FOMA“プラスエリア”のメリットと、海外メーカーの憂鬱:神尾寿の時事日想
地方や山間部のエリアでも使える“プラスエリア”へ端末が対応することは、ムーバユーザーをFOMAへ移行したいドコモにとって重要な点。しかしこの変更は、海外端末メーカーにとってある難題を含んでいる。
7月28日、NTTドコモのFOMAエントリーモデル「SH700iS」が発売される。既報のとおり、同機はSH700iをベースに「FOMAプラスエリア」への対応が図られたモデルだ(7月22日の記事参照)。
FOMAプラスエリアは従来2GHz帯のみだったFOMAサービスにおいて、800MHz帯も使うことで効率的なエリア拡大を行うためのものだ。FOMA 901iSから対応している機能で、今回、700iSも対応したことにより、エントリーモデルにも採用が広がった。
FOMAプラスエリアの目的は地方・山間部のエリア拡大であり、「ムーバのカバーエリアに迫ること」(5月17日の記事参照)だ。ドコモブランドの源泉の1つが、ムーバにおける「カバーエリアの広さ、どこでもつながる安心感」にあったことを鑑みれば、FOMAのサービスエリアに対するユーザーの信頼度を向上させることは、FOMA移行プロセスにおける試金石になる。プラスエリアは人口カバー率上昇への貢献は少ないが、ドコモにとって重要な機能だ。
しかしその一方で、FOMAプラスエリアは1つの問題を孕んでいる。2GHz帯と800MHz帯を使うW-CDMAデュアルバンド端末が、国際的な標準仕様ではなく、ドコモ独自のものである点だ。海外の3G端末は2GHz帯のW-CDMA方式を前提にしており、そのままではFOMAプラスエリアに対応できない。
ドコモは今冬以降、海外メーカー製の3G端末も積極的に受け入れる方針である。しかし、800MHz帯を使うFOMAプラスエリアはグローバルな生産体制を重視する海外端末メーカーにとって対応が難しい部分だろう。最悪の場合、ドコモのFOMAラインナップの中に、「プラスエリア対応の国内メーカー製端末」と「プラスエリア非対応の海外メーカー製端末」が混在する可能性がある。
FOMAプラスエリアはドコモのFOMA移行戦略にとって重要で、ユーザーにとってもメリットの大きいものである。だが、それは日本市場への参入をねらう海外メーカーにとっては、憂鬱のタネになりそうだ。
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