八剱社長に聞く、ウィルコムの現在と未来(後編):神尾寿の時事日想(特別編)(2/2 ページ)
好調な2005年に続き、2006年にウィルコムはどのような戦略を持っているのか。法人営業、プッシュ・ツー・トーク、販売・サービス拠点の展開などについて、八剱洋一郎社長の見解を聞いていく。
2006年は「もう1段の成長」を狙う
2006年、携帯電話キャリアは番号ポータビリティ(MNP)の競争を余儀なくされる(2004年3月30日の記事参照)。ウィルコムは「そもそもMNPのサークルに入れてもらえていないので、その影響は少ない」(八剱氏)とする一方で、ウィルコムが得意とするダブルホルダー(2台持ち)市場は着実に獲得していく戦略だ。
その上で、ウィルコムが狙うのは「もう1段の成長」である。
「今年ウィルコムは100万加入を獲得できそうですが、来年も同じ獲得数ではペースが同じですから、さらに契約数を上積みしていかなくてはならない。W-SIMなどは端末開発の足が速い仕組みなので、来年は様々なラインアップが投入できるでしょう。一方で、インフラ面にも投資します。特に通信スピードは3Gに負けている分野ですから、高速化を積極的に行います。現行より1.5倍は比較的はやいタイミング投入できますが(2004年10月14日の記事参照)、さらに高速なサービスも2006年度中には実現したいと考えています」(八剱氏)
さらに将来への投資としては、次世代PHSがあるという(9月8日の記事参照)。これも来年には実証実験のフェーズに入り、「本来のスピードが出せる規格として実現したい」(八剱氏)。一方で、来年に向けての課題としては、現在急成長していることによる当初計画の変更について、カーライルや京セラなど出資者の合意を得ることがあるという。
「例えば財務面では、主にデータ通信分野での成長を想定していた当初計画と、(音声定額で急成長する)現在では成長のスピードがまったく違う。当然ながら設備投資の額も変わってきます。しかし、来年の前半には黒字化もできそうですので、このあたりの話し合いも今後スムーズに進んでいくと考えています」
2005年、新生とともに台風の目になったウィルコムであるが、来年もその動向に目が離せないようだ。特にダブルホルダー市場や法人市場の動きには注目していく必要があるだろう。
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