身動きが取れないSAP移行、激変する事業環境に基幹システムは追従できるか 事業統廃合、M&A……変化に耐えるIT部門を考える

古いSAP ERPのサポート切れが迫り、リプレースで多忙な企業も多い。身動きの取りにくい巨大プロジェクトを進めながら、事業統合や組織見直しなどのダイナミックな変化に情報システム部門はどう対応すべきか。

» 2022年06月24日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 紛争やパンデミックをきっかけに、企業の経営環境はかつてないほどのスピードで変化する状況になった。非財務情報の開示など、ステークホルダーが企業に求める情報の性質も変化しつつある。この状況においては、基幹業務を担うシステムにも変化に素早く対応する機動力が求められる。

 事業の根幹を支えるERPシステムともなれば、新たな施策を取り入れるにしても慎重な手続きが必要だ。まして今は古いSAP ERPのコアコンポーネントである「SAP ERP Central Component (ECC) 6.0」のサポート終了が迫っており、多くの企業が移行プロジェクトを進める最中にある。

 基幹システムの移行計画は、相応の時間をかけて準備して数年単位のプロジェクトを走らせることが一般的だ。だが、その渦中であっても外部環境は容赦なく変化する。果たしてIT部門はこのダイナミックな変化に対応できるだろうか。

 経営の視点からはなるべく早くリスクを整理して体制を整えたいところだが、システム変更で問題が生じないかどうかは、実環境の本番データで検証しなければ分からない。

 本番データを基にアプリケーション改修とデプロイを短期間で繰り返す手法も選択肢としてはある。しかし本番環境と全く同じ環境をもう一つ用意して運用する必要があり、そこまでの投資ができる企業は限られる。開発やテストと本番デプロイを繰り返すにしても本番データが持つプライバシー情報などを開発環境に生のまま置くことはコンプライアンス上難しく、データ管理に細心の注意を払う必要がある。

本番環境から必要なデータだけをコピーして検証用クライアントを作成

 米Qlik Technologies(Qlik)はBIツールで知られるが、データ統合・複製ツールベンダーとしても長い歴史を持つ。特にSAP ERP向けには専用のテスト環境構築ツール「Qlik Gold Client」(Gold Client)を提供する。

 Qlikの日本法人であるクリックテック・ジャパンの木口 亨氏(データインテグレーション事業シニア・アカウント・マネージャー)は、SAP ERPの移行プロジェクトが置かれた今日の状況を次のように話す。

クリックテック・ジャパンの木口 亨氏 クリックテック・ジャパンの木口 亨氏

 「『SAP S/4HANA』への移行プロジェクトは、システムやデータの整合性の問題からカットオーバーまで既存システムの改修を凍結せざるを得ない場合がある。しかしビジネス環境の変化は、移行の完遂を待ってはくれない。Gold ClientならばSAP ERPの本番環境から必要なデータセットだけを本番環境のリソースに影響を与えずに短時間で複製できる。ビジネスプロセスのルール変更や業務定義の見直し、システムロジックへの反映による影響など、本番環境でしかできないような検証をシステム停止もせずに短期間で実行できる」(木口氏)

 データコピーの範囲は、検証したいビジネスシナリオや改修対象環境、組織、期間、トランザクションなどの単位で自由に指定できる。コピー環境(クライアント)は複数同時に立てることも、検証シナリオごとに分けることも可能だ。データベースインスタンスやデータベースファイルをコピーする場合とは異なり、データ構造を維持し、アプリケーション整合性を保ったまま移植できるところがポイントだ。

Gold Clientを使った実機検証プロセス(出典:クリックテック・ジャパン提供資料) Gold Clientを使った実機検証プロセス(出典:クリックテック・ジャパン提供資料)

 SAP ERPの移行や改修プロジェクトは、複数の協力会社が参加することが多い。テスト環境向けに払い出した本番データから情報漏えいが起こる可能性もあるが、Gold Clientでデータを管理していればその心配は無用だ。

 「Gold Clientは大規模なSAP ERPを前提に開発やテスト環境向けのデータ切り出しや管理を担う機能として開発された。データコピーの管理やセンシティブ情報のマスキングなども一元的に把握できる仕組みだ。オプション機能によりEU一般データ保護規則(GDPR)に準じてデータも扱える」(木口氏)

事業売却、統合、決算前のデータ検証……SAP ERPユーザーなら押さえておきたいGold Clientによる経営スピードアップ術

 この仕組みを使えば、SAP ERPリプレースの最中であっても機動力を落とさないIT基盤を実現できる。幾つかのシナリオを見てみよう。

移行プロジェクトの渦中の事業売却でプロジェクトの影響を最小にする方法は?

 SAP ERPのモダナイズプロジェクト推進の途中で事業売却が決定した場合を考えてみよう。Gold Clientを使った次のようなシナリオであれば、プロジェクトへの影響を最小限にとどめつつ、事業売却に関係するシステム改修を確実にこなせる。

  1. 移行先のS/4HANAは従来通りの要件で開発を進めつつ
  2. Gold Clientを使って移行元の現行ERPから売却事業分を除いたデータセットを取り出し、クライアントを作ってアプリケーションの検証を進め、問題がないかどうかを確認した上で現行ERPシステムに変更を加える
  3. ECCからS/4HANAに本番環境を移行するフェーズで、ECCに加えた変更をS/4HANAにも反映する

 このシナリオであれば、ECCなどの現行SAP ERPシステムにもS/4HANA移行プロジェクトにも支障を来すことなく、事業売却の影響を実データで検証できる。

事業分割が発生する場合の対応例(出典:クリックテック・ジャパン提供資料) 事業分割が発生する場合の対応例(出典:クリックテック・ジャパン提供資料)

事業買収によるSAP ERPシステム統合の影響、リスクを事前検証

 M&Aも同様の考え方で対応できる。進行中の移行プロジェクトに買収先システムの統合を追加要件として加えるのはリスクが高い。

 Gold Clientを使えば、買収先ERPと自社SAP ERPを仮想的に統合した環境を作って、統合がアプリケーションなどに及ぼす影響や統合の可否を調べられる。

 「異なる企業が運用するSAP ERPを統合した場合の影響を机上で検証するのは至難の業だ。実データでアプリケーションを検証できれば想定外の不具合も含めて問題を即座に把握できる。テスト環境では問題がなかったがローンチ後に本番データを投入したとたんに不具合が生じるといった致命的なトラブルを回避できる」(木口氏)

決算業務支援、原価改定シミュレーションでも有効

 本番環境の生データを使えるからこその面白い使い方もある。期末決算の事前検証がその一つだ。

 決算処理は基幹システムのデータに基づくが、その結果には補正が加えられることが多い。本決算の前に補正のないデータを確認したいというニーズはある。これもGold Clientを使えば対応できる。

 締め処理の確認で使うデータだけをコピーしたクライアントを作り、それを使って検証する。本決算の前に問題を起こしそうな伝票を特定し、必要な補正を事前に検討可能になる。その補正を本番環境に適用することで決算処理をスムーズに進められるようにもなる。

 もう一つは、価格見直しや原価改定での活用だ。期首に想定した為替レートを大幅に超えた通貨の乱高下が続く状況にあっては、原価改定はやむを得ない。Gold Clientを使えば検証環境で実データを基にシミュレーションが可能だ。

S/4HANAへの移行、マスタ変更でも事前の実機検証が可能に

 もちろん、Gold Clientは多くの企業が進めるECCからS/4HANA移行プロジェクトでも威力を発揮する。Gold ClientでS/4HANAに移行パターンごとのクライアントを作り、アプリケーションを実機で検証する。最適なパターンを選定し、その環境を使って移行リハーサルを行う。移行手順に間違いがなければ本番環境の移行がスムーズになる。

 このように、Gold Clientを使えば柔軟に本番環境のデータから必要なデータセットをコピーして、コンパクトな検証環境を作成できる。SAP ERP以外のデータソースについても、データレプリケーションツール「Qlik Replicate」を使えばGold Clientと同様に本番データからのコピーの管理が可能だ。

 VUCA(注1)とも形容される時代に企業が確実に成果を得るには、データから将来を予測する手段であるBIツールだけでなく、事業環境の急変などにSAP環境を確実に対応させていくためのアジリティを保つ道具が必要だ。木口氏は「Gold ClientやQlik Replicateの提供を通じて、顧客のよりハイレベルなSAP ERPの活用を支援していく」と今後のQlikの方向性を示した。

(注1) Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語。これらの要因が絡まり合うことで将来を予測するのが困難な状況を指す

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:クリックテック・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年7月13日