企業のコミュニケーションチャネルとして高い導入率を誇るメール。一方で、セキュリティ等への意識が高くなるにつれ、スパム・ブロック処理でメール不到達の問題も発生する。顧客に情報を確実に送り届けるためにはどうすればいいのか。
多くの企業が顧客エンゲージメントの最大化に向けて顧客接点の強化を図っており、中でも電子メール(以下、メール)はとりわけ重要なコミュニケーションチャネルだとみられている。顧客エンゲージメント向上のためメールの到達率を改善してほしい、という要望を受けた情報システム部門の担当者もいるのではないだろうか。
Twilio Japanの笹岡 望氏(セールススペシャリスト)は、メールがコミュニケーションチャネルとして普及した背景には、低コストであることやコンテンツの表現能力の高さに加えて、メールの長所である「参照性」が関係していると話す。
「メールは商談のやりとりに用いるだけでなく、送信後にいつでも見返すことができるので顧客への受領証や請求書の送信手段としても利用されます。また、振り返り機能や検索性に優れており、信頼されているチャネルであるため、メールが来るべきタイミングで来ないと顧客は不安を覚え、エンゲージメントの低下を招きます」(笹岡氏)
ここで注意しなければならないのが、メールは送信しても必ず相手に到達するわけではないということだ。笹岡氏によれば、メールの送付を望んだ宛先への到達率が9割を超える企業は2割に満たないという。しかもそれは単純にハードウェアやソフトウェアのスペックを上げれば解決するという問題ではない。一体どういうことなのか。
笹岡氏によると、メールの未到達が発生する背景には「Gmail」や「Yahoo!メール」「Microsoft Outlook」などを運営するメールサービスプロバイダーが設定するルールが関係しているという。
「メールサービスプロバイダーは、顧客体験上好ましくないという理由から、自社のメール環境がスパムメールであふれることを嫌います。そのため、受信の際はメールの送信元がどれだけ信頼できるかを評価する指標である『IPレピュテーションスコア』を利用してフィルタリングをしています。レピュテーションスコアを高く保つことは、高い到達率を保つための必須要件となります」(笹岡氏)
笹岡氏はメールサービスプロバイダーが設定するフィルタリングについても以下のように続ける。
「メールサービスプロバイダーの判断で受信を拒否する条件もあります。『いつもの送信ボリュームから逸脱するような量のメール送信がされた』『存在しないメールアドレスに対してメールを送り続けている』といったケースは警戒されることがあります」
メールサービスプロバイダーによる評価基準が明文化されていないこともメールの到達率を下げている。未到達を避けるために基準を類推して対応する必要がある。比較的容易にできる対策としては、大量のメールを送信するための分散したIPアドレスを用意して一定量のメールを送り続ける、存在しないメールアドレスは小まめに削除するなどだ。
メールが顧客との主要なコミュニケーション手段である今日、企業は「大量に送りたい」「高速に送りたい」「到達率を上げたい」という三大願望を持つ。メール送信基盤を強化するとともに、到達率を詳細にモニタリングでき、顧客のフィードバックに適切かつ迅速に対応できる環境が求められる。
Twilioが提供する「Twilio SendGrid」は、メールにおける企業の三大願望をかなえるメール配信サービスだ。メール送信量に応じた従量制課金(+基本料金)を採用しており、スモールスタートが可能だ。APIで利用するクラウドベースのメール配信基盤なのでメールサーバの保守・運用からも解放される。
Twilio SendGridはすでに全世界で多くの顧客を持ち、メール配信サービス業界をリードするブランドとして確固たる地位を築いている。クラウドコミュニケーションプラットフォームサービス企業であるTwilioによる買収(2019年)を経て、顧客が享受できるソリューションの幅がより広がった。Twilio SendGrid製品としては、トランザクションメールのための「Twilio SendGrid Email API」(以下、SendGrid Email API)やキャンペーンメールのための「Twilio SendGrid Marketing Campaigns」がある。本稿では前者を中心に紹介する。
SendGrid Email APIの特長は「到達性」「スケール」「専門性」の3つだ。
「到達性」はメールの高い到達率を示す。SendGrid Email APIは、完全冗長化メール転送エージェントと呼ぶ独自のMTA(Mail Transfer Agent:メール転送エージェント)を採用している。独自のMTAで確実にメールを送信するためのスケーラブルなキューイングを実現し、メールサービスプロバイダーのフィードバックに対応できる。その他、送信側のIPレピュテーションのスコアを保つIP管理機能を備えており、「SPF」や「DKIM」といった送信者認証に対応することで送信者の信頼を確保する。
これらの指標を一元管理する「Deliverability Insights」と呼ぶ分析ダッシュボードも重要な機能の一つだ。配信されたものや配信されなかったもの、開封されたものなどの統計をモニタリングできる。プロバイダーごとの配信率や開封率を見ることで具体的な改善点を可視化でき、配信傾向を長期にわたって追跡して指標の変化を把握することも可能だ。典型的なアドバイスのサマリーも表示されるようになっており、分析や改善を手助けする。
こうした仕組みによって、SendGrid Email APIによるメールの到達率は配信ツール市場の平均的な数値を上回る。これは後ほど取り上げる事例で詳しく紹介する。
「スケール」という特長は、「大量送信」「高速送信」をかなえるものだ。笹岡氏によると、SendGrid Email APIは冗長化されたグローバルデータセンターでハイブリッドなシステムを構成しており、2021年の実測値として99.997%のアップタイムを実現する。
送信レスポンスを上げるため世界各地にサーバを設置し、大量送信時に現地により近いところで高速にAPIリクエストを完了できるようにしたり、リクエスト自体のサイズを圧縮したりする工夫により、直近では米国で1日当たり最大70億通の送信実績を持つ。クリスマスシーズンを控えた米国では12月に大々的なキャンペーンが行われるが、同社の顧客はサイバーマンデーで70億通、ブラックフライデーで68億通(いずれも2021年の実績)の送信に成功した。
「専門性」という特長は、メール関連の業界団体と緊密に連携して業界リーダーとして活躍していることや、専門性を持った人材によるプロフェッショナルサービスの提供を意味する。メール分野は非常に高度なスキルが求められ、スパムリストに載ってしまうリスクなどといった緊急性の高い問題への対応も必要だ。こういった場面で実績あるTwilioのコンサルタントに相談できるのは心強い。
日本国内でのSendGrid Email APIの事例としては、全日本空輸(以下、ANA)の運航イレギュラー情報配信が挙げられる。
ANAはグループ全体でカスタマーエクスペリエンスの向上に力を注いでおり、遅延や欠航といった運航イレギュラーの発生時は搭乗予定者に運航情報をメールで通知している。大規模災害などの運航イレギュラーが発生すると、最大で数十万件のメールを一斉送信するため、瞬間的なバーストトランザクションに耐えられるメール配信サービスを検討した結果、SendGrid Email APIを選択した。
導入後、ANAのメール到達率は97.7%を達成し、平均のバウンス率(受信サーバから戻されたためにメールが届かなかった割合)は0.95%程度となっている。ANAでは必須の情報伝達を高い到達率で届けられる環境が整ったと言える。
笹岡氏は「導入効果は具体的な数字に表れており、『大量送信』『高到達率』『高速送信』でANAに一定の評価を頂けた」と話す。
SendGridは今後、Twilioのグループ企業になった強みを生かし、他のコミュニケーションプラットフォームとの連携による包括的なソリューションを提供する予定だ。TwilioグループのCDP(顧客データプラットフォーム)であるTwilio Segmentというデータ集約ハブを利用することで、お客さまのカスタマージャーニー上の立ち位置や嗜好を意識した上で、ベストな顧客体験をリアルタイムに展開できる。「メールをさらに戦略的に活用したいというご要望があれば、ぜひご相談ください」と笹岡氏は締めくくった。
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提供:Twilio Japan合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年6月19日