スマートグリッド――IT企業が注目するもう1つのネットワーク:Googleの「使命」と電力事情(2/2 ページ)
インテリジェントな電力供給網「スマートグリッド」が北米を中心にヨーロッパなどで拡大している。
三菱重工の福泉氏が切り込む
3人のパネラーのセッションが終わった後、パネルディスカッションが始まった。モデレーターは、三菱重工 エネルギー・環境事業統括戦略室 次長 福泉靖史氏だ。
福泉氏はグーグルの村上氏に「各家庭のスマートメーターから得られる情報をどうするつもりか?」と切り込んでいった。これに対して村上氏は「何らかの形で利用することは考えてはいるが、現時点ではどのような応用や展開があるのか見えていない」と回答した。
スマートメーターの可能性はいろいろあるが、どのような使われ方をするのか、キラーアプリケーションはどんなものになるのかが見えていない。その状況では、市場の展開は読めないし、それを制御しようとする意図もないということだ。補足として、村上氏は、「もともとグーグルは情報は提供するが、その情報の価値や真善美といったものは判断しない。検索の順位も関連性の強さを一定の数値化で示しているだけでだ」と述べた。
福泉氏は続いて堤氏に「再生可能エネルギーは考えようによっては、小口発電のようなスモールな供給・消費モデルを作り、既存の巨大電力企業にとっては脅威になるかもしれない。その中で、エンドツーエンドのスマートグリッドの戦略は電力企業の既存ビジネスと競合しないのか?」と質問した。
堤氏は「グリーンニューディールやスマートグリッドの目的が何かということにもよる。プレーヤーはいまより増えるが、ネットワークという基盤を持っている企業ならではのビジネスはあると思うし、シスコはそのネットワークでのビジネスで協力ができると思っている」と応じた。ネットワークはインフラとして「あって当然」というとらえ方をされてしまいがちだが、重要な基盤を持っている企業ならではの強みやビジネスを広げられるとの認識を示した。
ベタープレイスの三村氏には「バッテリー着脱式のモデルをタクシーから展開するセグメント分析は素晴らしいと思うが、タクシー業界の場合、車両の価格や耐久性が問題になることはないか?」という疑問を投げかけた。三村氏は「コストの問題はCO2排出規制や燃料代など総合的な判断でクリアできるものと考えている。耐久性・安全性について課題はあるが、ガソリン車の耐久性・安全性を含めた品質向上の歴史に、タクシー業界の貢献があったと聞いている。日本で市場が成熟していないころ、経営の厳しい自動車メーカーに大量の発注を行ったり、厳しい条件で利用されたからこそ、安全性や耐久性が向上したという側面がある。これと同じことを電気自動車でも再現されることを期待している」と述べた。
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