モンスター・メインフレーム:伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)
日本IBMがメインフレームの新版「IBM zEnterprise 196」を発表した。本コラムではメインフレームを取り巻く環境の変化や各ベンダーの戦略をひも解きたい。
IBMのクラウド戦略とライバル企業
z196は、IBMが考えるクラウドデータセンターの具体像を示していると考えていい。一方、ライバル企業のHPは、Super Dome 2と「HP NonStop Server S-Series」という自社製品を活用したデータセンターの構成を企業に勧めている。米Dellは、Googleとの緊密な関係を強調する戦略を採っている。
富士通のアプローチは面白い。同社はIAサーバ「PRIMEQUEST」を製品ラインアップに持つ一方で、大規模のクラウドサービスを導入するEC(電子商取引)事業者などを対象とした高密度サーバ「PRIMERGY CX1000」を準備している。CX1000はオーソドックスなラックを高集積化したマシンで、事業者側のさまざまなニーズに対応しやすいシステム構成となっている。派手さはないが、システム構成の柔軟性で優れている。
富士通 プラットフォームビジネス推進 ビジネス企画統括部長の藤巻秀明氏および同ビジネス企画統括部長兼サーバビジネス部長の西嶋和男氏は、「現在進めている商談について、1つの案件の規模が大きい。1件受注が決まれば、その後は大ブレークするだろう」と見通しを話す。
各社の動向から、クラウドに関連するハードウェアビジネスは、大きく2つの方向に分かれてきた。1つはIBMやHPのように自社システムですべてを固めてもらうという方向性であり、Oracleもそれに近い。それに対し、Dellや富士通はデータセンター側に主導権を持ってもらい、価格や使い勝手の優位性、納入実績でユーザー企業に攻勢をかけるものだ。
メインフレームユーザーは、以上のいずれかの戦略を取り入れたシステムを構築していく必要がある。だが、単独でデータセンターを構築・運営するのは、一部の巨大企業を除いて、今や不可能になりつつあることは間違いない。
企業が直面する課題にモンスターマシンは応えるか
IBMの言う「クラウドコンピュータ」の誕生の背景にあるのは、PC、Netbook、スマートフォンなどの爆発的な増加とそれを支えるネットワークの広帯域化である。また新サービスでライバル企業に対して競争優位に立つために、ICTの投資を増やす企業が増えていることも一因だ(今や公式Webサイトのない大企業など存在しない。Webは一般化し、それなりの投資をするのが当然だ)。
またインターネット経由での商品の購入や決済のボリュームも膨れあがっている。グローバル化に伴い、企業がSOX法やユニファイドコミュニケーションといったテーマについての対応を迫られるようになっている。これらの課題に対応できていない企業は、いまだ多く存在する。
クライアント端末と対応するアプリケーションの驚異的な増加と時代の変化――。これらがさまざまなシステムの「モンスター化」を促していることは疑いようがない。この時代の要請に対応していくことは企業の必須事項になるだろう。
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