2011年の企業のIT投資は微増傾向、リスク対策やモバイルは急伸――ITR調査
ITRの調査によれば、2011年度の企業のIT投資動向は前年比で微増となり、「災害対策費用」「モバイル端末/スマートフォン」などへの投資が増えている。
アイ・ティ・アール(ITR)は11月29日、「国内IT投資動向調査」の結果を発表した。2011年度の企業のIT投資動向は、2010年度よりもプラスになり、企業の情報セキュリティ対策費や災害対策費が大きく上昇した。
予算額を前年度と比べて増額したとする企業の割合は、2011年度では24.8%と、2010年度(24.9%)とほぼ同水準だった。一方、前年度よりも減額したとする企業は2010年度調査と比べて減り(26.6%から20.5%)、全体としてはややプラス成長となった。
2012年度の予想としては、IT予算の増額を見込む企業の割合は23.4%となり、2011年度と比べて減少するという。一方、減額を見込む企業も17.5%まで減少し、全体で見れば2011年度と同じか、ややプラス成長になると見込んでいる。
ITRの舘野真人シニア・アナリストは「リーマン・ショック以降、企業のIT投資のメリハリがなくなっている。前年度と比較してIT予算が『横ばい』と回答した企業はその翌年も『横ばい』を選択することが多く、“前年踏襲主義”に陥っている。一方で、前年度に『増加』と回答した企業はその翌年も『増加』と回答する割合が高く、IT投資動向の2極化が起きている」と指摘している。
企業の売り上げに対するIT予算の比率では、2011年度は前年度を0.2ポイント上回る3.0%だった。これについてITRは、3%台に達するのは5年ぶりだとする一方、分母となる売り上げが伸び悩んだことが影響したとも考えられるとしている。
「リスク対策費用」の分野では、他分野と比べて大きな変化がみられた。2011年の企業のIT予算に占める「情報セキュリティ対策費用」の比率は12.5%と、2010年度(10.6%)と比べて上昇。また、「災害対策費用」が占める比率は7.0%と、2010年度(4.4%)と比べて上昇したほか、同調査を開始した2006年度以来、最高値を記録した。
これについてITRは「東日本大震災の発生を受け、多くの企業が災害対策を強化した。また、国内企業において個人情報や機密情報の大規模な流出事故が相次いだことで、改めて情報セキュリティへの高い関心が集まった」と分析している。
製品/サービスに対する投資意欲を見ると、ハードウェア/ネットワーク分野では「サーバ仮想化」(今期は26.4%、来期は29.7%)や「モバイル端末/スマートフォン」(今期は26.6%、来期は37.6%)などの投資意欲が高いことが分かった。OS/ミドルウェア分野は全体的には伸び悩むものの、「モバイルデバイス管理ツール」(今期は10.9%、来期は15.7%)への投資は増えると予測している。
舘野氏は「モバイル端末などに関して投資意欲のある企業はあるものの、その数は決して多くはなく、劇的な投資の増加は見込めない。IT投資全体を見ても2012年度はプラス成長が見込まれるが、予算を伸ばす企業はわずかにとどまる見通しで、IT投資に関して本格的な低成長時代が到来したと考えられる」と話している。
関連記事
- モバイル端末管理製品の市場が急拡大――ITR調べ
2010年度は前年度比10倍に、2011年度も同3倍の急拡大を予測している。 - 震災により3割の企業がIT予算見直し ITRとJIPDECの調査
国内企業500社を対象にした「企業IT利活用動向調査」をITRと日本情報経済社会推進協会が実施。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.