BYODにも着手 デスクトップ仮想化で業務を変えた米製造業と豪銀行:Citrix Synergy 2014 Report
2日目となった米Citrixの年次カンファレンス「Citrix Synergy 2014」。午前のキーノートでは、同社のソリューションをフル活用して業務改善に取り組むユーザーが登場した。
受注から出荷までをリアルタイムに
5月7日(現地時間)、米Citrixがカリフォルニア州アナハイムで開催中の年次カンファレンス「Citrix Synergy 2014」は2日目を迎えた。この時期のアナハイムは日中25度以上も気温が上昇するが、この日は曇り空で肌寒い朝となったため、会場に向かう参加者もどことなく足早だ。
午前中のキーノートでは、Citrixのソリューションを活用して効果的なワークスペースを作り出しているユーザー事例が紹介された。
最初に登壇したのは、米Tacoでシニアネットワークアドミニストレーターを務めるデニス・ラシール氏だ。温水循環式システムを製造する同社は、1920年に設立。ロードアイランド州に本社を構え、社員500人ほどの中堅企業である。同社では17年前に初めてCitrix製品を採用し、その後、デスクトップ仮想化製品「XenDesktop」、サーバ仮想化プラットフォーム「XenServer」、アプリケーション仮想化製品「XenApp」、負荷分散装置「Netscaler」、遠隔サポートツール「GoToAssist」など、ほぼすべてのCitrix製品を導入している。
具体的な成果が生産性の向上とペーパーレス化だ。以前同社では本部から倉庫に注文情報などを伝える際、紙ベースの書類を利用していた。そのため、顧客からの問い合わせに始まり、担当者のシステム入力、印刷、倉庫への送付、出荷担当者の確認、商品のピックアップ、発送に至るまで、実に数日間も要していたという。
そうした非効率性からCitrixのソリューションを活用してシステム基盤を全面的に刷新。現在では、倉庫のフォークリフトに搭載したタブレット端末で直接注文データを確認できるようになり、リアルタイムで出荷作業を行えるようになった。「どの製品を出荷、ピックアップするかが現場ですぐに分かるようになった。デジタルデータなので重機の油などで破れる心配もない」とラシール氏は笑いながら振り返る。
また、ITガバナンスの課題も解決した。同社はカナダをはじめ複数の拠点を持つが、「小さな会社なのですべての拠点にIT担当者を配置することができなかった」(ラシール氏)。そうした状況の中、社員のクライアント端末の管理が問題となっていたが、XenDesktopを導入したことで、本社のIT部門で一元管理が可能となった。同社では今後BYOD(私的デバイス利用)を進めていくが、モバイル管理ソリューション「XenMobile」を導入するなどして、エンドユーザーのサポート体制を築いていくとしている。
1万5000台のPCをデスクトップ仮想化
次にステージに登場したのは、オーストラリア・シドニーに本店を置く銀行、Westpacだ。同社では従来運用していた自社開発のシステム基盤が老朽化し、セキュリティにまつわる信頼性に課題があった。さらに社員の増加に伴うシステムの拡張性を必要としていた。
そうした中、リソースの最適化を図るべくXenServerを導入してプライベートクラウド環境を構築するとともに、セキュリティ対策を考慮に入れたデスクトップ仮想化を推し進めた。XenDesktop、XenApp、XenAppのクライアントアプリ「Citrix Receiver」、そしてXenMobileを活用して、1万5000ユーザーにデスクトップ仮想化を展開した。「クライアントを集中管理できるようになったことで、1000を超える支店のITサービスの標準化を実現した」と、Westpacでワークスペースサービスデリバリー担当マネジャーのスージー・マン氏は強調する。
今後はさらにモバイルワークスペースを強化することで、支店間を社員が自由に移動して仕事したり、支店同士のコラボレーションを活発にしたりすることで生産性を上げていきたいとした。
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