日本企業のDXを加速させるインターコネクテッドエコシステムとは何かSCSKとNECが描く革新的なデータセンターの在り方

SCSKとNECがデータセンター事業でタッグを組む。この取り組みは単なるデータセンター共同運営ではない。日本企業のIT施策の課題を知り尽くした両社が仕掛けるのは、ハイブリッド/マルチクラウド時代を見越したオンプレミス、クラウド領域における新しいシステムインテグレーションだ。

» 2022年08月10日 10時00分 公開
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 コロナ禍や人材不足を背景に働き方を見直す企業が増えている。優秀な人材を獲得し続けるには、柔軟な働き方を支援して生産性の高い業務環境を提供する必要があるからだ。このとき欠かせないのが俊敏性や拡張性、柔軟性のあるクラウドの活用だ。

 こうした企業のニーズに対応すべく、新たな取り組みを進めるのがSCSKとNECだ。両社は2021年7月にデータセンター事業での協業を発表、2022年4月にはデータセンターの共同運営会社であるSCSK NECデータセンターマネジメントを設立した。

 両社は単なるデータセンター共同運営ではなく、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を支援し、IT基盤運用の課題を解消するための一歩踏み込んだ施策を展開している。ITベンダーのデータセンターで初めて「Microsoft Azure ExpressRoute」(以下、ExpressRoute)の接続拠点を開設するなど、注目度も高い。

 ITmedia エンタープライズ編集部は、同取り組みのキーパーソンであるSCSKの小笠原 寛氏(業務役員 ソリューション事業グループ netXデータセンター事業本部長兼SCSK NECデータセンターマネジメント代表取締役)とNECの上坂利文氏(マネージングディレクター マネージドサービス事業部門長)に詳細を聞いた。

DXやクラウド活用が進む中、注目度が増すデータセンター

──協業のお話に入る前に、まず両社が新たな施策を検討した背景として、日本企業が今、IT基盤運用でどのような課題を抱えているのかをお聞かせください。

小笠原 寛氏(以下、小笠原氏): 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて日本企業にも急速にテレワークが定着し、さまざまなクラウドサービスが広く利用されるようになったのがこの2年ほどの変化でしょう。

SCSKの小笠原 寛氏

上坂利文氏(以下、上坂氏): 小笠原さんがおっしゃる通り、テレワークの定着をきっかけにクラウドサービスが普及した一方で、これまで以上にデータセンターの重要性を意識する顧客が増えています。自然災害やトラブルに強いこと、機微情報を適切に管理できることなどに加えて、2050年までに脱炭素社会を実現するために環境負荷の低いIT環境を実現できるかどうかという観点でデータセンターを選択する企業も増えてきました。

小笠原氏: 一例を挙げると、東証プライム市場に上場する企業はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への対応が求められます。データセンターは電力や熱と切り離せない事業ですから、自社が利用するサービスが環境に負荷を与えるようでは意味がありません。

──DXを推進するにあたり、顧客はどのような課題を抱えているのでしょうか。

小笠原氏: クラウド利用が進んでいることは先にお話しした通りです。クラウド関連の技術は進展が速いため、何をクラウドに置き、何をオンプレミスのデータセンターで扱うべきかといった判断を含めて顧客がうまく使いこなし続けるのは非常に難しい問題です。

 複数のクラウドを使い分けるマルチクラウドが当たり前になる中、運用管理のコスト最適化も課題になっています。マルチクラウドやデータポータビリティーと併せて、プライバシーガバナンスやセキュリティにも注意を払う必要があります。

SCSKとNECのキーパーソンが語る協業の経緯

──データセンター事業における協業から約1年後の2022年3月、共同運営会社の設立がアナウンスされました。こうした協業の深化と言える動きにはどういった狙いがあるのでしょうか。

上坂氏: SCSKとNECはこれまで、それぞれがデータセンター事業者として顧客にサービスを提供してきました。顧客にはラック単位でシステムインテグレーション(SI)や運用を併せて提供し、機微情報も含めて安心してお預けいただけるように努めてきました。電力効率の高いデータセンターを構築し、一部電力の再生可能エネルギー利用を進め、環境負荷の低減にも注力しています。外部サービスとの接続性についても、それぞれのデータセンターに通信事業者設備を誘致、また、サービス接続点までを閉域で接続するサービスを展開しています。

NECの上坂利文氏

 一方、クラウド利用が進むことで顧客の課題の変化を感じていました。「どうすれば顧客の課題に即したデータセンターを実現できるか」を模索している際、旧知の仲であるSCSKの小笠原さんに相談に乗っていただきました。その中で、日本企業のDX推進を加速するためには協業が望ましいのではないかとの結論に至ったのです。

小笠原氏: 顧客は、クラウドサービスの利用を推進したい一方、機微情報はデータセンターに置かなければならないなど、クラウドサービスとデータセンターの最適配置に課題を感じています。さらにクラウドサービスとデータセンター間をデータ連携させる上で、通信事業者やインターネットエクスチェンジ(以下、IX)事業者、サービス提供事業者などさまざまな事業者のサービスへの接続性が重要となります。これらの事業者が提供するサービスをセキュアかつ低レイテンシで接続し、その上でハイブリッド/マルチクラウドに適したIT基盤を提供する必要があります。このための手段として上坂さんと共に構想を練ったのが「インターコネクテッドエコシステム」というコンセプトです。

「インターコネクテッドエコシステム」のメリットは

──インターコネクテッドエコシステム構想は非常に興味深い取り組みです。着想されたきっかけや今後の方向性を詳しくお聞かせください。

上坂氏: SCSKとNECは顧客保有のシステムと通信事業者やIX事業者、サービス提供事業者などのシステムが、千葉県の印西市に設置したデータセンター拠点(以下、印西キャンパス)内で自由に直接接続されて互いにメリットを受ける環境をインターコネクテッドエコシステムと呼び、これらの事業者をエコシステムパートナーと呼んでいます。

 エコシステムパートナーであるクラウドサービス事業者やサービスプロバイダーの接続拠点を印西キャンパスに設置することで、顧客はインターネットや専用回線を経由せずに直接構内接続し、セキュアかつ低レイテンシでコストパフォーマンス高くこれらのサービスを利用できます。

インターコネクテッドエコシステムの提供イメージ(出典:SCSK/NEC提供資料)

 今後は印西キャンパスを軸に企業課題を解決するさまざまなサービスを提供する計画です。2021年7月の協業開始以降、エコシステムの拡大が進んでおり、同年末にTOKAIコミュニケーションズの通信サービス接続ポイントを開設。2022年4月にはインターネットマルチフィードのIX接続ポイントを開設。また、印西キャンパス内にNEC印西データセンターを開設すると同時に共同運営会社を設立しました。同年6月にはExpressRoute接続拠点を開設し、8月にはBBIXのOpen Connectivity eXchange(OCX)接続ポイントも開設しました。

小笠原氏: インターコネクテッドエコシステムはIT基盤を提供するだけでなく、アプリケーションサービスの提供パートナーをデータセンターに誘致して構内で直接接続して効率良く連携する仕組みです。両社の強みを生かしてサービス提供事業者を誘致することが日本企業のDXやクラウド活用を進めるための鍵を握ると考えました。

 さらに両社で共同運営する新たなデータセンターは、安心、安全で高い電力効率を実現しているのはもちろん、使用電力の一部を再生可能エネルギーとすることで環境負荷を低減し、地球温暖化対策に貢献します。

ExpressRoute接続拠点の誘致はDX推進に不可欠

──インターコネクテッドエコシステムを考える上で、2022年6月のExpressRoute接続拠点の誘致は非常に重要な意味がありそうです。他にもハイパースケーラーとの接続サービスはありますが、直接SI事業者が接続拠点を開設することは珍しいのではないでしょうか。

上坂氏: データセンター事業を運営するにあたり、ハイパースケーラーとの接続は顧客価値に直結すると考えてきました。そのため、印西データセンターにITベンダーとして初めてExpressRoute接続拠点を開設できたことは非常に大きな意義があります。

小笠原氏: 近年、顧客はデータセンターのシステムとクラウドサービスがセキュアで低レイテンシに接続されたハイブリッドクラウドを重視しています。クラウドサービスに閉域接続をする場合、これまでは印西キャンパスから別のクラウドサービス接続拠点まで専用回線で接続する必要がありました。他のSI事業者や通信事業者が顧客にクラウドサービスへの閉域接続サービスを提供する場合も同様の構成が必要です。

 しかし印西キャンパスにクラウドサービス接続拠点があれば専用線を引く手間を省き、構内での閉域接続が可能になります。専用回線を利用しないため品質や納期、コスト面でも顧客のメリットは大きいでしょう。

クラウドサービス接続拠点を開設するメリット(出典:SCSK/NEC提供資料)

 さらにわれわれはSI事業者としてクラウドインテグレーションを手掛けたり、両社が持つさまざまなソリューションを提供しています。顧客とエコシステムパートナーとの接続だけでなく、エコシステムパートナー同士を接続するための環境の構築や運用も支援できる点が強みです。エコシステムパートナーにとっても提供するサービスの幅を広げられるため、大きなビジネス機会になると考えています。

ExpressRoute接続拠点への構内接続で何が変わるか

──インターコネクテッドエコシステムを介した業務課題解決としてどういったものを想定しているのでしょうか。特に直近のトピックであるExpressRoute接続拠点への構内接続によってどう環境が変わるかについて、具体的な利用ケースやメリットを教えてください。

上坂氏: ExpressRoute接続拠点を活用としたサービスとしては2つを想定しています。

 一つは「Azure Virtual Desktop」(以下、AVD)を使ったワークプレース環境の提供です。AVDからアクセスする「Microsoft 365」はAVDと同じマイクロソフトのデータセンターで提供されるため、遅延なくその機能を利用できます。

 われわれ自身もテレワークを推進する上で、Microsoft 365をはじめとしたクラウドサービスの重要性が高まるとともにトラフィックの課題に直面しました。NECはこれまでも仮想デスクトップサービスとMicrosoft 365を利用していましたが、レスポンスと品質の問題で画面表示をする端末とは別に、携帯電話等の音声通話をする端末を用意する状況もありました。AVDを活用することで、Microsoft 365とのレスポンスが改善し、画面も音声も1つの端末で利用するようになっています。

 一方でAVDから顧客保有のシステムに接続する際、VPNを経由する方法ではセキュリティの課題や通信速度が安定しないといった課題があります。印西キャンパスに保有システムを配置すればAVDからExpressRoute経由で閉域接続できるため、セキュアかつ低レイテンシで安定したサービス利用が実現します。

小笠原氏: もう一つは、顧客のモダナイゼーションにおける課題を解決するケースです。金融業など高いセキュリティが要求される顧客が「Microsoft Azure」(以下、Azure)のサービスを利用したくても、社内セキュリティポリシーの制約によって、基幹システムの機密データをAzureに移行できないというケースがあります。この場合、Azureから基幹システムのデータにセキュアかつ低レイテンシでアクセスする必要があり、印西キャンパスに顧客システムを設置することで解決できます。

 また、SCSKは基幹システムにメインフレームを利用する顧客に対し、MF+(注)サービスを展開しておりクラウドとメインフレームの最適配置(リホスト、リライト、リビルド)を実現し、顧客のモダナイゼーションを支援することが可能です。

(注)MF+とはメインフレームを利用している顧客のITインフラストラクチャーの将来構想策定から提供、設計、構築、モダナイゼーション、運用管理までワンストップでシームレスに支援し、「メインフレーム・トランスフォーメーション」を実現するサービス。

 その用途を含めてExpressRoute接続拠点の活用例は、以下を想定しています。

ExpressRoute接続拠点を活用したユースケース(出典:SCSK/NEC提供資料)

ハイブリッド/マルチクラウド時代に合致したデータセンターの姿

――今後のエコシステムパートナー拡大の方向性についてお聞かせください。

小笠原氏: 既に複数のエコシステムパートナーが参画していますが、顧客のニーズが多い幾つかのサービスについても今まさにインターコネクテッドエコシステム参画に向けた議論を進めています。実現すれば、顧客の利用サービスの品質向上につながると確信しています。この流れが軌道に乗れば、ゆくゆくはエコシステムの価値が高まり、自然とパートナーが集まり、顧客にさらに利便性の高い環境を提供できる好循環を生み出せると考えています。

上坂氏: ハイブリッド/マルチクラウドが主流になっても、顧客は必ずプライベートクラウドなどの形でオンプレミスシステムを持つことになるでしょう。顧客のマルチクラウド指向に合わせて、われわれもAzureだけでなく主要なエンタープライズIT向けのクラウドサービス事業者にも同じようにインターコネクテッドエコシステムの取り組みを進められればと考えています。

 両社はエコシステムパートナーの誘致を継続的に推進し、データセンター内の顧客保有システムと各種クラウドサービスを併用した環境における高い利便性と機密性を実現します。

小笠原氏: 今からエコシステムを強固なものにしておくことで、10年後に新たなプレーヤーが登場したときにも取り組みを進めやすい状況を構築しておきたいという思いもあります。進化の速いクラウドビジネスの中で、5年先、10年先を見据えた取り組みを進めていきます。両社は今後もデータセンターおよびネットワーク領域における協業を通じて、顧客のDX推進と事業成長を支援し続けます。

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提供:日本電気株式会社、SCSK株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年9月1日

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