良いものを公開し共用する、という全体最適への早道:闘うマネジャー(2/2 ページ)
システムの全体最適というと、まずは関係各所の意見をまとめて…というスキームが基本のように思われるが、本当にそんな方法で全体最適は実現できるのだろうか。
長崎モデルのメリットを他県でも実証する
だが、このままでは部分最適を実現したに過ぎず、独りよがりである。組織文化の違う他県でも導入され、同様の効果を得なければ、霞が関の考えにいつか飲み込まれ、大手ベンダー中心の従来型モデルが復権してしまうに違いない。
そこで、自治体に対し長崎県が作ったシステムを無償で公開することにした。「無償というが、オープンソースを多用しているし、公費で作ったのだから当たり前!!」とお叱りを受けるかもしれない。しかし、筆者としては、共有化を目的に皆が集まり要望をまとめ、1つのものを作るより、最適化された良いものを公開し、相互に利用する方が構築費用が低くなるだけでなく、全体最適の早道であることを証明したかったのだ。
幸い、2007年度から徳島県が、そして2009年度から和歌山県が導入することになった。何れの県の狙いも、構築費用の低減と地場中小ITベンダーの活用である。長崎の地場ベンダーは、相手先県のコード体系や制度に合わせた改修など初期構築を担当し、安定稼働が確認された後は相手先県の地場ベンダーが運用及び保守を担うことにしている。ギブ・アンド・テイクのような感じだ。通常であれば、県庁に地場中小ITベンダーが元請けで入ることは極めてまれだが、このような形を取れば利益こそあまりないかもしれないにしろ、元請けとして県庁に参入できる。
地場中小ITベンダーは実力がないのではなく、下請けでいるが故に実力をみてもらう場がないのである。そこで、長崎県は、相手先地場に実力を実証する場を提供することにしたのだ。
結果を報告すると、徳島県がカスタマイズなど導入に掛けた経費は、長崎県が投資してきた費用のおよそ3分の1である。通常、長崎県は他県の2分の1で開発をしているので、徳島県は他県のおよそ6分の1で電子県庁化を進めていることになる。ただし、徳島県では電子決裁と手当システムの導入が今年度からである。この2つのシステムが終わっても同程度の割合であったとき、初めて筆者の考えが正しいと証明されるだろう。
6分の1などと書くと、大手ベンダーがまるで「ぼったくり」をしているように聞こえるかもしれないが決してそんなことはない。大手ベンダーは必死の思いで、赤字覚悟で自治体に対しシステムを提供してくれているし、様々な難問や我がままにも対処してくれている。徳島県も和歌山県も「無償=保証がない」ということを承知した上で、長崎県での安定稼働を実績として大手ベンダーという保険を止め、必要なリスクは採ることを自ら決めたからこそ費用の低減をできているに過ぎない。そこは理解して欲しい。
誤解がないように断っておくが、心配されるリスクにどう備えるかはちゃんと考えているし、専門的な事柄に関しては各地域の地場企業がきちんとサポートしている。リスクを放置しているわけではない。
ところで、「できることから始めたダウンサイジング」や「複雑・怪異と思えた汎用機を丸裸に」で書いたように長崎県では2005年度からダウンサイジングを始め前半戦の4年が経過した。それと徳島県などの事例もできた。そこで、今までの経験を踏まえダウンサイジングセミナーを実施することにした。ここから申し込めるので、興味のある方は是非長崎まで来て欲しい。
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