「データ分析疲労」はなぜ起こる? 東急リバブルが実践したデータ活用の秘策「データ管理者の頑張り頼み」から脱却する

データ活用といっても、情報システム担当者の頑張り頼みで運用しているのではデータをタイムリーに生かせないばかりか、関係者全員が疲労する結果を生むこともある。東急リバブルが実践した「データ分析疲れ」解消方法とは。

» 2023年03月30日 10時00分 公開
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 データを活用して事業推進力を高めるには、まず「使えるデータがあること」が大前提だ。その上で、「データを次のアクションに生かすプロセス」が整備されていることがデータ活用の成功企業になる条件と言える。一方、日本国内を見渡してみるとデータ化されていないアナログな商習慣が残る業界は多い。

 不動産業界もそうした「アナログな商習慣が多く残る業界」の一つだが、その中でデータ活用を積極的に推進している企業の一社が、不動産の仲介や販売を手掛ける東急リバブルだ。

 本稿では、東急リバブルのデータ活用の取り組みとその成果を、同社の濱中芳典氏(経営管理本部 IT推進部 情報システム課 主任)と、それを支援したウイングアーク1stの田崎早瀬氏(Data Empowerment事業部 ビジネスディベロップメント室 室長)に聞いた。

データ活用の理想と現実のギャップをどう埋めるか

──東急リバブルは積極的にデータ活用を進めていると聞いています。現在、どのような取り組みをしておられますか。

濱中氏 不動産業界はFAXや電話といったアナログな方法で仕事を回す文化が根強く残ってきましたが、この10年ほどで大きく変化しています。当社も長らくスクラッチ開発の古い業務システムを利用していましたが、この10年ほどの間に基幹業務システムを見直して顧客管理のSaaSを導入し、さらには集計作業のためにBIツールを採用するなど、デジタル化を進めています。

 データ活用も、以前は古い基幹システムからCSVでデータを抽出してExcelによる分析を経て業績レポートなどを作成していました。

 ただし、これらは「集計・分析」であり「活用」ではありませんでした。分析した結果を次のアクションにつなげることができて「活用」ですから。BIツール導入だけでは理想の姿には届きません。

東急リバブル 濱中芳典氏

田崎氏 こうした課題は東急リバブルさまに限らず、多くの日本企業が抱える問題だと捉えています。この課題の背景には、データを取り扱う担当者やユーザーの「データ分析疲労」があるとみています。

――データ分析疲労とはどういった状況のことでしょうか。

田崎氏 データ活用の目的は、データを使って企業競争力を上げることです。そのためデータ活用基盤の運用や管理が重要になりますが、近年は取り扱うデータが膨大で、データを抽出し加工するデータ活用基盤の運用管理者が、エンドユーザーの要望をさばき切れなくなっています。エンドユーザーもデータをスピーディーかつ柔軟に活用できないことにストレスを感じています。

 結果として、「手間をかけても次のアクションにつながらないデータ分析」が生まれるのです。これがデータ分析疲労です。

 データ活用基盤に蓄積された「データの見せ方」も同様です。シンプルなデータの可視化を目指してBIツールを導入したにもかかわらず、エンドユーザーがあれこれと手を加えて本当は必要ないデータまで参照してリッチな画面を構築した結果、BIツールのパフォーマンスが低下し、いつの間にかデータを可視化しても「意味がない」やBIツールは「使えない」といった烙印(らくいん)を押されることもあります。

 データ分析疲労を解消するには、単に「BIツールを提供すればよい」「データ分析基盤を構築すればよい」という話ではなく、「データ活用のためのリテラシー教育や人材育成も支援していく」ことが重要です。また、「最も欲しいデータは何か」などの確認も重要です。

ウイングアーク1stの田崎早瀬氏

濱中氏 私たちもまさにそうしたデータ活用の課題に直面していました。やりたいことを全て盛り込んでいくとシステムは複雑になります。事業部門が構築するシステムがいい例でしょう。さまざまなデータ項目を一画面に詰め込みがちなので処理が複雑になり、システム全体のパフォーマンスが悪くなります。BIツールを導入しても、処理を考えない画面設計が横行すると期待した結果が得られなかったり、結果が出たときにはもうタイミングを逸していたりといった問題が起こります。

 「次のアクション」につながるデータ活用のためには、「誰もが分析を簡単に実施でき、みんなで共有できる仕組み」が必要でした。そこで選んだのがウイングアーク1stのBIツール「MotionBoard」と、データマートとしても活用できるデータ分析基盤「Dr.Sum」のクラウド版「Dr.Sum Cloud」です。

図1 MotionBoardを使ったデータ可視化の例。地図や豊富なグラフ類などを利用できる(出典:ウイングアーク1st提供資料)

DBAなしでDB管理やデータ基盤整備が可能に

──データ分析疲労は組織的な問題でもありますが、技術面での課題は。

田崎氏 最初にBIツールのご相談をいただいたのは2016年頃のことです。そして、導入したBIツールについて「本当の意味でのデータ活用に取り組みたいが、それ以前にパフォーマンスの問題や扱うデータ形式の柔軟性が低いことなどが原因で取り組みが進まない」と悩んでおられると改めてご相談いただいたのが2021年頃だったと記憶しています。

 そもそも東急リバブルさまが分析対象とするデータは膨大です。顧客レコードだけでも数百万件のデータを取り扱っています。案件ごとにそれらのデータを複数掛け合わせて処理する必要があり、トランザクションは膨大な規模です。これをBIツールだけで分析すると必要なデータを収集・加工する作業に工数がかかり、パフォーマンスが出ません。この点が問題でした。

濱中氏 他にも、ある帳票システムからは決まったフォーマットでしかデータを出力できず、経営指標を確認するために複数の帳票システムのデータを見なければならないといった課題もありました。フォーマットを変えるには追加開発が必要で動かしにくく、ビジネス環境の変化に応じてタイムリーに分析のやり方を変えるといったことができませんでした

 この問題を解消するには、各システムの改修ではなくデータを集約して利用しやすい状況をつくる必要があります。そこで、BIツールにMotionBoardを採用してデータ分析用のデータを一元的に管理しつつ、エンドユーザーにも使いやすいデータマートとしてDr.Sum Cloudを導入することで問題を解消するという対応案をご提案いただきました。基幹システムから出力されるデータをDr.Sum Cloudに格納して誰でもアクセスできるようにすることで、「データ出力待ち」や「似たようなデータを出力しては各部門がバラバラにデータ分析をする」といった状況を解消することにしました。

田崎氏 Dr.Sum Cloudは、データマートとしての使い勝手はもちろん、データ処理の速さでも高い評価を頂いています。処理結果がすぐに得られるのでさまざまな試行錯誤にチャレンジしやすくなると考えています。

図2 Dr.Sum Cloudでパフォーマンスを向上(出典:ウイングアーク1st提供資料)

MotionBoardとDr.Sum Cloudで「アクション」につなげる仕組みを

──実際にMotionBoardとDr.Sum Cloudを採用したことで状況は変わったのでしょうか。

濱中氏 従来は、BIツールを導入しても「可視化するだけ」「分析するだけ」で手いっぱいでした。MotionBoardとDr.Sum Cloudを組み合わせることで、より柔軟に、かつスピーディーにリクエストに応えることが出来る環境が構築でき、また、一つのツール上で複数のシステム保持データにアクセスできるのでデータ収集の負担は減り、分析結果から「次のアクション」を考える余力が生まれたと思います

 私が一番魅力に感じたのは、国内ベンダーであるウイングアーク1st社のユーザーに寄り添った支援体制を持っていることです。日本企業のニーズをくみ上げる力も頼もしく感じます。外資のBIツールの中には日本企業がよく使うクロス集計などの機能が弱いものがあるのに対し、MotionBoardはこの点も安心です。担当営業の方も課題の本質をご理解、ご共感いただくスピードが速く、製品開発エンジニアの方との距離が近い点も安心感につながっています。直接ニーズを伝えて改善してもらうこともあります。

 ユーザーフレンドリーな作りでトライ&エラーがしやすく、データベースへの問い合わせ言語なども容易に操作できること、ユーザーコミュニティーの活動やドキュメントが充実していることも重要なポイントです。

図3 Dr.Sumの機能イメージ。さまざまな業務システムのデータを集約でき、データベースエンジニアでなくても視覚的にデータベースを管理できる(出典:ウイングアーク1st提供資料)

エンドユーザーが参加できる環境がさらなる改善要望を生む

──MotionBoardとDr.Sum Cloudの導入効果として、組織に生まれた変化は何でしょうか。

濱中氏 誰でも当たり前のようにデータを利用できる環境ができつつあると感じています。実際に「BIを使って○○を可視化したいがどうすればいいか」といった社内からの要望がこれまでよりも増えています。「チャット機能を通じてデータを取得したい」という声もあり、今はその機能の実装検討を行っているところです。

 エンドユーザーは自分が使うシステムが便利になることを考えています。環境を整備する身として、皆が意識しなくてもデータを活用できること、自然に次のアクションにつなげられることを目指してデータ活用環境の強化を進めようと考えています。

田崎氏 「データ活用あるある」の一つとして、便利になるとユーザーからの依頼が殺到して情報システム部門が困るという問題がありますね(笑)。

濱中氏 あります(笑)。エンドユーザーが活性化した今の新たな悩みは、「データ基盤やBIが分かる人材」をどう育てるかです。今後、労働人口が減少すれば人材不足はより深刻化していくでしょう。社内でスキルのある人材を育てる体制を持つことは内製化や高度なデータ活用を推進するに当たって必須になると考えています。今後も田崎さんをはじめ、ウイングアーク1stの皆さんのお力添えを得ながら取り組んでいきたいと思っています。

田崎氏 データ活用にはゴールはなく、試行錯誤を繰り返しながら常に発展させていくものだと考えております。今後も継続的にデータ活用を推進するには、濱中さんのようにITとビジネスの橋渡し役となる「ビジネストランスレーター」を育むことが重要です。理想の実現に向けてこれからも支援を続けていきます。



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提供:ウイングアーク1st株式会社
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