3Gエリアの強さはauの武器――KDDI au九州支社に聞く(前編) :Interview(2/2 ページ)
ドコモのシェアが全国平均よりも高い九州地区。番号ポータビリティを前に、auは何を強化して戦っていくのか? KDDI au九州支社長の東尾重信氏にインタビューを行った。
MNPに向けてのターゲット層
周知のとおり、これまでのauは若年層と女性に的を絞ったマーケティングを行ってきた。今年に入ってからは、そのターゲット層がやや広げられた感があるが、MNPに向けてau九州支社ではどのようなユーザー層を狙っていくのだろうか。
「まずジュニア層とシニア層がドコモに比べて弱いという認識があります。ここは狙っていきます(2005年9月21日の記事参照)。また以前ですと、ガク割(が適用される高校や大学を)卒業と同時に雪崩をうってauからドコモに流れるという傾向があったのですが、それが改善されてきている。若い社会人やビジネスユーザーも獲得していきます」(東尾氏)
また、au全体の取り組みに準じて、独占世帯の獲得にも注力していく。
「家族割引の訴求については、ドコモがドコモダケを筆頭にかなりの販促費を投入しています。auとしても、この部分の訴求には相当な力を入れていかなければなりません。このドコモの独占世帯の強さに対して、かなりの手応えを感じているのが“My割”です(1月17日の記事参照)。ドコモ世帯の中で、まずは1人をauユーザーとして獲得することにMy割は貢献してまして、実際の好影響が現れています」(東尾氏)
My割は単身者の獲得と同時に、ドコモやボーダフォンの獲得した独占世帯に打ち込む鏨(たがね)でもある。この他キャリア家族内auユーザーの浸透には、かなりの自信を見せる。
「4人家族の中で、まずは若年層の1人をauユーザーにする。この3対1の状況から、(MNP後に)残りの3人をこっち(au)に引っ張り込む。そういう戦略を考えています」(東尾氏)
EZ助手席ナビに期待する
auはドコモに先んじた3Gエリアの充実を武器に、様々なコンテンツサービスを投入している。その中でauの代名詞のようになっているのが音楽分野の強さだが、東尾氏はそれ以外にも「ナビゲーション」が武器になると指摘する。
「auのGPSナビゲーションの取り組みは、歩行者向けの『EZナビウォーク』(3月27日の記事参照)から始まったのですが、私が注目しているのは『助手席ナビ』ですね(2005年9月1日の記事参照)。東京や大阪と違い、九州はクルマ利用が多いのですが、その中でEZ助手席ナビは大きな需要があると考えています」(東尾氏)
東京や大阪など大都市を除けば、公共交通と自動車交通の利用比率は3:7が平均だ。九州も当然ながら自家用車利用が交通の中心を占めるエリアになる。さらに、このような“生活や仕事の足がクルマ”の地域では、コンパクトカーや軽自動車の利用が多く、これらのクルマはカーナビゲーション専用機の装着率が低い傾向にある。安価で手軽なGPS携帯電話ナビゲーションの潜在市場は、都市部より地方の方が大きい(8月18日の記事参照)。
「EZ助手席ナビは訴求してもしたりないほどの潜在市場が、この地域にはあると考えています。マイカーの利用は多いですが、カーナビの装着率は低い。また、カーナビは新車装着されるケースが増えていますが、今カーナビ未装着のクルマにお乗りの方が、次のクルマの買うまでのためにアフターマーケットのカーナビを買うかというと、10万円以上の初期投資をすることをためらう人も多いのでしょう。他にも、一般的なカーナビ専用機は地図更新料が2万円近くと非常に高い。EZ助手席ナビなら月額315円で、常に最新の地図や道路情報が提供されます。また日常的にナビゲーションの必要性がない人には、日額のプランもあります。地方ドライバーのカーライフを考えると、EZ助手席ナビのコストパフォーマンスの高さが魅力になるのではないかと考えています」(東尾氏)
GPS携帯電話を使ったサービスについては、ライバルのドコモが出遅れている分野だ。au全体ではEZナビウォークや安心ナビの訴求も行うが、九州支社ではEZ助手席ナビも特に注力する考えだ。
「今後、EZ助手席ナビを実際に試してもらうキャンペーンや、利用シーンがわかる動画での訴求など、いろいろプランを考えています。この分野はドコモが弱いですから、力を入れていきます」(東尾氏)
EZナビウォークなどauのGPS関連サービスは、音楽に比べると地味だが「使ってみると手放せない」魅力がある。実際のサービス解約率も低い。クルマ社会の九州においてEZ助手席ナビの訴求が成功するか。これはGPS関連ビジネスの今後を見る上でも、興味深い取り組みと言えるだろう。
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