365」をどう使っているかについてアンケート調査を実施した。調査は「TechTargetジャパン/キーマンズネット会員」を対象とし、399件の有効回答数を得た。
この調査で、回答者の72%が「Microsoft 365(旧称Office 365)を利用している」と答え、同ツールがビジネスパーソンに広く浸透していることが確認された。
Microsoft 365を利用している回答者に用途を聞いたところ「ドキュメント作成」が最も多く83%、次いでメール、Web会議が約71%だった。「Microsoft Word」「Microsoft Excel」「Microsoft PowerPoint」「Microsoft Outlook」など、パッケージソフト時代からのオフィス製品の利用が中心であること、コロナ禍で急拡大したテレワークに対応する「Microsoft Teams」の利用が浸透していることも分かる。
どの企業も、文書作成や表計算ツールとしてWord、Excelといったソフトを標準的に利用している。加えてTeamsでテレワークにも対応できるとあって、Microsoft 365の利用が広く浸透しているといえる。
しかし利用状況を詳しく聞くと、Microsoft 365だけでは業務を完結できていない例が目立つ。Microsoft 365にはドキュメント作成以外にも「業務自動化」や「ファイル共有」などの機能が含まれているが、ドキュメント系のツールと比べると利用率は低い。
調査結果では、Microsoft 365ユーザーの48.6%が他社のワークフローツールを使っていた。ワークフローに次いで多かったのは「社内規定などの文書管理」で40.3%、「掲示板・全社通達」39.9%、「社内ポータル・社内リンク集」38.9%だった。
Microsoft 365も搭載している機能を別のツールで代用する理由を聞くと、最も多い回答は「操作しやすいから」だった。
ワークフローツールの場合、国産のツールは海外のツールよりも稟議など日本企業特有の要件に対応しやすく、システム管理者にもユーザー社員にも操作しやすいように作ってある。また、海外のツールは、一般的に「管理者が専門的な設定を一手に引き受けてユーザーはそれを使用するだけ」という思想で作られている。そのためIT人材に余裕のない企業の場合、専門のシステム会社に“丸投げ”で作り込んでもらうか、運用でカバーするという対応になりがちだ。初めから日本の業務プロセスに適合させることを想定した国産ツールの「使いやすさ」が魅力になっている。
文書管理、社内ポータルや社内通達などの全社向けツールについても同様だ。一部の部署しか使わないのであれば高度で複雑なツールでも問題ないが、全従業員が使う場合は使いやすさと分かりやすさが重要だ。高度過ぎるツールは業務を停滞させる原因になり得る。
一方で複数ツールの併用によるデメリットも存在する。具体的には、連携していないツールにデータが分散してしまったり、機能の重複による業務プロセスの混乱が起きてしまったりといったケースだ。管理者側も、ユーザーによって使えるツールを個別に設定しなければならないため、入退社や人事異動などでユーザーが変わる都度メンテナンスが必要になる。調査でも「データが探せない」「ツールが増えて、利用者がどれをどう使えばいいかが分からなくなる」「システムごとにログインの手間が掛かる」「ユーザー管理に手間が掛かる」などに共感の声が寄せられた。
Microsoft 365と複数のツールを組み合わせる際は、複数ツールの使い方に関する混乱やログインの手間、データ分散などの問題が起きないように注意する必要がある。
複数のツールを混乱なく活用する方法の一つに、社内ポータルの活用がある。 Microsoft 365で社内ポータルを運用しているのはMicrosoft 365ユーザーのうち29.2%であることをふまえると、グループウェアなど専用ツールを併用して社内ポータルの整備を進めるとよいだろう。使いやすい国産グループウェアを従業員の総合窓口としておけば、1日のスケジュールや社内の通達などを1画面で確認できるようになる。Microsoft 365など他ツールのログイン画面へのリンクや各ツール内のデータを集約するイメージだ。ユーザーが1日の始めにグループウェアにアクセスして、そこに集められた情報を確認しながら複数のツールを行き来して仕事ができれば、業務をスムーズに遂行できる。
よりスムーズに業務を進めるには、ポータルの構築に加えて、データの分散やログインの手間を省くためのシステム間連携も重要だ。Microsoft 365を使った文書作成やWeb会議などの業務に、グループウェアからスムーズにジャンプできるようにしておきたい。IDaaS製品によって複数ツールのシングルサインオンに対応しておくと、よりスムーズに複数のツールを行き来できる。
グループウェアとMicrosoft 365の使い分けのパターンとしては、グループウェアは社内ポータルや掲示板、スケジュール管理などに使用して、文書作成やメールなどはMicrosoft 365の機能を使えば、それぞれの強みを生かせる。マイクロソフト製品の機能性と国産ツールの使いやすさを組み合わせることで、利用者の利便性と生産性が向上するだろう。
グループウェアとMicrosoft 365を中心に複数のクラウドツールを組み合わせた事例として、明電舎の社内ポータル構築がある。同社はスクラッチ開発したグループウェアからの移行を検討する際、当初は旧Office 365に集約する案もあったという。スクラッチ開発も可能な体制だったがSharePointをカスタマイズして利用することは避け、サイボウズのグループウェア「Garoon」を選択した。社内システムの入り口として使えるポータル、APIなどによるカスタマイズ性の高さなどが総合的に評価された。
「SharePointをカスタマイズして以前と同じようなグループウェアを開発する、という方法も検討しましたが、それだと結局自分たちで作らないといけない。使い勝手や操作性を旧グループウェアと同じレベルに持っていくためにはかなりの工数がかかりますし、メンテナンスコストや管理の複雑化など、これまでと同じ課題が生まれてしまいます。今までスクラッチのグループウェアを運用してきた教訓として、自分たちでガリガリ作るのはもうやめよう、と判断しました」(明電舎 Garoon導入事例記事)
Garoonは、国産ツールならではの操作性や日本語のサポートコンテンツに加えて、APIの公開による他のアプリケーションとの連携にも力を入れている。APIの公開によって連携するサービスを限定せず、他社サービスと接続しやすくしている。今後、パートナー企業が開発する連携ソリューションやプラグインが増えるごとに、ユーザー企業は全体最適でシステムを構築しやすくなるだろう。
マイクロソフト製品を使う企業が社内システムをクラウド化する際、「扱いやすさと拡張性を両立させるためのGaroonの併用」は有力な選択肢になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年5月1日