AI開発・運用基盤構築の成功には何が必要か? OSSやハードウェアはどうする? 「Mr.GPU」に聞く

企業でのAI活用が本格化したことで、自社のAI基盤やセキュリティガバナンスをどう構築するかが課題になっている。AI基盤構築未経験の情報システム部門がこれらの環境整備を成功させるには何が必要なのだろうか。「Mr.GPU」に話を聞いた。

» 2023年11月29日 10時00分 公開
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 企業システムにおけるGPUの重要性が飛躍的に高まっている。従来、GPUはグラフィックス用途やHPC用途(数理解析やシミュレーション)で限られた部門の専門性が高い人材が利用していた。しかし、現在は一般的な情報システム部門が導入や利用に関わることも増えてきた。

企業競争力に直結するAI基盤は「自社で構築」が主流に

エヌビディア 川井 源氏

 GPUを供給するエヌビディアの川井 源氏(エンタープライズ事業本部 データセンターGPUビジネス推進 シニアマネージャ)は、「GPUを搭載した高度なIT環境の整備を急ぐ企業が増えています」と説明する。

 「生成AIのように、新しい技術が既存のビジネス価値を向上させたりまったく新しい価値を生み出したりする事例も出てきました。AIが企業競争力に直結する事業もあるため、その活用を急ぐ企業も多くいらっしゃいます。汎用(はんよう)のAIモデルであればクラウドサービスの利用も考えられますが、企業競争力に直結する施策については独自のAIモデルを開発して運用するケースが多く、それらの処理基盤でのGPU採用が爆発的に増えています」(川井氏)

 NECの「Mr.GPU」こと荒井拡貴氏(コンピュート統括部・アクセラレータソリューショングループ プロフェッショナル)も、「経営方針として全社規模でのAIの活用を掲げる企業が増えています」と、直近の企業におけるIT戦略とAI利用のトレンドの変化を説明する。

AI導入 3つのハマりやすい落とし穴

 荒井氏によれば、AI導入には欠かせないGPU搭載サーバを導入する際は「AI基盤整備のノウハウ不足」「AIソリューションの乱立によるAI基盤のサイロ化」「AI活用における運用コスト」が課題になりやすい。

課題1:AI基盤整備のノウハウ不足

NEC 牛島英尋氏

 1つ目は、インフラ設計の問題だ。GPU搭載サーバ製品の導入支援をリードするNECの牛島英尋氏(インフラテックセールス統括部・金融・製造営業推進グループ プロフェッショナル)はこう説明する。

 「企業から、AI導入にどのようなソフトウェアを使うべきか、どのくらいの処理性能が必要なのかの見当が付かないという相談を受けることもあります」

 明確な用途のためにAIを導入する企業もあれば、さまざまな部門の利用を想定して統合AI基盤を導入したいという企業もある。いずれの場合も、AI向けのシステム構築のノウハウを持っている企業は多くはない。

課題2:AIソリューションの乱立によるAI基盤のサイロ化

NEC 顧 佳駿氏

 2つ目は、顧客ニーズの多様化を背景にした「AIソリューションの乱立によるAI基盤のサイロ化」だ。外観検査や品質管理、予知保全など、目的に特化したAIソリューションは多数存在する。NECの顧 佳駿氏(コンピュート統括部・サーバ企画グループ ビジネスプランナー)は、これら目的特化型AIソリューションが必ずしもAI導入の最短経路ではないと説明する。

 「ソリューション提供側からするとOne to Many、つまり1つのソリューションで複数の課題に対応できる方がビジネスにしやすい。しかし、実際のAIソリューション導入はOne to Oneが多い印象です。お客さまのニーズは多種多様なので、ソリューションもお客さまの環境に合わせて作り込む必要があります。目的特化型AIソリューションがあっても、自社の目的に合ったものがないということもあり得ます」(顧氏)

課題3:AI活用における運用コスト

 3つ目は、AIモデルの開発、管理、運用のライフサイクルをどう回すかという「AI活用における運用コスト」の問題だ。AIを使ってビジネスにメリットをもたらしたいというニーズは高まっているが、それを達成するにはデータの取得や、AIモデルの開発・精度向上などで、複数の部門が関わる必要があり、足並みをそろえるのは簡単ではない。

 企業にはデータを取得する部門やITインフラ整備担当者、データエンジニア、データサイエンティストなどさまざまなプレーヤーが存在し、それぞれが個別のソリューションを利用しているのが一般的だ。

 「AI活用は個々の部門に閉じた情報を把握して、全体最適を考えて進めなければなりません。それを担う人材がいる企業はほとんどないでしょう。求められる知識やノウハウ、技術も進化し続けていますが、ユーザー企業だけでは全体を俯瞰(ふかん)して管理することは困難です」(川井氏)

顧客ニーズに合わせたインフラを柔軟にカスタマイズして提供

 「NECは以前から国内有数のAIソリューション提供企業としての地位を確立しています。具体的な施策を外部に公表できないことが多いですが、自慢したいほど先進的な取り組みもあり、当社にはGPUを活用したAI基盤構築と運用のノウハウが蓄積されています。また、セキュリティに懸念のあるお客さまにはオンプレミスでの提供をご提案することもでき、安心してインフラ設計をお任せいただけると自負しております」と荒井氏は説明する。

 NECはエヌビディアと協力して、GPUの活用ノウハウに基づくAIソリューションの提供を本格化させている。エヌビディアとの協力で注目すべきは、単なるハードウェア供給だけでなくAIアプリケーションの開発と展開のためのソフトウェア群「NVIDIA AI Enterprise」においても協業関係にある点だ。

NVIDIA AI Enterprise(出典:NEC提供資料)

 「最近、増えているのが製造業のお客さまです。製造業では外観検査、品質管理、予知保全が代表的なユースケースです。その他にも、IoTの取り組みや配送とサプライチェーンの効率化、デジタルツインでのシミュレーションなどさまざまな使い方が広がりつつあります。それぞれのユースケースでさまざまな課題を抱えるお客さまに、NECの経験とノウハウが生かせると考えています」(荒井氏)

NECの「Mr.GPU」こと荒井拡貴氏

 このノウハウをNEC内で積極的に発信しているのが荒井氏だ。同氏はNECでさまざまなGPUを用いたAIソリューション開発やAI案件を推進する一方で、社内外でGPUやAI関連の最新トレンドを発信する「GPUテクノロジーのエバンジェリスト」として活躍している。注目のAIモデル、GPUやAI関連のOSSソフトウェアがあれば評価、検証結果をブログで発信する。ここ半年だけでも100件近い情報を発信しており、そのブログを見たシステムエンジニアからの問い合わせを受けることも多い。

 「多くのOSSがAIの開発、運用環境でデファクトスタンダードになりつつあります。NVIDIA AI Enterpriseには『PyTorch』『TensorFlow』(機械学習ライブラリ)や『NVIDIA RAPIDS』(ワークフロー高速化ライブラリ)が標準で搭載されています。これらのどれを使うのか、どう使いこなすかなどのノウハウが重要です。荒井がエヌビディアの皆さんと密に連携を取ってNEC社内に情報を展開しているので、GPUを用いたAIソリューションを提案するメンバーが一定水準以上のナレッジを持てる環境が整っています」(顧氏)

 相談件数が特に近年増えている製造業の顧客には、ハードウェアベンダーとしてのNECの長所も発揮できていると牛島氏は説明する。

 「NEC内で情報共有が盛んなことは、お客さまへの最適な提案につながっています。お客さまの製造ライン現場管理グループや情報システム部門とコミュニケーションを重ねることで、お客さまが利用するAIソリューションに最適なGPUを始めとしたシステム構成のご提案ができます」

検証済みの推奨構成を提供し、サポートまで受けられることがメリット

 NECとエヌビディアの協業の大きな成果として、NECのサーバ製品「Express5800シリーズ」にNVIDIAのGPUを搭載し、さらにNVIDIA AI Enterpriseをワンセットで提供する。

 荒井氏は、NECとエヌビディアのタッグが顧客に提供できる価値は、検証済みのハードウェアやOSSの推奨構成とNECでワンストップのサポートを提供できることにあると話す。

 NVIDIA AI Enterpriseで開発・運用環境を統一することによって、AIソリューションの乱立によるAI基盤のサイロ化や運用コストの課題も解消される。NECはこのNVIDIA AI Enterpriseをサーバにインストール済みで提供するSIサービスも用意している。

NECはGPU搭載サーバとAIモデルを組み合わせ、すぐに使える「セット」も展開する(出典:NECの提供資料)

 「ハードウェアからインテグレーションまで含めて提供できることがNECの強みの一つです。エッジやデータセンター、クラウドのどこに置くべきなのかのご提案も含めて、安全で高性能な環境を最適なコストで構築してご提供します」(牛島氏)

 NECとエヌビディアの長年にわたる強いパートナーシップも強みだ。

 「NECは、NVIDIA AI Enterpriseのパートナーであるだけでなく、クライアント向けの仮想GPUソリューションである『NVIDIA 仮想GPU(vGPU)ソフトウェア』もパートナーになっており、仮想空間での共同作業やシミュレーションを可能にする『NVIDIA Omniverse』も予定をしております。約10年前よりHPC領域からパートナー関係を続けてきた実績があり、十分なノウハウと技術的な連携があります」(荒井氏)

 NECとエヌビディアが連携して提供するソリューションは、企業におけるAI導入、活用の推進力となるであろう。

 「ビジネス環境の変化は速く、競争優位性を築くためにはスピード感を持ってAIを柔軟に活用することが重要です。今後も、お客さまのニーズに合わせてさまざまな提案をする所存です」(荒井氏)

 これからの企業の競争力強化に欠かせないAIの領域はトライ&エラーも重要だが、その「質」が重要になる。ハードウェアリソースだけでなく運用やセキュリティガバナンスを含めてベストな選択が求められる状況では、技術的な知見を持つパートナーの存在がより一層必要になるだろう。「Mr.GPU」を擁するNECはその一社となり得るのではないだろうか。

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提供:日本電気株式会社、エヌビディア合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2023年12月20日

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