日本企業のアウトソーシング成功術――アクセンチュアに聞く:わが社のコスト削減(3/3 ページ)
強みを持つ分野に資源を集中するために、アウトソーシングの活用を検討する企業が増えている。日本企業がアウトソーシングを成功させるためにはどうしたらいいのか。アクセンチュアに、自社の事例なども交えて3回にわたって話してもらう。
アクセンチュア自身の経験
アクセンチュアは世界の50カ国、200以上の拠点を持っているが、特に本社を設けていない。本社機能は全世界に広がるオフィスに分散させている会社である。われわれはBPOを本格展開するに当たって約6年前の2003年に、世界各国の事務所に分散していた自身の経理・人事・総務・ITなどの業務を集約した。現在はアイルランド、米国、アルゼンチン、インド、フィリピン、中国の7拠点で全世界50カ国200以上の事務所に対するサービスを実施している。アジア太平洋の10カ国については、中国の大連にシェアドサービスセンターを構築し、日本の業務も大連センターに移管した。
この改革は、わたしたちコンサルタントにとって大きなインパクトがあった。長年、身近にいることに慣れていた日本の人事担当者、プロジェクト会計の担当者、情報システム部門の担当者がいなくなったのだ。ある日を境に、大連にいる各業務の担当者からこれらのサービスが提供されることになったのである。これはグローバルにてトップダウンで進められた施策であったが、同時に「セルフ化」のための各種ITツールが導入され、意識改革が求められた。
パスワードの有効期限が切れてしまった場合などのPCのトラブルに遭ったときには、まず「eSupport」というWebの仕組みを使って自己解決することが求められるのだが、それで解決しない場合には、内線でITヘルプデスクに電話をすると大連の担当者が日本語でサポートしてくれる。もちろん日本側にも一部担当者、例えばハード障害によりPC自体の交換を行うための担当者は残っているが、われわれから直接国内の担当者に連絡する手段はない。移管当初は、大連センターの対応や新たなツールの使用法についての違和感があったものの、今では問題なく業務プロセスが回り、標準化によってコストの効率化に成功している。
次回は、大手石油会社であるBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)やエーザイなどの事例を詳しく紹介する。
著者プロフィール:田村貴志
アクセンチュア株式会社 アウトソーシング本部パートナー。大手通信会社、メーカー、金融機関など幅広い業界に対して、財務・経理、購買、コールセンターなどの多岐にわたるビジネスプロセスアウトソーシング プロジェクトを手掛ける。業界や業務が抱える固有の課題やプロセス、オフショア戦略について豊富な実績と知識を有する。
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