オフショア開発第三の地にベトナムが浮上:日本人に似た真面目な国民性(3/3 ページ)
オフショア開発の地として新たにベトナムが浮上している。こつこつと仕事に取り組む真面目な人材が多く、人件費も安く抑えられることから、開発拠点に据える企業が増えている。だが安易にベトナムを選ぶと、成功は遠のくようだ。
ベトナムは製品開発の妙手となるか
「まず中国やインドでのオフショア開発を考えてみてください」
ベトナム人技術者の派遣サービスを手掛けるアストミルコープの武田雄己彦社長は、オフショア開発の相談にきた企業の多くにこう切り出す。
武田氏は「1000社を超える開発企業の中で、日本の開発委託先になりうるのは20社程度」と見積もる。国をあげてソフトウェア開発を奨励する制度を打ち出しているベトナムだが、技術力と専門知識を持ち日本語に長けた人材を有する企業は少ない。
「多くの企業はオフショア開発をすれば生産性が上がると思っているが、文化や言語の違う国の人間をマネジメントするのは思いのほか難しい」(武田氏)
日本とベトナムの間にあるこれらの溝を埋めるには、サイボウズのようにそれなりの期間とコストを要する。「オフショア開発を行う理由を明確に持たない企業が少なくない。オフショア開発は新規事業として取り組むくらいの気持ちが必要」。アストミルコープの猪瀬ルアン取締役は安易にベトナムを開発拠点に選ぼうとする企業に苦言を呈する。
コストを減らせるという理由だけでベトナムを開発拠点に据えるのも危険だ。「日本と同じレベルの技術が得られるなら人件費はより高くなる」(猪瀬氏)からだ。安価な人件費の裏には、専門的な技術力は即座に得られないという実態がある。
オフショア開発の委託を単なる外注と考えると成功はさらに遠のく。開発の課題を抽出し、日本での開発手法との間にあるギャップを埋めるために、技術文書の翻訳や作成ができる専門的な人材を自社で育て、積極的に現地に送り出す必要があるという。
「失敗することを前提と考えておくことが必要だが、まずは先行投資。長い目で見てパートナー企業を育てるつもりで考えるとよい」と武田氏は言う。
ベトナム人の開発への意欲は高い。ベトナムではエンジニアという職種は花形であるという。「給料は一般の人の3〜4倍。若くしてチームリーダーになれるし、ステータスも得られる」(猪瀬氏)
こうした背景からも分かるとおり、ベトナムを拠点としたオフショア開発はまだ初期段階だ。ベトナムで開発をしようとする企業は、「開発を丸投げする」という意識を捨て、パートナー企業としてともに開発を進める姿勢が必要となってくる。
オフショア開発の成功には地道な努力を積み重ねることが要求される。近道はなさそうだ。
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