成長市場の介護業界で売り上げ1兆円を目指す 在宅介護テック企業のポテンシャルは?社長がコミット「DX推進の実績と経験、積めます」

国内介護市場は年率5%以上の成長が予想され、業界を挙げてデジタル化が進む見込みだ。業界のデジタルプラットフォーマーとしての地位を確立しようとDX人材を募る老舗企業がある。「2050年に売上高1兆円」を計画する企業にその手の内を聞いた。

» 2022年12月01日 10時00分 公開
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 介護業界というとアナログな仕事が多く、人手不足から長時間労働が常態化しているといったイメージを持つ人も多いだろう。これは見方を変えると、デジタル化による効果が出やすい業界とも言える。

 だが、デジタル化の先のデジタルトランスフォーメーション(DX)をイメージできる企業はそう多くはない。ここに斬り込むのがヤマシタだ。同社は今、在宅介護テック業界のプラットフォーマーを目指して大胆なDXを推進している。

 ヤマシタは1963年創業の老舗企業で、福祉用具レンタル・販売事業やリネンサプライ事業を展開している。全国に75を超える拠点を持ち、2400人超の従業員を抱える業界大手企業の一つだ。山下和洋社長は、先代の急逝で2013年に現職に就いた。「最初は経営環境のあまりのアナログさに面食らいました」と、山下氏は当時を振り返る。

ヤマシタ社長 山下和洋氏 ヤマシタ社長 山下和洋氏

 山下氏は10年をかけて経営改革を進めてきた。社内の意識改革に取り組み、ITを活用した効率化やサービス品質の向上を手掛けたり組織運営の透明性を高めたりと、経営者としての評価も高い。現代的な経営手法を取り入れるために外部から経営人材も招いた。その手腕が認められ、2020年には経済出版社のダイヤモンドが主催するダイヤモンド経営者倶楽部「マネジメント・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。

 紙でのやりとりが主流の業界で、介護用品通販サイトのEC事業を譲り受け、介護、医療、健康用品に特化した全18サイトの運営を開始した。また、介護支援の在り方を変えるため、AI(人工知能)ベンチャーのエクサウィザーズと共同出資してエクサホームケアを設立した。エクサウィザーズが持つAI技術と、ヤマシタが有する福祉用具の知見や約10万人の利用者を支援するサービス網を組み合わせて、科学的な在宅介護サービスを提供している。

図1 トルトはデジタル庁主催の「good digital award」の健康/医療/介護部門において2022年に部門優秀賞を受賞した(出典:トルトのWebページ) 図1 トルトはデジタル庁主催の「good digital award」の健康/医療/介護部門において2022年に部門優秀賞を受賞した(出典:トルトのWebページ)

 山下氏は「合理的で透明性の高い組織でなければ良い人材は集まらない」との認識の下、Amazonなど外資系大手企業で人事経験を積んだメンバーを責任者として招き、そのノウハウを活用して、経営戦略を実現する人材戦略の構築に反映している。

 「職種ごとに業務とスキルを『職種力』として定義して、目標管理や能力開発、配置、評価に活用しています。新卒、中途入社者の『オンボーディング』を仕組み化して独り立ちを可視化しました。今期は成長、昇格速度向上のために人材DX組織をつくり、デジタルを活用したデータと事実に基づく透明度の高い人材戦略、制度を目指します」

 組織風土調査や部下が上司を評価する仕組みを導入し、AIによる1on1マネジメントなどを実施している。これは中期経営計画で掲げる従業員の仕事のやりがい(EX)を高めて成長を促す方針に基づいており、「2050年売上高1兆円企業」という目標を実現するための取り組みの一環だという。

「売り上げ1兆円ビジョンは現実的」 在宅介護テックプラットフォーマーへの道筋

 ヤマシタの2022年3月期の売上高は241億円だ。山下氏は、2050年までに売上高を1兆円に乗せる『ヤマシタの展望』を社内外に示している。野心的なビジョンに見えるが「決して空想ではなく、一定の市場分析データに基づいた現実的な積み上げだ」と自信をのぞかせる。

 成長のカギは、介護福祉業界全体の「デジタルシフト」と「在宅シフト」だ。

 「ヤマシタは在宅介護のプラットフォーマーを目指しています。ヤマシタの介護事業の中心である福祉用具レンタルは、在宅介護を支えるいわば“インフラ”です。介護予防サービスの利用者(受給者)全体から見たときに、在宅介護サービスの中で最も利用率が高いのが福祉用具レンタルです。その利用率は約6割に上ります」と山下氏は語る(注1)。

 「高い専門性を持つヤマシタの従業員は、利用者の自宅に訪問して在宅介護のきめ細かいニーズをとらえています。福祉用具レンタル事業で業界ナンバーワンを取れれば、利用者のQOL(生活の質)を考える在宅介護のプラットフォーマーになれる可能性が高まります」

 ヤマシタが考えているのは、利用者データの活用だ。データを収集、分析して利用者のニーズを把握し、それを基に新規事業を立ち上げる。「こうしたサイクルを繰り返すことでより良いサービスを提供しようと考えています。OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)やエクサウィザーズとの共同出資などの取り組みはこの一環です」

 介護福祉業界は、高齢者人口の増加に対応するために官民を挙げてデジタル化を推進している。デジタル庁が中心になって推進している各種申請や証明書のデジタル化をはじめ、介護業界では2023年に「ケアプランデータ連携システム」がスタートする。

 同システムの構築によって紙でのやりとりが主流だったケアプランをデジタル化し、介護サービス事業者と居宅介護支援事業者間でデータ連携することで人的ミスを防ぎ、介護従事者の業務負担を低減するという狙いがある。

図2 ケアプランデータ連携システムの業務フロー図(予定の連携の場合)(注2) (厚生労働省『ケアプランデータ連携システム』の概要等の周知について[情報提供])(注2)

 この他、訪問介護のレセプト(介護事業者が保険者に請求するサービス介護給付費の明細書)情報の電子化も議論が進んでおり、数年後には実現する予定だ。

 しかし、デジタル化に対応するための十分なリソースを持つ事業者は限られるのが実態だ。在宅介護テックプラットフォーマーを目指すヤマシタは、業界全体のデジタル化をリードする考えだ。「これらの制度が成立したときに、ヤマシタは即座に対応して介護従事者の負担軽減を実現します」

 業界のデジタル化の流れにより、介護の在宅シフトの動きも確定的だ。社会的なコストを抑えるため、従来の入院や介護施設入所によるケアではなく、なるべく住み慣れた自宅で身体機能を維持して自立生活を送れるよう促す方向へ介護業界全体が進んでいる。

 「ここで重要になるのが、自立生活の指標である『ADL』(日常生活動作)を把握し、悪化させないことを重視したケアの在り方です。ヤマシタが持つデータを生かせば『どの症状の利用者にどの福祉用具が効果的か』といった情報を分析できるようになります。福祉用品レンタル事業を運営するわれわれならではの情報です。将来的には最適な福祉用具とその使い方をより簡易に提案できるようになるでしょう」

 ADLを悪化させる最大の原因の一つは転倒事故によるけがだ。福祉用具選定のミスマッチによる転倒を未然に防ぐことができれば、QOL(生活の質)向上や社会保障費の抑制にもつながる。

モダンなIT基盤とデジタル人材が楽しめる刺激的な環境

 ヤマシタはデジタル人材を積極的に採用している。基礎データを整備するためにもデジタルスキルを持った人材が重要になるからだ。山下氏は、優秀な人材を集めるために人事制度を含めて良い提案を実行する方針を打ち出している。

 「自ら課題を見つけ出して解決策を提案、実行したい人にとって、やりがいがある環境だと自負しています。新しいことにチャレンジしたい、DX推進の経験や実績を積みたい人に参加していただきたいと思っています。デジタルの力で、シェア拡大だけでなく介護業界の変革を目指します。介護という社会貢献度の高い市場で、事業を通じて『正しく生きる、豊かに生きる』という理念を実現します」

 介護レンタル業界におけるヤマシタの市場シェアは5%程度だが、現代的な経営手法とデジタルをフル活用した事業運営の推進によって得た、他社にはまねできないサービス品質や生産性の高さを強みにシェア拡大を目指している。

 「ヤマシタの国内介護レンタル事業は2050年に2000億〜3000億円規模に成長すると考えています。成長性に期待して、アクセンチュアなどのグローバル大手ITコンサルティング企業でDX推進を経験したメンバーが参加することになりました。外部のアドバイザーにもDX推進で著名な実績ある方々に参加いただいています」(山下氏)

 ヤマシタは、2024年をめどに基幹システムの刷新も進めている。新システムはアジリティーと可用性を重視してマイクロサービスアーキテクチャを前提に構築する計画だ。今後のビジネス拡大を念頭に、アプリケーション開発の内製化も進める。

 介護に関わる新事業の構想もある。在宅介護の現場からニーズを拾い上げることで、新しいサービスを効果的に提供するというものだ。

 「介護市場の拡大を狙って参入するベンチャーは多いのですが、良いアイデアがあっても、ニーズを拾い、かつ顧客に受け入れられる品質を実現するのは簡単ではありません。当社はホームケア事業に関わるスタッフが全国約10万人に訪問サービスを提供しています。彼らを通じて現場のさまざまな問題を把握し、課題解決のアイデアを形にしてすぐに実践できます。このスピードと実行力は大きなアドバンテージになります」

在宅介護テックプラットフォームの海外展開、顧客課題を軸にした新規事業開発構想

 ヤマシタはこれらの取り組みに加え、海外展開、周辺課題の事業化を進めている。

 介護レンタル事業の海外展開においては、2020年に上海市(中国)に合弁企業「山下福至(上海)健康管理有限公司」を立ち上げた。山下氏は「品質の高さが奏功し、現地市場シェア50%以上を獲得している。将来は海外でも在宅介護テックを軸に高品質なサービスをスピード感を持って提供したい」と言う。「デジタルを活用することで、顧客に使いやすいサービスが今までよりもリーズナブルな価格でスピード感をもって、より多くの顧客に届けられると確信しています。」

 サービス拡充という視点では、介護を軸とした住宅リフォームサービスの事業化も検討している。在宅介護のリアルな声を生かした実用的でローコストなリフォームサービスを考えている。

「派手さはありませんが、これからニーズが急拡大する市場です。顧客課題を理解する私たちが手掛けることで、品質とサービスの両面で良いものを提供できる可能性があると思っています。当然、調達力やコストパフォーマンスなどの面は介護用品レンタル事業のノウハウを生かしつつ、サービス提供においては、自動生成した3Dモデルによるシミュレーションなどでデジタルの力を駆使する考えです」

 介護業界のデジタル化は始まったばかりで、ヤマシタの在宅介護テックプラットフォーマーへの道のりも途上にある。エンドユーザーや介護事業者からの獲得データを拡大するには、地道なアプリケーションのUX、UI改善や顧客から支持されるサービス開発が必要だ。ITスキルだけでなく、現場の課題と向き合って解決策を創出するクリエイティブな能力が求められる。

 「要介護者はもちろん、介護事業従事者の負担を減らして“目の前の人”を助けることの喜びは他に替え難いものです。社会課題を自らのアイデアと技術で解決し、一緒に成長したいと考えています」(山下氏)

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提供:株式会社ヤマシタ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年12月19日