JPX、取引システム監視のAI判断精度97%以上 「ベテラン頼み」の運用をどう変えたのか:ITニュースピックアップ

東京証券取引所などを運営するJPXが、取引システムの運用監視業務に生成AIを本格適用した。熟練者が経験に基づいて選んでいたアラート発生時の対処手順を、AIが絞り込む。PoCで判断精度97%以上を達成するために、どのような仕組みを構築したのか。

» 2026年10月23日 07時00分 公開
[ITmedia]

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 東京証券取引所など3つの取引所を運営する日本取引所グループ(以下、JPX)は、株式やデリバティブ商品の取引システムで障害が起きた際、蓄積してきた運用ノウハウを基に影響範囲や対処方針を迅速に判断しなければならない。一方でJPXは、システムの高度化や複雑化、IT人材不足の深刻化を受け、熟練者が持つノウハウの継承と運用品質の維持を課題としていた。

 JPXは2026年10月、取引システムの運用監視業務に生成AIの本格適用を始めた。対象は、40以上のシステムを24時間365日体制で集中監視する業務だ。アラートが発生した際の対処手順は、これまで熟練者が経験に基づいて選んでいた。本格適用後は、AIが対処手順の候補を絞り込み、オペレーターの初動対応を支援する。PoC(概念実証)では、AIの判断精度97%以上を達成したという。

AIの判断精度をいかにして97%以上に高めたのか

 生成AIには、もっともらしい誤りを出力する「ハルシネーション」のリスクがある。JPXによると、PoCでは複数の機能を実装し、調整を重ねて判断精度を高めたという。どのように仕組みを構築したのか。

 JPXが採用したのは、日立製作所(以下、日立)の統合システム運用管理「JP1」のSaaS版が備えるAI機能「JP1 Cloud Service 生成AIアシスタント」だ。JPXと日立は、PoCでAIの判断を補う機能の実装とチューニングを継続的に実施し、その成果をJP1の製品機能に反映した。

 主な機能は、AIの回答に判断根拠を提示する機能と、AIが誤りやすい項目についてプロンプトを補助する機能だ。このほか、アラート発生時の対処手順の絞り込み精度を高める機能も実装した。

 両社によると、これらの機能によってハルシネーションを抑え、回答の品質を高めたという。PoCでは、JPXが対象システムで蓄積してきた1万件以上のインシデント事例と対処手順を活用した。アラートの発生を想定した約1600件のテストケースを基に、AIが対処手順の候補を絞り込む検証と評価、改良を重ねた。97%以上という判断精度は、テストケースのうちAIが正しい対処手順の候補を絞り込んだ割合を指す。

 実際の運用では、アラートが発生すると、AIが関連する対処手順と判断根拠を提示する。この業務は従来、熟練者の暗黙知や、システムが出力するメッセージごとに膨大に蓄積された対応手順に依存していた。両社は、本格適用によって、着任して間もないオペレーターでも安定した品質で担えるようになるとしている。

 今回の本格適用は、両社が2022年から進めてきた運用業務の高度化に関する検討の一環だ。日立はJPX発足前の東京証券取引所グループ時代を含め20年以上にわたり、JP1シリーズでJPXのシステム運用業務を支援してきた。

障害の初動切り分けにもAIを適用へ

 JPXは今後、運用監視業務へのAIの適用範囲を順次広げる。現在のAIの役割は、アラートに対する対処手順の候補を示すことにとどまる。障害が起きた際に原因や影響範囲を見極める初動切り分けや、その後の対処業務は現在も人が担っており、将来的にはこれらにもAIエージェントの適用を進める方針だ。

 日立は、AIエージェントによる開発や予兆検知、大量アラートの自動振り分けといった運用の高度化を見据えてJPXを支援する。本取り組みで得た知見は、AI特有のリスクの低減を図りながら運用を支援するソリューション群「HMAX AI Operations」の高度化にも活用する。日立は、JP1のSaaS版であるJP1 Cloud Serviceを、HMAX AI Operationsのラインアップの一つに位置付けている。本事例は、JPXと日立が2026年10月20日に発表した。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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