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おサイフケータイで長崎のバスに乗ってみた神尾寿の時事日想・特別編:

長崎県内で利用できる共通バスカードが、iモードFeliCa端末で利用できるようになった。今日の時事日想は特別編として、モバイル長崎スマートカードの利用レポートをお届けしよう。

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 12月12日、長崎県の長崎バス協会が「モバイル長崎スマートカード」のサービスを開始した(12月12日の記事参照)。これは同協会が2002年から取り組んでいる非接触IC FeliCaを用いた電子乗車券システム「長崎スマートカード」のおサイフケータイ対応版であり、電子乗車券機能はもちろん、定期券機能などまで対応する多機能なものだ。

 本日の時事日想は特別編として、モバイル長崎スマートカードの利用レポートをお届けする。

バスは県民の足? スマートカードの高い利用率

 長崎市は海と山とに挟まれた土地にできた街だ。平野部は少なく、坂が多い。そのため長崎市街を中心に駐車場が少なく、クルマが利用しにくい環境にある。公共交通のバスと路面電車が県民の足だ。

 長崎におけるバスのIT化は他に先駆けており、平成14年1月からFeliCaカードを使った共通ICカード「長崎スマートカード」のサービスを開始している。現在までに発行された長崎スマートカードは定期券も含めて約31万4000枚で、平成16年度の年間利用件数は約5952万件。FeliCaカードの利用率は約65.4%であり、非接触IC乗車券の利用率ではJR東日本のSuicaを超えている。利用者にはしっかりと根付いたサービスである。

 今回、おサイフケータイ対応として始まった「モバイル長崎スマートカード」は、FeliCaカード型のスマートカードの発展型サービスとして登場した。

最初に窓口登録が必要。アプリの使い勝手はよい

 他のおサイフケータイのサービスと同様に、モバイル長崎スマートカードでも専用のICアプリをダウンロードして利用する。しかし、他のICアプリと違うのは、ソフトウェア側の利用者登録後に、長崎バス協会の各窓口で「最終登録」が必要なこと。これはモバイル長崎スマートカードが、乗車券機能だけでなく、定期券機能にも最初から対応するため、年齢や性別など「登録した利用者情報」の最終確認を人間の目で行う必要があるためだという。


各バス会社の営業窓口では、長崎スマートカードおよびモバイル長崎スマートカード用のリーダーライターが用意されており、窓口係員が積み増し作業などを行う

 とはいえ、すでにFeliCaカード型のサービスが始まっているため、窓口での対応はスムーズだ。カードと共用のリーダーライターにおサイフケータイを載せ、登録後、乗車券利用分の積み増し(チャージ)を行う。なお、モバイル長崎スマートカードは現段階でiモードを使ったオンラインチャージには対応せず、入金はバス営業所の窓口か、乗車中のバス内で行う必要がある。

 インデックスがシステム構築したモバイル長崎スマートカード用アプリは使い勝手よく作り込まれており、デザインにも随所に工夫が凝らされている。

 まず機能面では、利用履歴の参照機能があり、自分が乗った経路区間と支払料金、また入金情報などがアプリから確認できる。さらに定期券情報は、登録した利用者の情報や利用区間、利用期限の確認ができる。


モバイル長崎スマートカードはアプリの初期設定だけでは利用できない。窓口での最終登録と積み増し(チャージ)が必要

モバイル長崎スマートカードのアプリは、乗車券と定期券の機能が統合されている。利用履歴や個人情報の確認など、様々な部分で使いやすさとデザインのこだわりが見られる

 デザインが凝っているのも特徴だ。バスのアイコンや見やすい色調の配色など、交通系アプリという実用向けのものとしてはデザインに力が注がれている。また「性別や(通学・通勤など)属性によって背景色が変わるといった工夫をしている」(田辺隆也・インデックス社長室 事業企画担当)という。

乗車時と降車時に“かざす”

 バスでの利用は、乗車時に整理券を取る代わりにおサイフケータイを一度かざし、降車時に料金箱の上のリーダーライターにかざすことで、利用区間分の料金が支払われる仕組み。乗車時は利用停留所の登録のみなので、JR東日本のSuicaのように初乗り運賃が差し引かれることはない。だから残高0円で乗車し、バスの中でチャージして降車することもできる。


バスの乗車口で乗車場所を登録し(左)、降車時に料金を支払う仕組み(右)。それぞれ利用情報の確認もできるようになっている

 また定期券と併用できるのもポイントで、定期利用区間は定期券利用が適用され、区間外のみの運賃がチャージ済みの乗車券利用分から自動的に差し引かれる。バスの場合、定期券適応外の運賃の計算は電車以上に面倒なので、こういった計算が自動化されるのはありがたい。

 今回、筆者は日中の移動で数回モバイル長崎スマートカードを使用したが、乗車時・降車時の認識はスピーディーかつ正確であり、読み取りで待たされるということがなかった。

 そして、もう1つ感心したのが、バス利用客のスマートカードの普及である。オープニングセレモニーで利用率65.4%という数字を聞いてはいたが、バスを乗り降りする人の多くが、カードをかざしてバスに乗っている。サービス開始初日という事もあり、おサイフケータイ利用者はまだ見かけなかったが、「モバイル長崎スマートカードが、長崎初の(おサイフケータイ対応の)大型案件」(NTTドコモ九州長崎支店長の首藤雄二氏)だという。スマートカードの利用率の高さを鑑みれば、今後の普及に期待が持てそうだ。


モバイル長崎スマートカードの開始に伴い、乗車口のリーダーライターには、ドコモ九州長崎支店が用意した「おサイフケータイ利用可能」のステッカーが貼られている。そこにはお馴染みのドコモダケが……。実際にサービスが利用できるのも、当面は“ドコモだけ”である

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