“モノ売り”からプラットフォーマーに 香川のメーカーが一年半で実現したDXクラウド人材が不足していても「両利きのDX」を実現

モノづくりからコトづくりへのシフトが重視される一方で、コトづくりのノウハウがないために「次の一手」を打てずに苦慮するメーカーも多い。人材が限られる中、短期間で業界が注目する新サービスの開発に成功した企業に秘訣を聞いた。

» 2023年11月27日 10時00分 公開
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 水に関わるインフラ事業を手掛ける株式会社石垣(以下、石垣社)は、クラウドに精通した技術者がいない状況で従来にないサービス「miyoru」を開発。これによって一躍、業界内外の注目を集めるDX推進企業に進化した。“成功の極意”はどこにあるのだろうか。

 1958年創業の石垣社は香川県に工場・開発センターを構え、脱水機やろ過機、ポンプ設備を提供するプラントエンジニアリングメーカーだ。同社は上下水道インフラ関連の「水環境分野 環境機械」、流体技術を集成した「水環境分野 ポンプ」、あらゆる分野の固液分離に対応する「産業分野 産業機械」という3つの事業を展開している。

 特に、固体と液体を分離させる固液分離の領域では独自の技術で世界的に高く評価されている。また、関連会社の石垣メンテナンスと共に装置販売とアフターサポートを一体化させたサービス展開にも強みを持つ。

経営企画の視点から情報システムとIoTをつなぐ

 石垣社の中村 晋氏(企画推進部 情報システム課 課長)は前職でのシステム開発経験を買われて石垣社の情報システム部門に入社した。経営企画を経験した後に情報システム部門へ戻り、3事業全体のDX推進を支援している。

石垣社の中村 晋氏

 中村氏は「経営企画に配属されたのはDXの重要性を強く感じていた常務取締役の意向がありました。各事業部のビジネス課題を知り、ITの視点から何ができるかを考えるきっかけになりました」と話す。

 石垣社はIoTを用いたDXに注目が集まり始めた2015年ごろに、環境機械で展開しているスクリュープレス式脱水機にArmプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」を取り付け、運転状況を可視化するというビジネスアイデアを検討したことがある。

 明確なビジネスモデルを描けたわけではなかったが、中村氏は「情報システム部門と事業部門が一緒になれば何かできるのではないかと感じた瞬間でした」と当時を振り返る。当時の情報システム部門と事業部門の間にはまだビジネス開発に対する視点に隔たりがあったというが、これを変える出来事が2019年に起きた。

 2019年はIoTソリューションのサービスなどが注目を集めており、石垣社のポンプ事業部が「IoTによる機器の稼働監視ツール」を新たに企画した。中村氏は「どうせ構築するならグループ企業やお客さまを巻き込んで活用できるものがいいのではないかと思い、過去に実践したIoTのアイデアも生かそうと考えました」と語る。

個人プロジェクトで始めたチャレンジをどう商用サービスに昇華させるか

 「もちろん課題もありました。当時の試作はあくまでもPoCレベルで小さく試したもので、グループ企業のみならず顧客企業も対象にしたサービスプラットフォームとなると、システムの品質や運用を含む設計が必要になります。既存システムの運用が中心の情報システム部門だけではノウハウが足りませんでした」

 中村氏は案件に関係する展示会やセミナーに参加して情報を収集した。情報システム部門は既存システムの運用保守も担っており、新規システムに多くのリソースを割けないことからクラウドの利用を想定していたが、データサービス一つを取っても多数の選択肢があることを知った。

 「自社の『やりたいこと』に対して、どのクラウドのどの機能がベストなのかを判断するのは困難でした。自力の情報収集だけではキャッチアップし切れず、困っていたところに日本マイクロソフトから連絡を頂きました。そこで思いを伝えたところ、すぐに最新のベストプラクティスを盛り込んだ具体的なシステム構成やコスト最適化の提案を頂けました」

 石垣社は、IoTを生かした新ビジネスプラットフォームの実現と既存情報システムのモダナイズを並走させ、リソースに限りがある情報システム部門の運用負担削減とコスト削減を実現しながら新ビジネスに挑戦するアプローチを選択した。限りある予算と人的リソースを有効活用してコスト最適な「Microsoft Azure」(以下、Azure)の導入を進めた形だ。

奥が深いAzure このクラウドに一番詳しいのは日本マイクロソフト

 中村氏は、クラウド移行前の現状を把握するための「ソリューションアセスメント」、Azureエンジニアリング部門の技術者がベストプラクティスに沿った設計ガイダンスを提供する「Fast Track for Azure」、ビジネスの次の成長を目指したデータ分析とAI導入支援プログラム「Innovate」(Azure Innovate)などの豊富な支援体制にメリットを感じた。

日本マイクロソフトが提供するAzure支援プログラム(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 既存のアプリケーションやデータ、インフラをAzureに移行するための支援プログラム「Azure Migrate & Modernize」(AMM)、クラウド人材の育成を目的としたハンズオン「Azureハンズオンワークショップ」も用意している。企業のクラウド利用やシステム構築ではSIerが間接的に支援するのが一般的だが、これらのプログラムでは日本マイクロソフトの技術者が直接クラウド導入支援チームに参加する。

 数あるシステムの中でもクラウドは技術アップデートが速く、その変化に対応するにはサービス提供者が想定した利用方法を順守することが重要だ。そのような観点で、サービス提供者であり技術情報を熟知するサービスプロバイダーのエンジニアが支援チームに加わることは大きなメリットとなる。

 「必要に応じて各領域の担当者がオンライン会議に参加してくれます。フランクなやりとりを通じて技術的に分からないことも聞くことができ『彼らとならうまくやっていける』と感じました」

 クラウド移行に挑戦する際は「クラウド移行は困難でコストも高い」というイメージがあったというが、日本マイクロソフトが提案したリザーブドインスタンスやクラウド移行による運用工数削減を加味した計画によって、クラウド移行についての社内の理解もスムーズに得られたという。

 今後、石垣社はAzureへの移行作業を直接日本マイクロソフトが支援する「CSU Migration Factory」(CMF)の活用を検討する予定だ。

わずか1年半で水環境を支えるプラットフォーム「miyoru」が完成

 こうして新規ビジネス開発と既存システムのモダナイズを並走させた石垣社のクラウド移行は、日本マイクロソフトによる導入支援もあり順調に進んだ。2021年12月にはデータ分析プラットフォームを構築するDXプロジェクトのPoCに加え、将来のコスト試算も開始した。自社のクラウド利用ルールの整備や人材育成も短期間で実現し、新規ビジネス開発の構想として新サービス「miyoru」が決まった。miyoruは設備や機器から収集した情報を蓄積し、AIを活用することで最適な水環境を提供するプラットフォームだ。

 miyoruは360度カメラで現場の遠隔監視を行う他、画像解析で水位や流向も計測できる。Azureの「Azure Synapse Analytics」(以下、Azure Synapse)によって天候や地図などの外部データも取り込んだデータ分析も可能だ。分析結果は自治体などをはじめとするユーザーに提供するだけでなく、地域住民向けの情報開示やアラートの発出にも利用できる。

 石垣社はまずmiyoruをポンプ事業の製品に組み込むことにした。

 同社のポンプ事業は、町の浸水などを防ぐ目的で自治体に採用されるケースが多い。従来は浸水リスクが高まると自治体の担当者が直接現場に赴いて状況を確認する必要があったが、miyoruの導入で大きな変化が起きた。

 「町の浸水などを遠隔から監視できれば作業者の負担が減るだけでなく、リスクの早期発見につながり、地域住民にも迅速に情報を届けられます。従来は流量計を機器に組み込むなど大掛かりな仕組みが必要でしたが、私たちが開発したmiyoruであればより簡便にこれを実現できます」

miyoruの機能概念図。自社システムやIoT機器、外部の事業者らが利用できる(出典:石垣社提供資料)

 石垣社は従来、製造業やプラントに加え、それらのアフターサービスをビジネスの軸にしていたが、miyoruというサービスプラットフォームを提供することでさらなる付加価値を顧客に提供できるようになった。2022年に開催された業界向けの展示会でmiyoruのコンセプト展示を行い、市場の反応などを見た。

業界向けの展示会でmiyoruのコンセプト展示を行った(出典:石垣社提供資料)

 当時はコンセプトのみの展示だったが、それからわずか1年後の2023年8月には実際に稼働するサービスを再度展示会に出した。DXへの関心が高まっていたこともあり、miyoruは国内外の来場者の注目を集めた。

短期間でクラウド知識を習得 「難しそう」を打破する取り組み

 イチからのクラウドサービス開発は、日本マイクロソフトがPoC段階で作成したロードマップと寸分たがわないスケジュールで進んでいる。

 既存システムのクラウド移行も現時点で70%程度完了しており、2025年には移行が完了する予定だ。既存オンプレミスシステムのクラウド移行について中村氏は「Azureの移行ツールは非常によくできています。その気になればほんの数時間でシステムをクラウドに載せ替えられるので全く苦労していません」と語る。

 「特にAzure Synapseのパイプライン機能は強力です。オンプレミスシステムにあるデータをAzureの東日本リージョンにコピーするのに、従来だと6〜7時間を要していましたがAzure Synapseであれば10分で済みます。BIでリアルタイムに近い情報を把握できますし、クラウド移行の効果を実感しています」

 石垣社のプロジェクトはクラウドの導入によるシステムのモダナイズとDXを一度に実現することから、クラウド利用の経験が乏しい企業にはハードルが高く思える。この点についても中村氏は「日本マイクロソフトが無償で提供するプログラムを活用して課題を解消しています」と語る。

 「いろいろなタスクが同時並行で動くことで追い込まれていた私を、情報システム部門のメンバーたちが率先して助けてくれました。クラウドに詳しくないメンバーも『Azureハンズオンワークショップ』を通じて成長しました。幾つかの業務は既に彼らがリードしています。クラウドのプロがいないチームが、日本マイクロソフトの助けを受けてサービスプラットフォームを生み出せる組織に変わりました。その結果がmiyoruで、今後は石垣社の製品とアフターサービスをけん引していくものになると思います」

 今後、ポンプ事業におけるmiyoruの開発は次の段階に入る。キーワードは「予測」だ。水害発生を防ぐために、水路の逆流をせき止めるゲートを閉めるタイミングや、排水するポンプの最適な運転タイミングを予測して支援する機能を搭載することを計画している。

 miyoruの成功をきっかけに、ポンプ事業部だけでなく石垣メンテナンスをはじめとする関連会社や海外企業からも「miyoruを導入したい」という声が高まっており、具体的な検討が始まっているという。

 「日本マイクロソフトと協力したことで、漠然としたアイデアを短期間で形にできました。しかし、彼らはシステムインテグレーターではないので全てを任せるわけにはいきません。要件定義などは支援サービスに入っていませんが、本来それはユーザーが責任を持って行うべきものです。ただ、自社で考え込んで前に進めないのであればすぐ相談すべきというのが私の結論です。何か効果的な回答が得られるはずです」

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2023年12月6日