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外資ソフトが攻勢、「国策」定額給付金の支給管理にもわが社のコスト削減(3/3 ページ)

山梨県甲府市は3月、定額給付金支給管理システムにセールスフォース・ドットコムのサービスを採用した。SAPや新興BIの新たな動きが出てくるなど、ここにきて外資系ソフトウェアベンダーの攻勢が目立つ。

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インメモリ型BIという新手

 「これまでのBIとは論理が正反対」

 こう話すのは、米QlikTechが提供するBI製品QlikViewの日本での販売代理店となるサイロジックの垣田正昭社長だ。QlikTechは3月、日本市場への上陸を発表したばかりだ。QlikViewはインメモリ型のBI。データソースの分析の際に、ディスクではなくメモリにアクセスするため高速処理が可能になる。既にNTTコミュニケーションズのほか、国内4社が導入を決めている。


来日したQlikTechの上級副社長、アンソニー・デイトン氏。インメモリBIをアピールする

 「高速さはBIとしての使い方を変える」とQlikTechの上級副社長、アンソニー・デイトン氏は話す。ディスクへのアクセスが前提の従来型BIの場合、自社が持つ数億にも上るデータを絞り込むため、必要な情報を分析して取得するための中間データとして「キューブ」を生成する必要がある。ディスクアクセスの場合、処理速度の問題で億単位のデータをいきなり参照しにいくのは現実的ではないからだ。

 一方、メモリアクセスは、ディスクアクセスよりもはるかに高速であるため、中間データを作成することなく、膨大なデータを直接参照して分析できるのだ。結果として、QlikViewでは営業担当者をはじめあらゆる業務ユーザーが好きな時に、数億のデータを直接参照して自分独自の顧客リストなどを取得できる。すべて自分の手で、試行錯誤をしながら好きなだけ探せるのは大きな利点だ。従来型BIでは、キューブ作成などを情報システム室に依頼するなどユーザー自身でデータ分析を完結できないことが多い。それが面倒になり、使わなくなってしまうケースも少なくないようだ。また、キューブも時間とともに精度が落ちるため、定期的なメンテナンスが必要になる。

 「BIは処理結果の予測がつかない情報を提供することに価値がある。だが従来のBIは処理結果の枠組みをキューブという形で事前に定義しなくてはならない。ここに矛盾があった。実際には、キューブ定義の段階で何が見たいのかを、ユーザー自身が分かっていないことが多い」(垣田氏)

 QlikViewはこのプロセスを逆回転させる。設計、導入、構築という通常のBI構築の流れとは逆に、まず管理する全データで構成するBIシステムを構築してしまう。何を分析するのか、何が知りたいのか、地域別の売れ筋商品なのか、得意顧客の共通点なのかなど、知りたい情報は後で考えればいい。「考え方はExcelと同じ。Excelはあらゆるデータを手元に持った上で、フィルタなどを使って好きなように分析できる。Excelが最もユーザーの多いBIであることの理由だ」(同氏)。ただし「扱えるデータ量が少ないことがExcelの欠点」と指摘する。

 こうした意味で、QlikViewはBI業界に久々に現れた「骨っぽい」製品といえる。QlikViewの標準価格は170万円。「ライセンスだけをみると高い」(同氏)。だが「総費用は4分の1から6分の1程度に削減できる」とする。例えば、中間データのキューブを作成する従来の方法の場合、「どのデータを使って何を見たいか」といったシステム定義を、情報システム担当者が営業担当者などのエンドユーザーに聞いて確定しなくてはならない。キューブのメンテナンスも実施しなくてはならない。一方で、全データを参照しに行くモデルの場合、キューブなどの作成自体がなく、管理の手間を含めたコストを抑えられる。 米調査会社のGartnerは、2009年のマジッククワドラントにおいて、QlikViewを「Visionaries」として評価。製品としてのビジョンを評価している。マジッククワドラントは、ベンダーをLeaders、Challengers、Visionaries、Niche Playersの4つに分類するもの。QlikViewは新たな特色をもったBIとして、従来型製品が持つシェアを奪う可能性もありそうだ。

 ここまでみた3社の取り組みは、いずれも3月に発表されたものだ。一方で国産ベンダーからはあまりニュースが出てきていない。記事でみると、サイボウズがクラウドの新サービスを夏に開始することを明らかにしたことが、この間の数少ない動きといえる。もともと、ソフトウェア業界ではSAPやOracleが圧倒的な勢力であるため、特に大企業向けで国産ベンダーの元気がない。「コスト削減」という世界共通のテーマに加え、クラウドによってソフトウェア利用の形に変化が出てきており、2009年度を迎えた国産ソフトウェアベンダーの動きが知りたくなるところだ。

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