DXCテクノロジーは2023年にAWSとのパートナーシップを拡大。得意とする業界特化型ソリューションやメインフレームのモダナイズなど、AWSのサービスを活用して国内の顧客支援を強化する考えだという。
クラウドファーストのトレンドをリードしてきた「Amazon Web Services」(AWS)は、日本でも金融や製造、小売りをはじめとする多様な業界で活用されており、多くの企業のビジネスアジリティー向上に寄与している。
これを支えるのが、各業界の課題を深く理解した「AWSパートナー」の存在だ。本企画は、企業の課題解決とビジネスアジリティー向上において特に高い実績を誇るAWSパートナー企業にクラウド活用のヒントを聞いた。
2017年にCSCとHewlett Packard Enterpriseのエンタープライズサービス部門が経営統合して誕生したDXCテクノロジー。現在、同社は世界70カ国以上に拠点を構え、多様な業界のDXを支えている。2018年8月にはAWSとグローバルパートナーシップを締結。DXCテクノロジーの企業向けITサービスと、AWSのサービスを融合させてクラウドシフトを支援している。
2023年11月には、ITアウトソーシングサービスによってさらにユーザー企業のクラウドシフトとDXを推進するために、AWSとの戦略的パートナーシップを拡大した。専門分野に応じたAWS認定資格者の育成にも注力し、サービスデリバリーをクラウド中心のアセットライトモデルに変革するための取り組みを進めている。AWSとの連携によってDXCテクノロジーが描く今後のSIとは。
AWSとの連携を強化する意義について、DXCテクノロジー・ジャパンの山田竜太氏(執行役員 テクノロジーコンサルティング事業部 事業部長兼OneCloud部 部長)は次のように説明する。
「当社はITインフラからシステムインテグレーションまで、お客さまにフルスタックのトータルソリューションを提供しています。それを支えるインフラとして不可欠なのがAWSのサービスです。AWSはIT業界をリードするクラウドプロバイダーであり、AWSビジネスを成長させることが当社の成長につながると考え、AWSとの連携を強化しているところです」
DXCテクノロジーの強みは、金融や製造、自動車、保険をはじめとする多様な産業に精通したエキスパートが、メインフレームのモダナイズやクラウドシフトなど、ユーザー企業をトータルで支援できるところにある。
各産業分野でAWSに関する高度な専門知識と能力を有していることを証明するパートナー認定制度「AWSコンピテンシープログラム」でコンピテンシー認定を9件取得している他、グローバルではAWSで実行可能なサードパーティー製ソフトウェアを販売する「AWS Marketplace」で13のSaaSを提供している。
AWSを活用した支援実績も豊富だ。データ分析/活用の領域ではデータ型組織の構築、AIを活用した新たな収益機会の開拓などでAWSのサービスとソフトウェアエンジニアリングの手法を用いて多くの企業を支援している。
SAP製品のクラウドリフト、アプリケーションやメインフレームのモダナイズの事例も多く、世界500万人以上のユーザーをサポートする。
こうしたさまざまな領域におけるクラウドシフトを、独自のマネージドサービスで毎年2万7000件以上支援している。
DXCテクノロジーがAWSとのパートナーシップを拡大した目的は、グローバルでの豊富な実績を基に、日本企業のAWS活用を包括的に支援するためだ。近頃ニーズが高まっているメインフレームやアプリケーションのモダナイズを専門チームがAWSのサービスを活用してサポートする。保険や製造、消費財などの産業向けDXソリューション「DXC SPARK IoT for Manufacturing」も提供し、今後は製薬業向けITサービスの国内展開も目指す。
DXCテクノロジー・ジャパンとの連携に携わったアマゾン ウェブ サービス ジャパンの相田哲也氏(パートナー アライアンス事業統括本部 ストラテジックパートナー統括本部 統括本部長 第一ストラテジックパートナー本部 本部長)は、医療機関におけるAWS活用の促進においても、DXCテクノロジー・ジャパンへの期待は大きいと語る。
「AWSは日本の医療制度や規定に準拠したクラウド活用のレファレンス『医療情報システム向け AWS 利用リファレンス』を作成しており、DXCテクノロジー・ジャパンさまにもご支援をいただいていました。DXCテクノロジー・ジャパンさまは、技術力はもちろん、国内のお客さまの要件に細やかに対応できる力も大きな強みだと考えていますので、今後も利用拡大のご支援に期待しています」
医療機関の他、保険業界のデータ活用をサポートするためにAWS Marketplaceで保険業界向けのデータプラットフォーム「DXC Insurance Data Hub」も提供している。
「保険業界は、保険を販売する募集人がお客さまのデータを手元で補完しており、保険会社からは最新の状況が把握できないことが多くあります。そこでAIを用いた商品提案機能を提供することで、募集人と保険会社との情報共有を促します。両者のデータを掛け合わせることで、募集人はお客さまに寄り添ったより高度な提案が可能になるのです。この大規模で複雑なデータの収集、加工、分析を効率的にするためAWSのサービスを活用しています」(山田氏)
DXCテクノロジー・ジャパンは、ユーザー企業のAWS活用を支援するための社内組織「OneCloud」を2020年に立ち上げた。AWS活用のハブとなる組織であり、日本では山田氏がOneCloudをリードし、各チームと連携して顧客をサポートしている。
またAI活用にも力を注ぎ、全社横断のAI推進組織「Powered by GenAI」を設立。システムインテグレーション事業では、アプリケーション開発の高速化を目的に生成AI活用を進めている。現在、AWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」などを利用してアプリケーション開発における実効性を検証しているところだ。
こうした事業を支えて顧客企業を包括的に支援するため、DXCテクノロジー・ジャパンはAWS認定の取得支援の他、eラーニングやハンズオントレーニングによる人材教育も精力的に取り組んでいる。相田氏は、AWSとの連携を通じてエンジニア育成も強化できたと語る。
「AWSの12の技術者認定資格を取得したエンジニアを表彰する『2024 Japan AWS All Certifications Engineers』では、DXCテクノロジー・ジャパンさまから3人が受賞しました。顧客のクラウド活用を包括的に支援するために、インフラからアプリケーションに至るまで幅広くカバーできるフルスタックエンジニアの育成に力を注いでいらっしゃることの現れだと考えています」(相田氏)
DXCテクノロジー・ジャパンの支援の下、大規模なAWS活用事例も続々と生まれている。その一部を紹介しよう。
ある製造系企業は、大規模な社内ITインフラの標準基盤としてAWSを採用した。AWSのベストプラクティス集「AWS Well-Architected」に基づいてエンタープライズレベルのセキュリティを保証し、クラウドインフラを整備した。
メインフレームを運用してきたある企業では、システムのモダナイゼーションが課題だった。この企業はCOBOLで開発された膨大なアプリケーション資産を抱え、ドキュメントや仕様書が不十分なことがプロジェクトを進める上での障害となっていた。モダナイゼーションを任されたDXCテクノロジー・ジャパンは生成AIによって仕様書を自動生成し、Java変換ツールなどを利用して、AWSの協力も得ながらクラウドへのマイグレーションを実施していった。
近頃は、グローバル進出を狙う中堅・中小企業も増えている。実際に、日本企業からもグローバルでの支援を求める相談が増えているという。特に多いのが、ガバナンスを維持しながら海外拠点でもクラウドシフトを進めたいといった要望だ。DXCテクノロジーの現地法人がそうした企業のクラウドマイグレーションをグローバルで支援できることもDXCテクノロジーの強みだ。
ITアウトソーシングサービスを長年提供してきたからこそ、DXCテクノロジー・ジャパンにはインフラとアプリケーションの双方に関する豊富な知見がある。相田氏は「DXCテクノロジー・ジャパンさまはオンプレミスの大規模なIT資産も安全にAWS環境へリフト&シフトできる技術力を持ち、運用まで一貫してお任せできる心強いパートナーです」と信頼の声を寄せた。
またDXCテクノロジーは、自動車や製造、金融業界を中心にビジネス競争力強化のためのエンジニアリングサービスを提供するLuxoftをグループ傘下に持つ。Luxoftは特に自動車業界で多くの支援実績があり、最近は生成AIを活用して自動運転技術の開発を支援するソリューションをリリースするなどIT業界においてプレゼンスを高めている。
Luxoftは金融業界向けソリューションも得意としており、海外ではAWS Marketplaceで業界特化型のソリューションを提供している。DXCテクノロジーとLuxoftが連携して顧客にサービスを提供するケースも増えている。
今後、DXCテクノロジー・ジャパンが注力する領域の一つがメインフレームのモダナイズだ。AWSのメインフレーム移行ソリューション「AWS Mainframe Modernization」(AWS M2)を利用してモダナイズを支援し、現在はCOBOLからJavaに変換したコードをクラウドに最適化するリファクタリングツール「AWS Blu Age」の検証を行っていく。
「メインフレームのマイグレーション先にAWSを選ぶことの利点は、エンド・ツー・エンドで幅広いソリューションが用意され、世界中の企業が活用している点にあります。すでに稼働しているシステムもあり、お客さまに自信を持ってお薦めしていきます」(山田氏)
山田氏は、AWSのテクノロジーは顧客課題解決のためのキーソリューションであるとし、今後の顧客支援について次のように語りインタビューを締めた。
「当社で重点を置いているメインフレームのモダナイズは、組織のDXを前進させるための足掛かりとなる重要な取り組みです。AWSの先進的なサービスを活用することでシステムの拡張性やアジリティーを確保でき、付加価値を見据えたモダナイズを実現できると確信しています。今後、AWSと当社の連携をさらに深化させ、両社が一体となって顧客課題に向き合っていく考えです」
AWSが「驚異的」と語るSkyのクラウドビジネス 両社が取り組む“本質的”な内製化支援の全貌
AWSで日本企業のビジネス開発を支援する――NTT Comの幹部が語る今後のソリューション戦略
「より安全性の高いクラウド活用を」 金融業界のAWS導入を先導する大和総研の取り組み
ZendeskとAWSのパートナーシップが卓越したCXサービスの実現につながった理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2024年11月27日