100点よりも240点を目指したい:オルタナティブな生き方 林雅之さん(3/3 ページ)
クラウドコンピューティングをはじめとする「ICTの今」を解説するブログ「『ビジネス2.0』の視点」を執筆する林雅之さんに、人生観やブログ観を語ってもらった。
いろいろ検索してオルタナブログにたどりつきました。参加を申し込んだときには、ブロガーの皆さんはすごい人ばかりなので通ると思わなかったです。申し込みフォームからメールを送ったら、オルタナブログ事務局からレスがあって「お会いしましょう」と。ほら、何でも最初は失敗するものですから、ああ、面接があるんだ、ハードルが高いんだろうなぁなんて思ったりしたものです。あれこれお話して、「ビジネス2.0」というキーワードでブログを始めました。
会社員の立場のまま、オルタナティブ・ブログのような実名ブログで社外に向けて情報発信する。最初は前例もありませんでしたし、社内の反応もまちまちでした。外資系企業は、ブログを積極的に活用するために社員がブログを書く場合のガイドラインがありますが、日系企業にはありませんでしたから。でも社外で知名度が上がると社内でのプレゼンスも高まってくるんです。逆輸入感覚とでもいえばいいでしょうか。最近では社外活動も評価される雰囲気が出てきたので、ようやく僕の活動も認知されてきたかなと思います。
ブログは活用次第で大きな影響を与えてくれます。ブログのおかげで本(『「クラウド・ビジネス」入門 -世界を変える情報革命』)も出せたし、情報通信学会にもパネリストとして参加させていただいたこともありました。この時は大手企業の取締役や政府の偉い方などが参加されたのですが、僕はあえて「ブロガー」という肩書で出席しました。取締役や政府の方が僕の発言をうなずきながらメモされていたのが妙にくすぐったかったですね。
本の出版もあって、クラウドといえば林、林といえばクラウドと名前が知られるようになりました。まず、社外のクラウド関係者との人脈がたくさんできました。その後、社内でもクラウド案件を担当するようになり、社内やグループ内のクラウド関係者とも多くのつながりができました。おかげでさらにいろんな情報が集まるようになりました。(会社のセキュリティポリシーを守りながら)テーマを絞って質の高い情報を発信することを心掛けていれば、自然とそれ以上の人や情報が集まることを実感しています。
新しモノ好きなので、クラウドも最初に知ったときに「これは来るな」と思ってずっと追いかけてきました。これからもクラウドとその延長線上にあるもの、霞が関クラウドもそうですが、国産のクラウドを特に追っていきたいと思います。国際競争力や日本の産業を考えた場合、日本なりのクラウドの使いこなし方を考えていかないと日本企業の将来は明るくないと思っています。そして、これからは環境の視点も欠かせません。次のキーワードとして注目しているのは「スマートグリッド」でしょうか。
とにかく毎日書こう、と継続することを第1に考えてブログを始めました。おかげで今日まで約800日間、休まず更新中。ブログを続けることで最後までやりきる力がついたと思います。それまでは継続力がないし、何を始めても最後までやり遂げることが苦手だったんですが、ここ2・3年で継続する力と完遂する力がついたと思います。プレゼンも苦手だったんですが、講演などいろいろと機会に恵まれまして。経験を積むことで変わってきました。最近では思いついたこと、資料などを読んで感じたことなどをまずTwitterでつぶやき、そこからブログへとつなげる感じで使い分けてます。Twitterはブログのネタ帳、宣伝ツール、それから人脈形成ツールといった感じで活用しています。
もともと僕はできる人間ではありません。これという得意分野もありませんでしたし、多くの失敗や挫折を繰り返してきました。でも今になってその経験が生きてきて、どう配分してどのレベルを保てばいいかが分かる。おかげでこうして安定し始めてきたんだと思います。「劣等感が人を創る」という言葉をよく意識しています。失敗と反省の繰り返しが自分自身の成長の原動力になっています。いつのころからか、第1志望がかなうというか、夢を達成するスピードが早くなってきたようにも感じています。継続することで巡って来るチャンスもあるんですね。
相乗効果で人生の満足度を高める
ブログのおかげでいろいろと夢がかないましたけれど、最近は目立ち過ぎるのも良くないかなと思って、欲張るよりも謙虚になろうと心掛けています。バリバリに目立ちたかったら独立して会社を興していると思うんです。でも僕は会社員のままでバランス感覚を持ちながら、個人のレベルアップをはかっていきたい。それに会社を辞めたいなんて言ったら妻から止められますしね。妻は割と冷静で、僕が調子に乗っていると、ときどき水を差してくれるんです(笑)。で、自分でも「あ、少し背伸びし過ぎていたな」と気付かされる。なので、今のポジショニングで少し余裕のある状態を保って行きたいなと思っています。節約を心掛けているのもそんなところからです。
今、仕事も充実していますが、よくばりなのか仕事のほかにも人生の守備範囲を広げたいと思ってます。今年に入ってから娘の学校でPTAの副会長を引き受けました。仕事でも教育関係のプロジェクトを担当していたことがあるので、親としての視点を仕事に、提供者側の視点は学校でと、いろいろな面で役に立っています。子どもたちの教育を何とかしていかないと、国の将来もありませんし、親としても企業人としても教育にはかかわっていきたいです。そして、地域とのつながりですね。PTAを通じて、地域活動に参加する機会も増えたので老後も楽しく過ごせそうです(笑)。
会社、ブロガー、PTA・地域と、それぞれ70〜80点が取れればいい。それぞれの相乗効果で合計点が240点になれば、相対的に人生がんばっているのじゃないかと思います。仕事だけで100点を目指すよりは、いろんなことをがんばって人生全体の点数を増やしていきたいですね。
この秋は、娘の学校でやるバザーの実行委員長を引き受けました。お祭りのようにたくさんの出店やコンサート、そして手作り体験コーナー等も出すんです。準備は大変ですけれど、それもまた楽しいですよ(笑)。
林 雅之氏 プロフィール
ICT企業勤務
顧客へのICTコンサルティング、情報通信政策の調査・分析、SaaSビジネス推進、プロジェクト総括、ナレッジマネジメント推進などにたずさわる。
オルタナティブ・ブロガーインタビュー『オルタナティブな生き方』バックナンバー、林 雅之さん執筆記事一覧
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