真のコストダウンを目指す――日本オラクルがFusion Middleware 11gを発表:5つの特徴
日本オラクルはミドルウェア製品群「Fusion Middleware 11g」の提供を日本市場でも開始する。
日本オラクルは7月17日、「Oracle Fusion Middleware Summit 2009 Tokyo」と題したイベントにおいて、米国で7月1日に発表したミドルウェア製品群「Fusion Middleware 11g」の提供を日本市場でも9月8日に開始することを明らかにした。同社は買収戦略の中で、BEA Systemsなど技術力の高い企業を傘下に収めており、新製品は買収企業のアプリケーションを組み合わせた新ミドルウェアという位置づけになる。ビジネスアプリケーションの稼働監視やセキュリティを向上するための機能を盛り込んでいる。
基調講演に立った日本オラクルの遠藤隆雄CEOは、変革が求められる時代に必要なビジネス基盤として新製品を位置づける。複雑なシステムを運用しながらも統合管理することの重要性を説明した。
来日した米Oracleのミドルウェア担当チーフアーキテクト兼上級副社長、テッド・ファレル氏は「Oracle Fusion Middleware 11g」の機能を細かく紹介。特徴は、開発者向けツール、SOA、企業ポータル機能、アプリケーショングリッド、ID管理の5つだとしている。これらを組み合わせることで、初期費用だけでなく、運用管理までを含めたトータルなコスト削減が可能になるという。この5つを順に見てみたい。
開発者向けツール
開発者向けツールは、JDeveloperやエンタープライズ仕様のEclipseといったIDEにMVC(Model View Controller)開発をサポートするフレームワーク「ADF」などによって、デスクトップだけでなく、デバイスを選ばないリッチインターネットアプリケーションの開発効率を向上させる。JDeveloperは、アプリケーション開発やマッシュアップもGUIベースで行い、コーディングなしの環境を提供する。アプリケーションやインタフェースのカスタマイズをしやすくするため、共通のメタデータ(XMLベース)によるアプリケーションの構築を可能としている。Fusion Middleware 11gでは130以上のUIコンポーネントが用意されているそうだ。
チーム開発には欠かせないレポジトリ管理やコミュニケーション機能、バージョン管理機能も強化した。
SOAの実践
続いてファレル氏は「Oracle SOA Suite」の各種機能を紹介した。Oracle SOA Suiteは、サービス指向アーキテクチャとイベント指向のアーキテクチャを統合的に管理できる。ビジネスワークフローやガバナンスを考慮したシステムの開発から運用までのライフサイクル全体を効率化する。アプリケーションを構築する工程だけでなく、運用、管理までを統合管理する。ビジネスプロセスについてはBPELなどの標準仕様がベースとなっているので、新しいシステム導入やコンポーネント統合のためのトレーニングなどが不要になるという。
書類をキャプチャーすることで、ドキュメントワークフローも組み込める。ここで、イベント指向を取り入れたとしても、書類の承認が必要な部分が切り離されていると統合的な運用が阻害されることがあるという。そのイベント管理だが、アプリケーション、データベース、メッセージなどさまざまなイベントソースをリアルタイムで監視できる。
Oracle SOA Suiteのアプリケーションサーバ機能にはOracle WebLogic SuiteなどのBEAのプロパティが活用されている部分でもある。
企業ポータル機能
企業ポータル機能を担うのは「Oracle WebCenter Suite」だ。このコンポーネントは、企業サイトに、ブログ、タギング、Wikiなどのソーシャルアプリケーションの機能を簡単に設定できる。「Oracle Composer」と呼ぶツールは、アプリケーションやサイトを対話、宣言型で構築していくブラウザベースのツールだ。ユーザー主導でソーシャルネットワークサイトを構築、管理するためのツール「Oracle WebCenter Spaces」も用意している。
以上のツールや機能で作成したサイトは、ユーザーが簡単にルックアンドフィールを変更できる。デモでは、マルチデバイスアクセスのサイトも構築も可能であることの例として、iPhoneのエミュレータを動作させた。このようなサイト構築機能、コミュニケーション機能などを組み合わせ、ナレッジの共有をサポートする。
アプリケーショングリッド
4つ目の特徴であるアプリケーショングリッドでは、サービスのパフォーマンス向上を図るための機能が紹介された。マルチコアに最適化されたJavaVM、JRockitは、コアごとの負荷に応じたプロセスの配置や制御を行えるとした。またWebLogicなどのアプリケーションサーバも稼働させたままのパフォーマンスチューニングが可能であるとした。
デモでは、ダッシュボード上でアプリケーションの状態を監視しながら、問題のあるサーバについて画面からドリルダウンする形で設定やリソース配分を確認した。サーバの設定変更だが、デモでは、サーバやストレージなどのリソースアイコンを画面上にドロップし、マウスで接続させるといった操作によって、簡単に実現できていた。これらの一連の操作はサーバやアプリケーションを停止することなく実施できる。
ID管理
最後に紹介されたのがID管理機能だ。ディレクトリサービスはLDAPのほか、仮想ディレクトリも統合的に管理する。シングルサインオン機能も強化され、生体認証を含む複数の認証方式の管理、アクセス権限やポリシー管理なども含まれている。ユーザーに対しては役割ベースのカテゴリーで分類し、ID情報をIDウェアハウスという「倉庫」に集約させる。このIDウェアハウスによって、通常のセキュリティだけでなくガバナンスの管理も可能だとしている。
基調講演のあと、記者向けに質疑応答のセッションが設けられた。
「アプリケーションサーバにはアプライアンス製品も増えているが、Fusion Middleware 11gが焦点を当てている利用形態は何か」という質問に「Fusion Middleware 11gはホスティング環境でもオンデマンド環境でもどちらにも対応しており、とくに利用形態は問わない」とオラクルは回答した。
Fusion Middleware 11gのメリットを一言で述べると何かという質問には、統合環境であることと、共通メタデータを活用することでユーザー向けにカスタマイズしたソフトウェアのアップグレードやメンテナンスが簡単にできることを挙げている。
これらの特徴は、すべてビジネスの迅速性、コストダウンに直結するという。多数のコンポーネントやシステムから構築される複雑な業務システムをFusion Middleware 11gが一元管理することで、無駄なソフトウェアを削減できる。保守のしやすさがダウンタイム時間の低減と経費節減に通じるという認識だ。
なお、基調講演の最後にファレル氏は、11月のOracle OpenWorld(サンフランシスコ)で「新しいインテリジェントスイート」の発表について示唆している。
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