ノーコードツールをDXにつなげるための人材育成とガバナンス確保の肝4つの事例に学ぶ

現場の従業員が自ら業務を改革する手段として、ノーコードツールが普及している。そのための人材をどうやって育てればよいのか、ガバナンスをどうやって確保するのか。ノーコードツールのエキスパートが語った。

» 2024年03月28日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
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 大手企業を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が叫ばれているが、「IT人材が足りず手が回らない」「現場主導にやらされ感があり、改革が広がらない」といった問題が生じることもある。

 その際に有効なのが、ノーコードツールだ。現場が自ら業務を改革することを助け、DXを活性化させる手段として注目されている。

 アイティメディアが2023年に開催したセミナー「ローコード/ノーコード開発セミナー」に玉田一己氏(サイボウズ 執行役員)が登壇し、ノーコードツールをDXに生かすポイントや、そのための人材の育成方法、ガバナンスを確保するコツを、事例を交えて解説した。

変化が激しい時代に最適なノーコードツール

サイボウズ 執行役員 玉田一己氏

 変化の激しい時代において、システムにも柔軟性が求められていると玉田氏は強調する。

 「システム開発に多くの時間をかけた結果、完成時にはビジネスのニーズが変化していて現状とのギャップが生じることがあります。変化に柔軟に対応できるシステムが求められています」

 ノーコードツールは、汎用(はんよう)的なパーツと自社独自の機能拡張などを組み合わせて素早くシステムを構築し、ニーズの変化に合わせて機能を追加できる。

 サイボウズは、ノーコードツール「kintone」の提供に力を入れてきた。kintoneは、GUI操作で必要な項目を組み合わせてシステムを開発できる。クラウド環境にインフラが用意されているので、ユーザー側で高度なITの知識は必要ない。

 JavaScriptを使ったカスタマイズや外部システムとのAPI連携による機能拡張も可能だ。サイボウズではパートナー企業が200種類以上のJavaScript製部品をプラグインとして提供しているので、このプラグインを利用すればさらに手軽にシステムを拡張できる。

kintoneはノーコードツールでシステムを開発できる(出典:サイボウズの提供資料)

ノーコード開発によって全従業員がDX人材になれる

 DX推進を担う人材の拡大という点でも、ノーコードツールは有効だ。

 DX推進を担う人材は2つに分けられる。一つは高度な専門知識を持つAIエンジニアやデータサイエンティストなどの人材だ。大量に育成できれば理想だが、現実には難しい。もう一つが、ITツールを利用する現場の従業員だ。

 ノーコードツールは後者の人材を増やし、全社的なDX推進を助けると玉田氏は話す。

 「ノーコードツールという武器を手にすることで、現場が自ら業務を改善できるようになります。DX人材不足が叫ばれる今、業務に詳しい現場をDX人材として巻き込み、特定の領域に専門知識を持つ人材を投入して、全社的にDXを促進するのが現実的です」

人材育成におけるノーコードツールの役割(出典:サイボウズの提供資料)

 京セラは、kintoneを利用して事業部門にDXの輪を広げている企業の一つだ。同社は「Microsoft Excel」(以下、Excel)や電子メールによる業務をkintoneで効率化し、年間約780時間の削減効果を挙げた。ポイントの一つが、推進体制だ。

 「京セラさまは、DX担当者と事業部門が協力してkintoneを運用しています。DX担当者は、事業部門に技術的な支援や教育コンテンツを提供しています。事業部門はDX担当者の支援の下でシステムを開発し、継続的に改善しています」(玉田氏)

 DX担当者は社内公募で募った事業部門の人材で、DX担当者として一定期間活動してから事業部門に戻り、学んだスキルを生かして現場の改善に尽力している。この体制によって、kintoneを使える人材を増やしているという。

事例で分かる、kintoneによる全社的なDX推進に必要な4つの役割

 ノーコードツールの利用時に「どうやってシステムを管理すればよいのか」「どうやって担当者を教育し、増やせばよいのか」といった悩みが生じることもある。

 サイボウズは、kintoneによるDX推進に必要な役割を「システムを整備する人」「ルールを整備する人」「教育する人」「業務を改善する人」の4つに整理している。玉田氏は、それぞれの役割を解説する中で、ガバナンスや人材育成のヒントを提示した。

kintoneによる全社的なDX推進に必要な4つの役割(出典:サイボウズの提供資料)

 「システムを整備する人」は、IT部門の役割を担う人材だ。サイボウズは、その育成を支援するコンテンツとして動画スタートガイドセミナーハンズオンセミナーなどを提供している。

 特に好評なのが、「ノーコードでDXを加速する IT・DX部門のための業務改革セミナー」だ。DX部門とIT部門を対象に月に一度、1時間半程度のオンラインセミナーを開催し、DX推進に役立つ情報を解説している。セミナーを受講することで、DXのトレンドや戦略立案、業務改革の進め方、kintoneの活用方法、事例、現場に浸透させる方法などを学べる。

 「詳しい説明を聞きたい」「自社の事情も話しながら相談したい」という人のために、オンラインの個別相談会も実施している。

ノーコードツールによるDX推進はガバナンスも重要

 「ルールを整備する人」は、ルールを定めて運用する役割を持つ。その育成はガバナンス教育が中心だ。サイボウズが2023年に公開した無料のガバナンスガイドラインなどが参考になる。

 ガバナンスガイドラインは、ガバナンス方針の策定とガバナンス構築のポイントやリスクおよびコントロールについて詳しく解説している。

 玉田氏は、kintone利用時のガバナンス策定に力を入れている企業の一つとして、自動車部品メーカーのジヤトコの事例を挙げた。

 同社の調達管理部は、毎年実施している取引先へのアンケートの収集方法をExcelからkintoneに移行した。これによってアンケートの回収にかかる時間を半減させただけでなく、約1人月分の工数を削減した。

 「ジヤトコさまは、アンケート調査票システムを管理する責任者の明確化やプログラミングによる個別開発の禁止、命名規則や棚卸しの基準の設定と周知といったルールを設け、システムがブラックボックス化しないようにしています」(玉田氏)

 運用ルールの整備に際しては、パートナーベンダーとも協力した。kintoneで社外秘の情報を扱う場合に備えてIPアドレス制限を設けたり、極秘情報の閲覧ログを記録するためのアクセスログプラグインを導入したりなど、システムが自社のセキュリティポリシーに準拠するためのさまざまな要件を設定した。

kintoneでビジネスと組織文化を変革する

 3つ目の「教育する人」は、各種ITサービスを提供する神戸デジタル・ラボの事例が参考になる。同社では、開発管理部に所属する一人の若手従業員が中心となって、さまざまな部署を巻き込んでkintoneの活用を推進している。

 「そのご担当者さまはプログラミングの知識がない文系出身で、一からkintoneの使い方をマスターされました。その方が『使い方が分からない』というユーザーのために地道に社内勉強会を開催して、社内の理解と共感を得られました」(玉田氏)

 他にも、「勝手にシステムを変えられた」という不満が上がらないように、事業部門の代表者を集めてシステムの選定や構成を決め、「使ってみたけれど不便で困る」という声を減らすためにシステムのモックアップを社内モニターに事前に利用してもらうといった工夫をした。徐々にkintoneの認知を拡大し、「kintoneでシステムを作りたい」という従業員を増やした。

 4つ目の「業務を改善する人」は、現場の従業員を指す。岩手県で染物作りを営む京屋染物店は、旗振り役の経営陣の下、約20人の従業員がkintoneを活用している。

 同社は従来、部署ごとのバラバラな業務フローや情報のサイロ化に悩んでいた。これを解決するためにkintoneで商品を納品するまでの工程と各従業員のタスクを可視化して、進捗(しんちょく)と空きリソースを把握できるようにした。従業員が助け合える企業風土が醸成されたという。

 サイボウズは、kintoneユーザーがノウハウを紹介し合うイベント「kintone hive」を開催している。「全国には、kintoneで業務改革に取り組んでいる仲間がたくさんいます。イベントに参加して仲間を作り、企業改革や風土改革、DXの推進に役立ててください」と玉田氏は呼び掛けた。

 DXの狙いの一つは「変化に強いしなやかな組織、人を作ること」だ。全国で多くの企業が、ノーコードツールとしてkintoneを活用し、従業員をDX人材として育成しながら変革を進めている。

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提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2024年4月10日