“武闘派CIO”友岡氏が提案する情シス主導のSaaS活用、そのキーワードは「ワクワク」?輝ける情シスになるためには何が必要か〜求められる人材に変化しよう〜(2)

ビジネスの在り方が大きく変わる中、企業には“変革”が、情報システム部門担当者にも“変化”が求められている。これからの情報システム部門者は企業変革のために何をすべきか。“武闘派CIO”友岡氏が実体験に基づいて語るSaaS導入事例から「何をどう変えるべきか」考えてみよう。

» 2022年06月28日 10時00分 公開
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 変化の激しい時代、SaaS(Software as a Service)などのデジタルの力を駆使して働き方やビジネスを前に進めることは企業の喫緊の課題だ。情報システム部門担当者にはこのデジタル改革を主導する役割が求められている。

 こうした大きな期待を背負う一方で、事業部門から上がってきた要望に応えることをミッションとしてきた情報システム部門担当者の中には、「ビジネス価値を生み出すためにどう変わるべきか」「まず何から始めればいいのか」というように変革のビジョンが見えない人も多いはずだ。

 「輝ける情シスになるためには何が必要か〜求められる人材に変化しよう〜」は、こうした悩みを抱える情報システム部門担当者に寄り添い、変革のヒントを届ける連載企画だ。第1回は「情報システム部門が企業の成長に貢献できるイノベーターになるために何が重要か」をテーマに、エレベーターメーカーのフジテックで専務執行役員 CIO/CDOを務める友岡賢二氏に情報システム部門の変革戦略を聞いた。

 第2回となる本稿は、引き続き友岡氏に「情報システム部門主導のSaaS導入/活用」をテーマに、そのポイントと情報システム部門担当者が目指すべきビジョンを話してもらう。

やみくもなSaaS導入は逆効果 自社にとっての「コア業務」を考える

 多くの企業が業務の改善や新規ビジネスの開拓にSaaSを利用している。あらためてそのメリットとは何だろうか。友岡氏は以下のように語る。

 「SaaSを導入するメリットとして“初期コストが低く”“始めやすくやめやすい”という点が挙げられます。実運用の観点で言えば、マネージドサービスのためシステムの運用管理から解放されます。従来、ツールは全社的に導入するケースが多かったのですが、SaaSであれば特定部門に限定して気軽に導入できます。企業規模による有利不利を解消したのがSaaSの大きな特徴です」(友岡氏)

 このようにSaaSには多くのメリットがあるが、導入すればいいというわけではない。友岡氏は、自社のコア業務を把握し、その外側にある付帯業務の業務効率化を図るためにSaaSを導入することが重要だと指摘する。

フジテックの友岡賢二氏 フジテックの友岡賢二氏

 「SaaSを導入する際には“企業の独自性や事業の強みがどこにあるのか”を意識した方がいいでしょう。『バックオフィスは全てSaaSでいい』という方針を掲げる先進的なIT企業も多く存在します。独自性が必要ない業務領域のシステムは、内製化するよりもSaaSを入れた方が手間やコストを低減できます。これによって、より付加価値の高い業務にリソースをシフトできるわけです」(友岡氏)

 自社事業の強みを深く理解し、ケース・バイ・ケースでSaaSを導入するには「事業にとってシステムがどういう価値を生むのか」という「事業視点」での立ち回りが要求される。“現場を知って真に必要な機能を適材適所で提供する”姿勢こそが情報システム部門主導でのSaaS導入/活用と言えるだろう。

現場への理解と最新技術を組み合わせよ

 では事業視点でSaaSを導入/活用するとはどういうことか。フジテックの事例を紹介しよう。

 代表的な例として友岡氏が挙げたのがクラウド型のビジネスフォンシステムの導入だ。これは同社がコロナ禍以前から検討していた製品で、「場所や端末を選ばず電話がかけられるようにしたい」という事業部門の現場のニーズをくんで情報システム部門長から事業部門に提案して導入が決まった。電話番号が割り振られるとBYOD(Bring Your Own Device)のスマートフォンや自宅のPCで電話が受けられるので、コロナ禍でテレワークが実施された際にも価値を発揮した。

 もう一つはスマートグラスだ。同製品をWeb会議ツールの「Zoom」と連携させたことで、フジテックが開発したエレベーター内の映像を会議参加者が共有できるようになった。大勢でエレベーターに乗らなくても実物を見たのと同じように話し合えるようになった。これも情報システム部門担当者が現場の課題感を拾い上げて導入が決まったものだ。

 「新たな技術のウォッチは情報システム部門にとって重要な仕事です。“これがあったら皆が喜ぶのではないか”と考えてみることが特に大切です。新しい技術を現場にどのように導入すべきかを考えるのは非常に楽しく、従来のやり方に比べて大きな効果をより安価に実現できる可能性があります」(友岡氏)

 日本企業の大半は前例主義だ。何か導入するにも“事例がないのはリスク”“モルモットになりたくない”と考える。しかし、友岡氏はそうは考えない。「早く導入すれば、それだけ早く効果を刈り取れる」というポジティブマインドがその背景にある。これは日常的な新技術のウォッチと深い現場理解に裏付けられたものだ。

情シス主導のSaaS導入/活用のポイントは?

 情報システム部門主導によるSaaSの導入/活用を軌道に乗せるためには幾つかポイントがある。

 1つ目は“普及率”だ。友岡氏はキャズム理論に基づき、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた「16%」をSaaS普及率の基準として据えている。ある技術が普及する際には、情報システム部門担当者が率先して事業部門への周知を図ることがポイントだ。実際に自分が使ってみて“自信を持ってお薦めできるツールだ”と事業部門にアピールすることで利用を促せる。

 普及率が16%を超えればその先は自然と広がるため、それ以上プロモーションはせず次の活動にシフトする。「ツールの利用率が8割を超えているのに『あと2割に利用してもらうにはどうすればいいか』を考える企業もありますが、新たな技術が全員に支持されるには長い時間がかかります。ある程度普及したら別のより重要な業務にリソースを割くべきです」(友岡氏)。

 2つ目は“抵抗勢力を作らないこと”だ。人間には保守的な一面があり、すぐに変化を受け入れられないケースもある。SaaSに否定的なのは、これまでに慣れ親しんだやり方があるからかもしれない。情報システム部門としては「社内標準ですから」などといって無理やり利用させるのではなく、事業部門の言い分を受け止め、最終的に導入したSaaSと似た機能を持つ何らかのツールを利用してもらうように立ち回るのも大事なポイントだ。

 複数のSaaSを活用する場合は「情報資産の配置」に特に気を配るべきだ。重要データが分散していると管理工数やセキュリティ面で情報システム部門にとって大きな負担となる。複数のSaaSをオーケストレーションするには、まずアーキテクチャの全体像を描き、データの集約先を意識して決めておく必要がある。

 企業内外のネットワークから重要データへのアクセスが増加している今、企業の“内”と“外”で安全を定義するのではなく、基本的に誰も信用せず厳密な認証/認可によってシステムへのアクセスをコントロールするゼロトラストアーキテクチャの構築が求められている。

 この鍵を握るのがID管理基盤だ。友岡氏は「今後、複数のSaaSを利用する上で『ヒト』『デバイス』『ビジネスアプリケーション』を効率良く安全に管理するにはID管理基盤が不可欠です」と話す。第1回で、セキュリティはリスク回避手段であることに加えて、“ビジネスの自由度を拡大する技術”でもあると説明したが、ID管理基盤は認証を強化しつつログインを簡素化するという意味で正しくこれにかなっている。コストとパフォーマンスに折り合いを付けながらSaaS活用を目指す情報システム部門担当者にとって、まず必要になるソリューションと言える。

IT領域には企業成長の「起爆剤」がたくさんある

 最後に、これからSaaSを本格的に活用しようとしている情報システム部門担当者に向けて友岡氏にアドバイスをお願いした。

 「まずは使ってみることです。シリアスに考えず、触って、使って、自社にどう役に立つか考える。主だったツールには『ユーザー会』が存在していて必ず熱量の高いユーザー企業が参加しているので、そこに足を運び、実際に活用する上での注意点に耳を傾けることです。『勉強に来ました』と聞くばかりではなく、自ら心を開いて発信することも重要です」(友岡氏)

 SaaS領域に限らず、コミュニティーに学びを求めて積極的に外に出ていくのは出会いと成長の機会になる。「これは今後、情報システム部門担当者に求められる最も重要な姿勢です」と友岡氏は強調する。

 だが、「目の前の仕事で忙しくて、とてもそんな時間はない」と後回しにしているのが現実だろう。それは友岡氏によると、「可能性を自ら断ち切っているのと同じ」だという。時間がないのは、学びがないために非効率なやり方でしか仕事ができないからだ。何かをするための時間がないと公言することは、「その何かに重要性や価値を感じていないと表明することに他ならない」というのが友岡氏の主張だ。

 SaaS活用によって情報システム部門担当者が開発や運用から解放されれば、業務の階層を一段上に上げ、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった新たなテクノロジー分野に視野を広げたり、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使ったデータ分析業務に取り組んだりと、新たな領域に挑戦できる。ひいてはキャリアアップにもつながるはずだ。

 友岡氏は最後に「ITの民主化が進み、情報システム部門が今までやっていた仕事はなくなりつつあります。しかし、企業を成長させる起爆剤になり得るものがIT領域にはまだたくさんあり、情報システム部門はそれを目利きする部門になると思います。必要なのは自分にとって面白いというだけでなく、『これを導入したら、こんなことができるようになるのでは』『これを使ったら、みんな楽になって喜ぶのでは』といった事業視点でのワクワクするような好奇心です。そのために事業に対する深い関心や理解を持って頑張っていきましょう」とエールを送った。

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