コンシューマーITが企業の顧客サービスにもたらした変化とは:G-Force Melbourne 2011 Report(2/2 ページ)
コンタクトセンター業界向けの一大イベントである「G-Force 2011」のアジア太平洋版が開幕した。その中で繰り返し強調されたのが、企業のソーシャルメディアへの対応である。
ギターを壊された男
ソーシャルメディアを活用することで、企業のビジネスにメリットをもたらすことは既に述べた通りだ。ただし当然のように、企業にとってプラスの価値だけを提供し続けるわけではない。ときには大きな牙を剥いて企業に深刻な影響を与える存在にもなり得るのだ。
その代表的な例として、米国を中心に話題となったのが、2009年にYouTubeにアップロードされた「United Breaks Guitars」というタイトルの曲である。これは映像の作者であるミュージシャンのデーブ・キャロルさんが実際に体験した出来事をコミカルに表現したものだ。
ある日、興行のために米国・ネブラスカ州に向かっていたキャロルさんは、経由地であるシカゴの空港で信じられない光景を目にする。預けていた商売道具のギターを荷物運搬員が放り投げていたのである。もちろん、ギターは破損。それに対して、結局、航空会社から何の謝罪も弁償もなかった。その航空会社が米United Airlinesというわけである。このエピソードを基に作った映像はYouTubeにアップロードするや否や、4日間で100万ヒットを達成した。「人が人を呼び、瞬く間にコンテンツは拡散した。もはやコントロールできる状態ではなかった」とキャロルさんは振り返る。
この一連の出来事は、キャロルさんの人生をも変えた。これまで約20年間はほぼ無名のミュージシャンだったのが一躍時の人に。テレビやラジオなどさまざまなメディアの取材に引っ張りだこで、自作のCDアルバムも今までとは比較にならないほど売れたという。
「一個人の力は小さく大企業を動かすことは難しいが、声を大にすれば、ソーシャルメディアを通じて多くの人が賛同したり支援したりしてくれる。最終的に企業に大きなインパクトを与えることができるのだ」(キャロル氏)
企業ブランドを損ねることも
このように“顧客体験”に基づいて発信されたソーシャルメディアへの対応は、航空業界に限らずさまざまな業界や企業にとって重要な課題となる。顧客の反応一つで企業ブランドそのものにまで影響が及んでしまうからである。そこで、顧客と企業の接点であり、カスタマーサポートの中心であるコンタクトセンターにソーシャルメディアを連携させることが注目されている。
Alcatel-Lucentでは、ソーシャルメディアや従来のチャネル上で、顧客とのやりとりを動的にモニタリング、分析するソリューション「Genesys Social Engagement」を提供しており、今後さらに「ソーシャルメディアに対する投資を増やしていく」(バーンズ氏)姿勢を見せている。加えて、昨年に販売開始したコンタクトセンター向けパッケージ製品「Genesys8(G8)」においても、顧客や社員とのConversations(対話)の重要性が強調されており、どのチャネルでも一貫したサービス提供ができるような機能強化がなされている。会期中にはコンタクトセンターとモバイル端末が連携するためのSDK(ソフトウェア開発キット)もアナウンスされる予定だ。
同社が目指す方向性など、より具体的な部分については追ってレポートする。
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