ItaniumとXeon 7500の悩ましい関係:伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)
Intel Xeonプロセッサ7500番台(Nehalem EX)を搭載したサーバを大手コンピュータベンダーが発表した。Nehalem EXの高い処理性能を考慮すると、Intelのもう1つの高性能CPUプロダクトであるItaniumの将来に影響が及ぶ可能性は高い。だが一方で、各ベンダーはItaniumからXeonにすっきりと乗り換えることができない事情を抱えている。
科学技術分野にNehalem EXの活路をみいだすNEC
こうした中、悩めるベンダーの1つであるNECは、科学技術分野に活路を見いだそうとしているようだ。同社は4月9日、東北大に「Express 5800/スケーラブル HAサーバ」を納入し、運用を開始している。
このシステムは、8コアのNehalem EX、4プロセッサを1ノードとする6ノードで構成され、最大演算性能は1735.68GFLOPSに達する。単純な比較は慎むべきだが、性能では同社のベクトル型スーパーコンピュータ「SX-9」に匹敵する。これは2009年11月15日、オレゴン州ポートランドで開催されたスーパーコンピュータのカンファレンス「SC09」で、IntelがNECと提携した結果だと考えられる。
NECは、Nehalem EXを科学技術分野に採用したことに続き、2011年に登場が予定されている「Intel AVX」次世代マイクロアーキテクチャ(開発コード名:Sandy Bridge)につなげていくだろう。ベクトル型で圧倒的な経験を持つNECが、世界におけるイニシアティブを科学技術分野で握ろうとしているのは明らかだ。同社はスカラー型スーパーコンピュータの生産を休止しているが、やがて、Sandy Bridgeで新たなモデルを打ち出し、再び同市場に参入してくるに違いない。
NECの今後の動向は、Intelが今まで進めてきたItanium、Xeonの高性能化の流れを変えるかもしれない。一般ユーザーが求めている製品はコストと性能のトレードオフであり、絶対的な高性能を要求する顧客は一握りである。そのようなユーザーを握っているのは限られたベンダーであるという事実を、Intelは認めざるを得ないということだろう。
もう1つの潮流
話は別の方向に流れるが、携帯電話のCPUで大きなシェアを獲得しているARM(Advanced RISC Machine)のCPUをサーバに利用できないかという研究も進んでいる。「3億4千万円のストレージ」でも取り上げたが、クラウドの進化の過程において、米EMCや米IBMのストレージ製品に代表される高性能、多機能、高セキュリティを売りにした製品が出てきた。その一方で、米Isilonのように合理的な価格を売りにする製品にも人気が集まっている。
クラウドが本格化しつつある現在、僕はアプリケーションやサービスごとに異なったシステム構成を取ることが必ず求められるようになると考えている。高度なセキュリティと瞬時のレスポンスを必要とする金融業、絶対にサービスを停止させないという安定性を求める公共関連の企業、社会インフラなどの分野では、確かに高額なシステムが求められる。これは、Nehalem EXをはじめとする高性能CPUを搭載した製品が担保すべき分野だ。
一方、システムの安定性を差し引いても、低廉な構築運用コストを求めるニーズも高まっていく。むしろ、クラウドコンピューティングを軸に新たなパラダイムシフトが起こるアプリケーションやサービスは、その新規性から、低廉なコストによる構築・運用が欠かせなくなってくる。
その意味から、ARMやAtom、ゲーム機に用いられているPOWER系のCPUが各種サーバに採用される可能性はいっそう高まる。しかもその適用分野は無限だ。だがこの分野においても、国内よりも海外のベンダーが先行していることが、歯痒くて仕方がない。
関連キーワード
Itanium | Xeon | Nehalem | POWER | 伴大作の木漏れ日 | 開発コード名 | 64ビット | ARM | Sandy Bridge | AIX | Express5800 | HP Integrity | HP Superdome | HP-UX | Pentium | SPARC
関連ホワイトペーパー
Itanium | Xeon | Intel(インテル) | NEC(日本電気) | Dell(デル) | IBM(アイ・ビー・エム) | 64ビット | ARM | 日立製作所 | Oracle(オラクル)
関連記事
- 伴大作の木漏れ日:Itaniumの将来は風前の灯か?
9月17日の6コアXeonの発表と、それに連動した各サーバベンダーの動向から、Itaniumの将来を調査してみた。 - 伴大作の木漏れ日:3億4000万円のストレージ
4月に日本IBMが発表した3億4000万円のストレージ。その高価格に驚かされた一方で、同製品がストレージにおける「新しい時代の幕開け」の象徴であることが感じ取れた。 - 伴大作の木漏れ日:クラウドコンピューティングの本質
クラウドは、過去に何度か登場したシステムとは完全に別次元のものだ。情報システム部門が生き残る唯一の方法は、クラウドに積極的に取り組むことである。 - 伴大作の木漏れ日:求められるプロダクトアウトからの発想転換
日立製作所が地方自治体向けのクラウドサービスを発表した。同社のビジネス展開から行政システムとクラウドの関係を明らかにする。ベンダーは、プロダクトアウトでシステムを拡販するという発想を転換する必要がある。 - 伴大作の木漏れ日:コンピュータ御三家、新社長の手腕
NEC、日立、富士通の「コンピュータ御三家」が、ここに来て相次いで社長人事を発表した。各社の思惑は何か。「グローバル化」「若返り」がキーワードになっている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.