非エンジニアがAWS認定資格を取るべき「2つのワケ」は?体系的な知識が「自信」と「キャリアアップ」につながる

「AWS認定資格はエンジニアのためのもの」という認識は古くなりつつある。「DX」と「SX」によりワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーであるTOPPANホールディングスでは全社的に同資格の取得を推進している。AWS認定資格取得で得られる「全社的なIT知識の底上げ」が個々の従業員のキャリアアップと事業にもたらすメリットとは。

» 2023年12月25日 10時00分 公開
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 2023年10月の持株会社移行に伴い、凸版印刷から印刷の文字を外す形で社名変更したTOPPANホールディングスは100年以上の実績で培った印刷テクノロジーをベースにさまざまな領域に事業展開しており、現在ではデジタル関連のサービスや素材・電子部材などのビジネスが急速に拡大している。さらなるビジネス拡大に向けて事業ポートフォリオの変革にも着手しており、DX(デジタルトランスフォーメーション)およびSX(サステナブルトランスフォーメーション)関連の事業を成長領域として設定し、機動的にビジネスを推進するために事業体制も大きく変更した。

 こうした流れの中で2023年4月に誕生したTOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANエッジは、顧客企業のセキュリティ対策やBPO(Business Process Outsourcing)案件を手掛けている。全社を挙げて従業員のリスキリングに取り組み、営業担当者などの非エンジニアもAWS認定資格を積極的に取得している。「商談における経験から非エンジニアにもIT知識が重要だと感じていました」と語る同社の宗 春来(そう はるき)氏(営業統括本部 第一営業本部 第二部 第二チーム)に、AWS資格取得がもたらした価値を聞いた。

非エンジニアでもIT知識は“マスト”

 ビジネス環境が激しく変化する中で、多くの企業がDXに取り組んでいる。限られた予算を最大限に生かして悩みや課題をDXで解決するには、IT知識を持つ支援企業、ひいては担当者が不可欠だ。

 AWSのクラウドサービスに関する高度な知識を持っていることを証明する「AWS Certified Cloud Practitioner」を2022年に取得した宗氏は、AWS認定資格を取得した背景について以下のように語る

 「今の時代はWebやモバイルに情報発信の軸足が移っています。私が営業として担当している金融業界も同じで、申請業務や申し込み業務のデジタル化が進み、『窓口業務で利用する紙の量を減らしたい』という相談が増えてきました。お客さまの第一声を聞く営業職として『システムがどう動いているのか』『お客さまの環境をどのようにデジタル化するのか』を商談の場できちんと説明したいと思うようになりました」

 顧客の要望を社内に持ち帰ってエンジニアに相談することも可能だが、宗氏は「商談の場で顧客としっかり会話することがベストだ」と感じたという。そのために必要なスキルや知識を身に付けたいと考えたときに「AWS Certified Cloud Practitionerが最適だ」と思い至ったという。

図1 印刷会社からDX支援企業に変化したTOPPANホールディングス(出典:TOPPANホールディングス提供資料) 図1 印刷会社からDX支援企業に変化したTOPPANホールディングス(出典:TOPPANホールディングス提供資料)

資格取得前は技術用語が理解できず対応に四苦八苦

TOPPANエッジの宗 春来氏 TOPPANエッジの宗 春来氏

 TOPPANホールディングス(当時は凸版印刷)は、2021年に発表した中期経営計画で2026年3月期までにDX事業の売り上げを拡大して「情報加工産業としてDXを推進し、社会的価値創造企業へと変革する」という目標をうたっている。同社のDX事業の根幹に位置付けられているのがパブリッククラウドの活用だ。この目標を実現するために非エンジニアも含めた全社でのリスキリングを計画し、AWS認定資格取得のための研修を実施することになった。

 こうした方針について宗氏はどう感じたのか。「私は学生時代から凸版印刷(当時)のインターンに参加した際に『これからは印刷会社にもデジタルやITの知識が必要になる』と感じていました」

 しかし入社後、Webサイト構築の案件に携わる中でITの専門用語に戸惑うことがあった。「お客さまと話していても分からないことが多く、『持ち帰って確認します』とワンクッション挟んでいました。そこで商談が止まってしまい、ビジネスチャンスを生かしきれていないと感じていました」

 こうした状況を受け、宗氏はリスキリングに取り組むことにした。所属している事業部が経済産業省認定の「ITパスポート試験」の受験を推奨し始めた時期で、同氏も2021年に受験して合格した。これが弾みになり、2022年には凸版印刷 人財開発センター(当時)主催のAWS認定資格研修に参加することになった。研修ではWebやサーバといったITインフラに関する理解が進んだ。

 「ITに携わったことのないビジネスパーソンにはなかなか理解が難しい領域かもしれませんが、基本を理解すればどんどん分かるようになりました。認定資格はエンジニアだけのものではないと感じました」

AWS認定資格の取得が大きな変化につながる

 AWS Certified Cloud Practitionerを取得することで、宗氏の仕事にさまざまな変化が起こった。

 1つ目の変化は「顧客からの信頼」だ。勉強して身に付いた知識を顧客との会話で生かせるようになり、社内に持ち帰って検討する回数が減ったことで商談が進むスピードが格段に上がった。顧客企業の潜在的な課題やニーズを察知して、より深い話ができるようになった。

 2つ目の変化は「TOPPANエッジ社内におけるコミュニケーションの在り方」だ。

 「以前はDX案件についてやりとりする際、お客さまの課題が何かをうまく言語化できず、社内で明確に伝えられないことにもどかしい思いを抱えていました。AWS Certified Cloud Practitionerの取得によって一定の知識が身に付き、ミーティングでお客さまの課題を深く掘り下げられるようになりました。知識量がエンジニアに近づくことで、突っ込んだディスカッションができるようになりました」

 社内外で良いサイクルが回るようになった結果、顧客への「提案の質」も向上したという。かつては顧客企業の課題を深く吟味(ぎんみ)できなかったため、提案書の大部分の作成をエンジニアに任せるケースがあった。そうして出来上がった提案書には営業部門の意向が反映されておらず、自社の手に余る提案内容になることもあった。現在は提案書の質が上がり、顧客の意に沿いつつTOPPANエッジとしてベストな提案ができるようになった。

 同社が実施するAWS認定資格研修には1600人超が参加し、資格取得者は約2200人に上る。年齢の高い従業員の中にはITに苦手意識を持つ人も多いが、「学ぼう」という意識が全社で高まっており、挑戦者は後を絶たない。宗氏は「マネジメント層の意識も変化していると感じます」と語る。

独学では身に付けられない「体系化した知識」を習得

 AWS資格取得の推進を通じて、TOPPANエッジにはさまざまな変化が起こった。一方で「資格をわざわざ取らなくても学ぶことはできるのではないか」という意見もあるだろう。

 これに対して宗氏は「資格を持っているということは、“正確な知識がある”ことを証明するものです。それが営業職としての自信にもつながっています」と話す。「会社の顔」として顧客と相対する営業にとって、自信を持って受け答えできることは大きなメリットだ。

 体系的な知識が身に付くのも、資格試験に挑むことの利点だろう。宗氏はAWS認定資格の勉強を通じてDXに関する知識が体系的に身に付いたことが仕事に良い効果をもたらしたと語る。

 「仕事で疑問に感じたことをその都度確認するだけだと断片的であいまいな理解になってしまうこともあります。体系化された知識が身に付くことでITに携わる人が注視しているポイントが分かり、お客さまとの会話で例え話を出したり、共通理解に基づいたコミュニケーションを取ったりできるようになりました」

 AWS認定資格は3年ごとの更新が必要だが、これについても宗氏は「更新はモチベーションになります」と笑顔で答える。

 「IT分野では発展途上の考え方やサービスも多いので、アップデートは大切です。知識に関しては3年ごとの更新では追い付かないぐらい常に変化しています。営業職である私はエンジニアとは異なり、技術的な限界に向かい合ったり課題に直接携わったりしないからこそ、認定資格の更新を通して知識や認識をアップデートすることは大切だと考えています」

 宗氏はインタビューの最後に、エンジニアではないビジネスパーソンがAWS認定資格を取得することの意義について次のように語った。

 「『資格を取得しよう』と能動的に目標を立てること自体が一つの意義だと考えています。営業という“本業”とは別の分野で能動的な目標を持つことで、営業にも前向きな気持ちで取り組めるようになりました。資格取得後は社内のコミュニケーションが充実し、お客さまからの信頼度も上がり、自分自身のレベルアップにもつながりました。今後、全てのビジネスにおいてDXは避けられず、エンジニアでなくてもIT知識を体系的に身に付ける必要性は高まります。キャリアを上昇させたい人はまずAWS認定資格に挑戦してみてはいかがでしょうか」

 「AWS認定資格はエンジニアのもの」という考え方は、DXの重要性が増すにつれて過去のものになりつつある。今は、営業が顧客との間で交わすIT関連の“雑談”が大きなビジネスチャンスにつながり得る時代だ。「DX推進でもよくいわれていますが、『臆せずにまずはやってみる』のがお勧めです」

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