「日本が引っ張っているとは思わない」 Intel、ワイヤレスの今を語る
DSLや3Gで世界最高水準にある日本だが、次の波である「WiMAX」では牽引役になり切れていない。
「日本が遅れているとは思わないが、日本が引っ張っているとも思わない」
来日した米Intelの主席副社長兼モビリティ事業本部長のショーン・M・マローニ氏は、同社が推進するWiMAXなど新しい無線通信技術が台頭して来ているワイヤレス技術の動向について、このように述べた。
規格面でまだ標準化に向けた動きが進行中のWiMAXだが、無線ブロードバンド通信規格の本命であることは間違いない(4月8日の記事参照)。「(WiMAXに替わる)独自技術も考えている。しかしスタンダードとして考えると、WiMAXのほかにはないと思う」(マローニ氏)
WiMAX向けの周波数帯の整備など、法整備の面でもWiMAX導入に向けた状況は国ごとに異なる。そんな中で、おそらく一歩先を行っているのは韓国だ。当初独自方式として始まったWiBroは、WiMAXとの統合に向けて動き出している(6月7日の記事参照)。そんな中でIntelは、規格整備とクライアント向けチップの開発などの面で、WiMAXコミュニティのリーダーシップを取り続けていきたい考えだ。「WiMAXのコミュニティの中で、強力な役割を果たしていこうという思いは変わっていない。イーサネットのときと同じだ」
WiMAXがセルラーネットワークを補完する
こうしたイーサネット由来の無線技術が、これまで携帯電話──3Gが扱っていた領域に進出していくのは間違いない。マルチメディア化の急速な進展と定額制の導入によって、セルラーネットワークのトラフィックはパンク状態に近づいている。都市部だけでも、WiMAXなどで3Gを補完していくのが必須と見る声は多い(7月26日の記事参照)。
「まさしくその通り。WiMAXによるセルラーネットワークの補完は起こると思う。3Gは成熟して信頼できる技術だ。さらにそこからは多くのアプリケーションが生まれている。WiMAXは、3Gの上に乗って重なるものだ」(マローニ氏)
マローニ氏は業界の動向として、「2006年後半には、間違いなくPCに。さらにはPDAやハイエンドフォンにも搭載されてくる」としたが、Intel自身によるWiMAX技術の携帯電話導入についてはコメントしなかった。同社は携帯電話向けのベースバンドチップも手がけているが、「今は3Gチップに関して特に力を入れている。3Gマーケットでプレイヤーの地位を確立したいと思っている」(マローニ氏)
IntelとしてのWiMAX導入の優先順位は、ワイヤレスブロードバンド向けとノートPCとの接続となる。「2007年には、ノートPC向けのWiMAXチップを出したい」(マローニ氏)
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