英Symbianが見据える「スマートフォン業界が直面する6つの課題」:Symbian Smartphone Show 2006
“スマートフォン”の普及が加速する中、スマートフォン向けのオープンOS「Symbian OS」を開発する英Symbianは、将来の挑戦課題として6つのテーマを掲げている。モバイル業界が直面する6つの課題とはどんなものだろうか?
英Symbianの調査研究担当上級副社長、デビッド・ウッド氏は10月18日、英ロンドンで開催された自社イベント「Symbian Smartphone Show 2006」で基調講演を行い、今後のモバイル業界の展望を話した。
音声通話機能だけでなく、メールやカメラなどさまざまな機能を備えた高機能な“スマートフォン”市場が立ち上がって数年、スマートフォンのパワーと機能は人々のライフスタイルに影響を与えている。スマートフォンはカメラであり、オーディオプレーヤーであり、ゲーム機でもある。自宅のテレビを遠隔操作したり、センサーと連動させて体調をチェックするアプリケーションも登場している。
このような進化は、「ハードウェアの進化だけでなく、ボリュームが増えると価格が下がり、ユーザーの付加価値が増えるという相乗効果から生まれたもの」とウッド氏は話す。
Symbianでは今後6年間で、携帯電話の性能、容量、機能は約10倍になり、価値も約10倍になると予想している。だが、未来はバラ色というわけではないようだ。
スマートフォン業界の6つの課題
ウッド氏はこの日、スマートフォン業界が将来直面すると思われる課題を6つ挙げた。
- キャパシティ
- ソフトウェアの洪水
- ウイルス/スパム
- エコシステム内での競争
- 欲
- 傲慢さ
今年、PC業界で大きな関心を集めた話題はノートPCのバッテリー不良による発火問題だ。これは、ノートPCの消費電力が限界に達していることを裏付けるもので、携帯電話業界としても対岸の火事ではない。消費電力やバッテリーのキャパシティの問題は切実で、「(バッテリーが発火する、といった事態は)今後想定しておくべきであり、OS側で解決できることは対応する」とウッド氏は言う。
ソフトウェアが増えるのも良いことばかりではない。ソフトウェアが増えると、統合作業に時間がかかるようになり、ユーザー側の複雑さが増すことを意味する。「ソフトウェアが多すぎると開発プロジェクトをだめにする」とウッド氏。例として、リリースが遅れている米Microsoftの次期OS「Windows Vista」「Windows Longhorn Server」を挙げた。増え続けるソフトウェアに対応するには、「OSが適切なアーキテクチャを持つこと」が必要だとウッド氏は指摘した。
スマートフォンのセキュリティに対する懸念は、以前から指摘されている通りだ(2005年3月9日の記事参照)。ウイルスやスパムへの対処だけでなく、ネットワークオペレーター(キャリア)が、セキュリティ上の懸念からネットワークを閉鎖するようなことになっては、イノベーションのサイクルが絶たれてしまう。そのためSymbianでは、同社の最新OSであるバージョン9でセキュリティ機能を強化した(9月20日の記事参照)。これは「大変な作業だった」とウッド氏。これにより、ソーシャルエンジニアリング、ソフトウェアエンジニアリングの両方の脅威に対応可能になった。
このほかSymbianでは、バリューチェーン内にいるプレーヤーの中で、より大きな収益を得ようと競争が起こるかもしれない、と予想している。「より大きなパイを得ようとプロプライエタリ(独自)なソリューションを提供する動きがないよう、オープン、標準ベースを呼びかける必要がある」とウッド氏。Symbianのモットーは、“競争する前にコラボレーション”。全員でパイを大きくしていく姿勢が必要だという。
もちろん、企業の最大の目標は収益だ。だが、「短期的な視野に基づく成功ではなく、長期的な成功のためにパートナー企業と協業していく必要がある」とウッド氏は釘を刺した。
またウッド氏は「『なんでも自社でできる』という傲慢な態度は危険だ」とも話す。技術は段階的なステップを経て到達するものであり、一足飛びに進化するものではないという。Symbianではリリースロードマップに沿って1つずつ開発目標をクリアしていき、パートナー企業が予測できるよう情報を提供していく。もちろん、過去のバージョンとの互換性も約束する。
最後にウッド氏は、「Symbianはエコシステムの中央の立場から、他のパートナーとともにこれらの課題を挑戦・解決していきたい」と話した。
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