OracleのエリソンCEO、「クラウドコンピューティング騒ぎ」をこき下ろす(2/2 ページ)
データベース帝国を築いた後でエンタープライズアプリケーションの攻略を開始したOracleのラリー・エリソンCEOは、Oracle OpenWorldで「クラウドコンピューティングをめぐる騒ぎはハイプにすぎない」と批判した。
キング氏は「クラウドコンピューティングは、透明で巨大なITソリューションを意味するようになり、そこでは、動作しさえすれば“ハードウェアやソフトウェアのブランド”はそれほど重視されない」と指摘した上で、Oracleは自社をクラウドに関連付けることにより、競合企業各社の漠然としたメッセージの中で方向を見失わないようにする必要があるとの見解を示している。
「エリソン氏は、クラウド型の環境では、コンピューティングを支える技術が時とともに衰退すると考えているのかもしれない。しかしSLA(Service Level Agreement)が保証されるかぎり、それがどんなデータベースなのかを気にする人などいない。自社の技術をクラウド製品として売り込む場所がない企業にとっては、クラウドコンピューティングは危険だ」
例えば、IBMのような企業であれば、Oracleのデータベースが含まれるクラウドを顧客に提供するかもしれないが、自社のDB2データベースをクラウドで提供してもよい。顧客のニーズが満たされ、顧客が自社のデータとコンテンツをIBMのインフラ上で運用するのにお金を払う気がありさえすれば、IBMのような企業は自社のインフラ上で競合企業の製品を提供することもできるのだ。
エリソン氏がハイプを批判しているだけなのであれば、何も問題はない。しかし業界はクラウドコンピューティングとSaaSに向かっていないと本当に考えているのであれば、同氏とOracleは、オンプレミス型データベースという船とともに沈むのではないかとわたしは思う。
その理由を説明しよう。
Googleがクラウドコンピューティングというコンセプトの上に強大なビジネスを構築し、Microsoftを狼狽させたのは、GoogleのSaaS型コラボレーションソフトウェアビジネスのおかげだ。Amazon Web Servicesは、ホステッドコンピューティングの様相を日に日に変えつつあり、いいか悪いかは別にして、多数のPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)型ベンチャー企業を生み出した。
IBMは、顧客のアプリケーションをホストするために新しいデータセンターを設立したり、既存のデータセンターを開放したりするのに、何十億ドルもの資金を惜しげもなく投入している。IBMの広報担当者は9月29日、次のように話してくれた。
「金融サービス業界は厳しい状況を迎えているが、リスク分析機能で非常に重要なコンポーネントをIBMのクラウドに移行している巨大銀行も何社か存在する。クラウドは企業にとって価値がないなどというのは、とんでもない話だ」
Salesforce.comは現段階では、同社が期待していたほどの収益を上げていないが、同社のいち早い成功は、CRM、ERP、人材管理、請求書発行などの業務機能をベースとしてビジネスを展開する多数のSaaSプロバイダーからなるエコシステムを生み出した。
Microsoftも本気でクラウドコンピューティングへの進出を目指しており、Microsoft Officeなど伝統的にオンプレミス型だったソリューションをSaaSとして提供している。
エリソン氏はハイプを軽蔑しているかもしれないが、Oracleが今後もクラウドの採用を進めるのは間違いなさそうだ。好むと好まざるにかかわらず、それがITの将来なのだから。
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