「褒める」効用――ほめられサロン、JR脱線事故対応に学ぶ:ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)
ミスを指摘してメンバーの心身を疲弊させるのではなく、いいところを見つけて積極的に褒めることが、チームを1つにまとめるための近道になる。
褒めればいいというものでもない
一方で、むやみやたらに褒めればいいというものでもない。2005年4月25日に107人の死者を出したJR福知山線脱線事故が起きた。JR西日本ではその後、人為ミスに関する体質改善に取り組んだ。その結果「事故後、社内には褒めることが最良の策という風潮が生まれたが、人間関係ができていなければだめだと分かった」という結論に達したという。
これは当然の話である。わたしたちは表面的に褒められると違和感を覚え、「口先だけで言っているな」と認識する。自分自身が美しいと思っていない女性に「きれいですね」というようなものだ。思わず背中がかゆくなるような言葉を掛けるのは褒める側としても無理があるし、褒められたほうも嘘と感じる。思ってもいないことをむやみに褒める必要はない。
JR西日本の調査のように「人間関係ができていなければ褒めてもだめ」とのことは自明だが、褒めることは人間関係を作る上でとても大切なことだ。では、どうやって人を褒めたらいいのだろうか。
「頑張っているね」の一言を
褒めることを「相手を賛美しなければいけない」と思っている方もいるかもしれない。だが難しく考える必要はない。いつも遅くまで残って仕事をしている仲間がいたら、「いつも遅くまで仕事をしているね」と、あなたが見た事実をそのまま伝えればいい。声を掛けられた側は、これで十分「認められている」「褒められている」と感じるものだ。さらに「いつも遅くまで頑張っているね」とねぎらいの一言があれば力強い。このようなわずかな会話が、チームをまとめていく上での原動力になる。
チームを1つにまとめるのはリーダーだけの仕事ではない。チームの各メンバーがねぎらいの言葉を掛け合うことも大切だ。仲間を褒めるのは、最初は多少恥ずかしさがあるだろう。だが、褒めることに慣れてくると、意外とそれが気持ちよく感じてくる。あなたの気遣いがチームを1つにまとめ、働きやすい環境を作っていくのである。
ぜひ、あなたが今できることを見つけて、実践してみてほしい。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。
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