新幹線開通に沸く金沢 地方のIT企業が飛躍するには:地方とIT(2/2 ページ)
データセンターやニアショア開発へのニーズが高まる石川県。現地のIT産業の現状、そして地方企業がビジネス成長するための戦い方などを、石川県情報システム工業会の小清水副会長に聞いた。
地方IT企業の戦い方
そうした中で、独立系のシステムサポートは「異端児」(小清水氏)の存在になっているのだという。同社は、1980年にここ金沢で創業したが、地元のしがらみを嫌い、早くも4年後には名古屋、そして1987年には東京に進出した。自ら外に飛び出し、新たなマーケットを開拓した結果、現在の社員数は500人を超え、毎年2ケタ成長を遂げるまでになった。その結果、今では金沢の顧客からも興味を持ってもらえるようになりつつあるのだという。
この成長のバネになったのは、創業して間もないころの経験だ。
「メーカー系の下請けの仕事をしていたころ、あるとき顧客に直接システムサポートから見積もりを出してほしいという要望があった。それに応じたらあるメーカー系から圧力がかかった。その惨めさが嫌で、ここにいてはメーカー系の垣根を越せないと思い、東京や大阪に出ていった」(小清水氏)
地方から飛び出したからこそ、今ではメーカー系と同等の戦いができるようになった。もし創業からずっと金沢にいたら、今ほどの規模の会社にはなっていなかったはずだと小清水氏はいう。
ただし、成功するためには単に外に飛び出せばいいというわけではない。小清水氏はこれまで培った経験から、地方企業ならではの戦い方をこう分析する。
「地方で商売するときは何でもできないと駄目。逆に、地方の会社が東京に出て行ったとき、何でもできるという事業の幅広さは強みにならない。東京ではより尖った強みがないと戦えない。フィールドが変わると戦い方を変えなければならないのだ」(小清水氏)
パティシエ・辻口氏に習う
そして今、さらなる市場を求めて、同社は海外進出を果たした。2013年7月、米国・カリフォルニア州サンタクララに現地子会社を設立し、日系企業のITシステム導入などを支援している。「IT業界はシリコンバレーから世界に対してイノベーションが発信されている。そこに拠点を構えることで、最先端の情報をいち早くキャッチし、日本の顧客に提供していきたい」と小清水氏は意気込む。
地方から世界に飛び出して、日本を代表する存在になる――。このモデルケースとして小清水氏が挙げるのが、同じ石川県で七尾市出身のパティシエ、辻口博啓氏だ。辻口氏は若くしてフランスに渡り、本場のコンクールで優勝するという実績を作ったからこそ日本を代表するパティシエになった。もし七尾でずっとお菓子作りをしていたら結果は変わっていたかもしれない。小清水氏は「システムサポートもITの本場に行き、荒波にもまれなければ本物にはなれない」と強調する。
システムサポートが海外で成功することで、石川県のベンチャー企業や中小IT企業が飛躍するための道筋をつける。地方のIT企業がどう戦っていくか、自らが最前線に立ち、それを背中で示していく。
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