続・クラウド時代のセキュリティベンダーの行方:Weekly Memo(2/2 ページ)
富士通とSymantecが先週発表したグローバル事業展開での提携強化は、クラウド時代のセキュリティベンダーの行方を探るうえで興味深い動きといえそうだ。
シマンテック社長が語る今後の事業スタンス
富士通とSymantecによる提携強化の最大のポイントは、「グローバル」で協業を行うことだ。その意味では、NECとトレンドマイクロが昨年12月22日に発表したマルウェア感染被害の拡散防止ソリューションの共同開発も同様の動きとみられる。
両社の共同開発は、NECのネットワークアクセス制御技術とトレンドマイクロの未知の不正プログラム検知技術を統合するものだが、共同発表文によると「これまで両社は日本市場において製品の連携を図ってきたが、今回の共同開発によって関係をさらに進化させ、グローバルな事業拡大を目指す」としている。
こうした動きがにわかに出てきた中で、あらためてクラウドに象徴される垂直統合型のビジネスモデルに対するセキュリティベンダーの今後のスタンスを、シマンテックの加賀山社長に聞いてみた。
「当社にとっては、GSPとのそれぞれの協業を垂直統合型のビジネスと位置付けている。例えばデータセンターを運営するパートナーが、そのインフラを自らの考え方に基づいて最適化するとなれば、当社はその要望に応えるのが務めだ」
一方で、クラウド化が進めば、さまざまなソフトウェアを提供する同社にとって水平展開のビジネスもますます重要になると説く。
「データセンターには複数のアプリケーションの“タワー”が立ち並んでいるが、最適化されているのは個々のタワーの中だけで、データセンター全体としては最適化されていないケースが多い。例えばストレージの使用率などは、データセンター全体として管理すれば、もっと向上できるはずだ。そうした効果的なストレージ管理ソリューションを提供するのも当社の役目だ」
Symantecはセキュリティソフトの最大手であるとともに、ストレージ管理やデータ保護の分野でも最有力のベンダーだ。加賀山社長のコメントには、そうしたインフラ寄りからアプリケーション寄りまでさまざまな製品を持つセキュリティベンダーとしての独自のスタンスを模索する思いが滲み出ているように感じた。
ちなみに前のコラムで、米国ではHPがSymantecを買収するのではとのうわさも……と書いたが、富士通と提携強化したところをみると、当面そうした動きはなさそうだ。
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プロフィール
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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