NTTテクノクロスの生成AIを活用したビジネス戦略とは?

生成AIはいまやビジネスに携わるほぼ全ての人の関心事となった。他社に後れを取らないだけではなく自社の競争優位性を確立するための生成AI活用は、経営層やITリーダーの重要テーマだ。NTTテクノクロスはどのようにして競合優位性につながる生成AIを活用したビジネス戦略を考えているのだろうか。

» 2024年03月27日 10時00分 公開
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コールセンター向け製品への適用をはじめとする3つの活動

向内隆文氏

 2022年11月、OpenAIによって「ChatGPT」がリリースされ、生成AIへの注目度は一気に高まった。その勢いは2024年になっても衰えていない。経営層やITリーダーの興味は、この革新的技術を顧客体験価値や生産性の向上にどう活用するかという点に集中している。

 NTTテクノクロスは、NTTの研究所と世界の先進技術を融合し、お客様と未来を共創し続けるソフトウェアリーディングカンパニーをビジョンに掲げ、時代に先駆けた製品・サービスを提供している。

 同社は、NTTグループの代表的なソフトウェア開発企業として、生成AI、特に大規模言語モデル(LLM)の可能性に早くから着目し、主力製品であるコールセンターの業務支援ソフトウェアへの適用など、LLMを活用したビジネスを積極的に進めている。

 同社の向内隆文氏(経営企画部 経営戦略部門 担当部長)は、「当社の重点事業であるコールセンターの業務支援ビジネスには、お客様とオペレーターの会話音声や業務マニュアル、FAQなど、日々、大量のテキスト情報が生まれるという特徴があり、LLMによる価値創造との相性がとても良いと考えています」と生成AIによるビジネスチャンスへの期待を語る。

 NTTテクノクロスでは、このようなLLMのビジネス活用を、大きく3つの活動に分けてシナジーを出しながら進めている。1つ目は、上述した製品へのLLMの適用とビジネス展開の活動、2つ目は、全社を挙げたLLMのスキル向上に関する活動、3つ目は、LLMの適用範囲を広げるチューニングなどの活動である。以下、順番に紹介する。

LLMの活用でコールセンター業務のさまざまな課題を解決

 NTTテクノクロスの主力製品として、NTTの研究所が長年研究している音声認識技術をベースとしたコールセンターの業務を支援する製品「ForeSight Voice Mining」(以下、FSVM)がある。高い認識精度の音声認識機能と、業務マニュアルやFAQの連携機能など、さまざまな機能を組み合わせて実現した。コールセンターのオペレーター席数の導入実績は全国で5万席以上だ。

 同社は、生成AIの登場時、すぐにFSVMに対する生成AIの組み込みの検討を開始した。その背景には、昨今、顧客のニーズに対応するためにサービスが多様化した結果、コールセンターの応対は多岐にわたり、オペレーターの業務負担は増大していることが挙げられる。

 通常、オペレーターは顧客対応を終了する都度、CRM(顧客関係管理)システムに顧客とのやりとりを要約して入力するアフターコールワークを行う。しかし、オペレーターによって重要だと思うことが異なっていたり、電話対応に追われてこの作業に十分な時間をかけられなかったりして、記録しておくべき応対内容を漏らしてしまうことがある。同社は生成AIがこの要約作成を大幅に効率化すると期待している。

生成AIがオペレーターの応対内容を項目ごとに要約(出典:NTTテクノクロスの提供画像)

 要約の次に期待しているのがFAQの作成だ。担当者は、FAQを新たに作成したり最新の情報に保ったりすることに非常に手間がかかっている。生成AIがオペレーターと顧客の会話を学習して自動的にFAQを作成できれば、コールセンターの業務負担が軽減される。さらに問い合わせをしてきた顧客も正しい情報を得ることができる。

 同社の山崎高史氏(カスタマーエクスペリエンス事業部 第二ビジネスユニット長)は、「オペレーターの離職率の高さ」の本質的な解決にも生成AIが役立つと考えている。

山崎高史氏

 「オペレーターは、覚えなければならないことが多過ぎることが強いストレスになっています。困ったときに生成AIが適切に助言すれば、負担は軽減されるでしょう。また、オペレーターの応対品質はスーパーバイザーのトレーニングスキルにも影響されるという課題もあります。優れた応対内容を学習させたトレーニングコンテンツを用意すれば、自己学習でスキルアップできるようになります」(山崎氏)

個人情報を保護した上でLLM活用を実現

 LLMには、問い合わせる際のテキストや学習データに個人情報が入るかもしれないという懸念がある。この懸念を払しょくするため、同社はデータ保護に関する製品も展開している。文書中の個人名や住所といった個人情報を抽出し、架空の名前や住所に置き換える「tasokarena」(タソカレナ)だ。

 tasokarenaを利用し、LLMへのプロンプトやモデルを学習させ、個人情報を保護した上で企業のビジネス文書、資料の活用が可能となる。「企業内のさまざまな業務で扱う文書で個人のプライバシーを保護することで、安心安全なLLMの活用が実現でき、適用業務の範囲が格段に広がります」(向内氏)

LLMスキルを全社員のICTリテラシーに

 2つ目の活動として、NTTテクノクロスは2023年10月、約1900人の全社員が利用できるLLM環境「ChatTX」を構築した。LLMの活用スキルをこれからのICTリテラシーと捉え、さまざまな社内業務で利用を推進している。

 製品開発を行う組織の他、総務や法務、経理、人事といった各組織の社員一人ひとりがLLMを活用したPoC環境をすぐに構築できる。業務改善の他、新製品・サービスを生み出す際の創造力を強化する狙いもある。現在までに、開発のデバッグのサポートやソースコードの説明、製品プロモーション動画のシナリオ作成など多数のユースケースが出てきている。

 「ChatTXでは、全社員でノウハウ共有するためのコミュニティー活動も活発です。例えば、法務部門の社員が行う契約文書に関する専門的な業務の進め方を、他部門の社員がChatTXに問い合わせることでできるようになりました。業務ノウハウの水平展開にも有用なことを社員一人ひとりが体感しています」(向内氏)

業界特化型LLMの展開に向け

 3つ目は、LLMの適用範囲を広げるチューニング(追加学習)に関する活動である。NTTテクノクロスは、NTTの研究所が独自に研究開発している「tsuzumi」の特徴を生かすことにより、業界特化型のLLMを実現・提供していく方針だ。

 tsuzumiには、確率計算の係数量を示すパラメーター数が70億の軽量版と6億の超軽量版の2つがあり、特に日本語で使いやすいという強みを持つ。さらに、追加学習によって特定の業界や業務に特化したアプリケーションの実装に適している特徴を持つ。

神山 歩相名(ほさな)氏

 さまざまなLLMのチューニングに取り組む神山 歩相名氏(カスタマーエクスペリエンス事業部 第二ビジネスユニット マネージャー)は、検証の中で実感できた強みを語る。

 「NTTが発表している内容から、tsuzumiの強みはアダプターにあることが分かります。LLMに専門知識を教え込むことはAIエンジニアにとって難しいチャレンジです。tsuzumiはモデル本体とアダプターを分け、アダプターで専門知識を学習させられる想定です。また、軽量型のモデルであるためGPUクラスタのような大がかりな環境を用意する必要がないのも特徴の一つと考えられます。その分、プロジェクトを立ち上げやすくなるのではないかと期待しています」(神山氏)

 LLMが軽量なので、スペックに限界のあるオンプレミス環境でデータの秘匿性を確保しつつアプリケーションに組み込める。

アダプターに専門知識を学習させることで、特定の業界や企業組織に特化した活用が可能(出典:NTTテクノクロスの提供画像)

 このように、特化型LLMの作り易さ、軽量性に強みを持つtsuzumiを、NTTテクノクロスが得意とするコールセンター向けをはじめとするさまざまな製品に活用していく予定だ。主に金融や通信業界で普及してきたFSVMとtsuzumiを組み合わせて業界に特化したカスタマイズを行い、アフターコールワークの稼働時間の削減を目指している。

さまざまな顧客接点での価値創造に向けて

 NTTテクノクロスでは、上記の3つのビジネス推進活動の他、生成AIの進化を想定した、さらに中期的なビジネス展開を検討している。生成AIの進化に伴い、今後、知性や感性を持ったデジタルヒューマンがより完成に近づいていくと予想し、これを、今のコールセンターでのコミュニケーションはもちろん、他のさまざまなコミュニケーションシーンにおける価値創造に生かす検討を進めている。

 向内氏は、「将来的には、リアル店舗や企業の受付など、さまざまな顧客接点でのコミュニケーションにおいて、AIアバターによってホスピタリティーの高い接客を実現するといったことも想定しています」と意気込む。

 以上のように、自社製品への生成AIの適用から、社員全体のスキル向上、また、tsuzumiの活用など、生成AIをビジネスでの競争優位につなげる活動を精力的に進めている。根底にあるのは、NTTの研究所と連携した長年の技術蓄積、また、コールセンターを運営する企業を中心としたマーケットでのビジネス経験である。今後もその特徴、経験を生かし、生成AIビジネスと技術開発を推進していく。

 社内業務、あるいは、製品・サービス開発など、生成AIのビジネス活用で課題を感じているなら、NTTテクノクロスのようなパートナーの助けを借りるのがよい。同社の経験を生かした新たな価値の共創を検討してほしい。

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提供:NTTテクノクロス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2024年4月17日