東工大、GPGPUで次世代気象モデルの高速化に成功
東京工業大学、青木尊之教授の研究室は、気象庁が開発を進めている次世代気象モデルをCUDAでコーディング、GPGPUによる高速な計算を可能にした。GPGPUの適用領域の拡大を示すとともに、天気予報の予測精度の向上につながるものとして期待される。
東京工業大学、青木尊之教授の研究室は3月24日、気象庁が開発を進めている次世代気象モデル(ASUCA)をGPU(Graphics Processing Unit)を用いて計算することで、CPU1コアに対して約80倍の計算速度を実現できたことを明らかにした。GPGPU(General Purpose GPU)の適用領域の拡大を示すとともに、天気予報の予測精度の向上につながるものとして期待される。
ASUCAは気象庁が開発を進めている高分解能の領域気象モデル(メソモデル)で、米国大気研究センター(NCAR)などを中心に研究が進められている「Weather Research and Forecasting(WRF)model」とほぼ同じもの。WRFはこの分野でよく知られた非静力モデル「MM5」の次世代モデルと位置づけられており、並列計算用のソフトウェア構造などの採用により、GPU計算によって高速な計算が行えると考えられている。
しかし、GPU計算の場合、時間ループの内側の計算のすべてをGPU側で行わないと、CPUとの通信が発生し、GPUの性能を十分に引き出せなくなる。WRFでも計算の一部をGPUで行う動きがみられるが、全体の性能を約30%向上させるに留まっている。
今回、青木教授の研究室では、ASUCAのすべてをCUDAでコーディングするとともに、同研究室で開発されたさまざまな高速化のアルゴリズムや最適化手法を導入。同大学が運用するスパコン「TSUBAME」の単一GPUを用いた計算で44.3GFlops、120個のGPUを用いた計算で3.22TFlopsの実行性能を達成した。後者の実効性能は、2キロの格子間隔で3164×3028×48の計算格子(日本列島全土を含む広範囲をカバーするレベル)を用いた場合、実際の6時間の気象現象の計算を70分で終了できる速度であるという。
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