マイクロソフトの企業向けクラウドは「自社運用型との共存」指向:SLAで100%返金保証も(2/2 ページ)
自社運用型かクラウドサービスの導入か――。電子メールやスケジューラーといった情報系システムの運用が変化しつつある。マイクロソフトが提供を開始した企業向けクラウドサービス「Microsoft Online Services」は、両方のシステムを共存して稼働させることができるという。
自社運用とクラウドの共存を推し進めるマイクロソフト
クラウド型のサービスは、データセンターやIT機器の管理をサービスの提供側にゆだねることができ、ユーザー数などを自由に追加できる拡張性を持つ。一方、サービスという形態のため、企業ごとに使う機能をカスタマイズして追加するといった個別の要件を思い通りに実現できない場合もある。
BPOSは、運用形態によって「Standard」と「Dedicated」という2種類のサービスを用意し、自社運用のシステムとクラウド型のサービスを共存できるようにしている。
Standardは、サービスを提供するインフラを1つのアーキテクチャに統合し、その上で顧客ごとの環境を構築するマルチテナント型のサービス。「有りもののインフラを使うため、ユーザー数を柔軟に追加できる」(マイクロソフトインフォメーションワーカービジネス本部、ビジネスオンラインサービスグループの磯貝直之マネジャー)点が特徴で、シート数は無制限。同じアーキテクチャを使うため、企業ごとの機能のカスタマイズには向かない。
Dedicatedは、サービスのインフラを顧客ごとに用意するシングルテナント型のモデルで、5000ユーザー以上の企業の利用を想定している。サーバの設定やデータセンターへの専用線の敷設など、企業ごとに環境を構築するため、カスタマイズがしやすい。導入コストやサービスの運用開始までの時間はStandardよりも割高になる。
マイクロソフトの業務執行役員でインフォメーションワーカービジネス本部の本部長を務める横井伸好氏は「BPOSの導入で火が付くのは数千ユーザー規模の企業」と予測する。同規模の企業では、本社では自社運用型、拠点ではクラウド型のシステムを別に稼働させるといった使い方が出てくると見る。「既存のシステムをクラウドに全面移行すると、これまで使っていた業務アプリケーションが使えなくなる」(同氏)といった危険性があり、クラウドサービスへの移行を段階的に行う企業が出てきているからだ。
米国では既に数万ユーザー規模の企業で、自社運用型とクラウド型のシステムを共存させる導入が進んでいる。米Coca-Colaは7万ユーザーが同サービスを使い、自社運用型のメールシステム「Lotus Notes」と並行して稼働させている。米Eddie BauerもLotus Notesからの乗り換えを図り、1400人規模の導入をしている。米Eddie Bauerは「金曜日に1400人の従業員はLotus Notesユーザーとして家に帰り、月曜日にはMOSユーザーとして出社した」というエピソードを残し、クラウドサービスの導入の容易さにも言及している。
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