これぞ高専――実践力を生かしたユニークな創造作品が全国から集結:高専プロコンリポート(4/4 ページ)
全国高等専門学校の学生たちが独自の発想やシステム開発力を競う「高専プロコン」が開催。課題/自由部門ではタッチパネルやARなど話題の技術を取り入れたユニークな作品が登場した。
ここからは、課題部門の作品を紹介していく。今年の課題部門のテーマは「ゆとりを生み出すコンピュータ」。昨年に引き続きやや漠然としたこのテーマに、学生たちはどんな創造力を働かせ、独自の作品を開発してきたのだろう。
課題部門 特別賞「BUSKUL―送迎バスの到着お知らせシステム―」
熊本高専は、幼稚園の送迎バスの到着をタイミング良く知らせることで、バスを利用する保護者と子どもに、時間的/心的ゆとりを生み出すシステム「BUSKUL」を開発した。クライアント/サーバ形式の構成とし、サーバ側では園児データや送迎バスの位置情報を、クライアント側では送迎バスに搭載したGPSでバスの現在地、乗車中の園児の降車場所などを管理する。これらの情報はWebサーバ経由で保護者と幼稚園にそれぞれ通知される。
保護者にはあらかじめ登録しておいたメールアドレスに、バスの現在位置と子どもが降車位置に近づいてきた旨が送信される。知らせるタイミングは保護者が選択でき、バスが着くおよそ5分前など、自分の都合に合わせることが可能だ。
課題部門 特別賞「特命捜査官ハンカChief―ハンカチ型入力インタフェース―」(米子高専)
米子高専が開発したのは、ハンカチをキーボードやマウスなどの代替として使用可能にするハンカチ型入力インタフェース「特命捜査官ハンカChief」。システムは半透明板、USBカメラ、赤外線LEDからなる高さ500ミリの操作台と、ハンカチ、PCで構成されている。操作台上に置かれたハンカチに指が接触すると、操作台の下に設置されている赤外線LEDからの照射が遮られ、それをWebカメラが認識。Webカメラはハンカチの上に置かれた指を認識すると、その情報をPCに送信する。
このほかにも、面白そうな作品が多々あった。例えば、
AR(拡張現実)ツール「ARToolkit」を用いて作成した豊田高専の「Tsumiki」。実際に積んだ積み木の配置をPC上の仮想空間に取り込み、別途用意したディスプレイに仮想的なオブジェクトを表示するというもの。積み木の並べ方でさまざまなオブジェクトを作成できることから、発想力を身につけたり、自分に自身を持たせることでゆとりを生むとしている。
子どもを対象とした作品として記者が注目した作品がもう1つ、舞鶴高専の開発した「もしも絵日記が動いたら」。あらかじめ用意されている背景、登場人物、アニメーションから自身の行動に沿うものを選択し、ドラッグ&ドロップ操作で日記を作成していく。親子で対話しながら、描く楽しみと記録を残す楽しみを味わってもらいたいという。
「高専ロボコンは聞いたことがあるが、プロコンは知らなかった」――実はこうした声は、現役高専生の中からも聞かれる。おそらく記者のようにプロコン=プログラミング技術を競うコンテストと思っている人も多いことだろう。しかしふたを開けてみれば高専プロコンとは、高専で学ぶモノづくり技術の要素がすべて詰まった総合力が試される場ではないだろうか。そんなふうに感じた。来年度はどんなアイデア作品と出会えるか、楽しみである。
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