スマイルワークスが中小企業ユーザーを伸ばし続けるワケ:田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)
今年5月にヤフー子会社などから2億5000万円を調達して話題になったのが、クラウドビジネスで急成長を狙うスマイルワークスだ。
もちろん安定したサービス提供も重要なこと。「2007年に運用を開始してから、障害停止はゼロ」と、坂本社長は信頼性の高さを強調する。広域分散ネットワークの仕組みにしていることも関係する。現在、国内の3カ所のデータセンターを利用し、それぞれがデータをバックアップする。安全性を確保するため、さらに異なる電力系のデータセンターも利用する。
坂本社長は「クラウドがなかったら、当社のような資本力のない企業にこうしたビジネスは展開できなかった」と話す。最大の利点は、ITインフラをリーズナブルに使えるようになったこと。「インフラ技術の革新はすごく、低コストで利用できる」(同)ので、最新のITインフラが登場したら採用を常に検討する。リード/ライトなどのテストを行って信頼性を検証し、テスト環境から本番環境へと移行させていく。
このクラウドの進化が、中小IT企業に大きなビジネスチャンスをもたらさせている。トレンドを先取りする中小IT企業の存在価値が増す時代になってきた。
一期一会
48歳になった坂本社長は、米IBMの事業構造改革を実行したルイス・ガースナー会長時代に日本IBMに在籍していた。IBMは従来のハードウェアからソフトウェアおよびサービスへ事業をシフトするため、坂本社長が当時勤務していたLotusやTivoliなどを次々に買収していった。それが日本IBMに移籍した理由だが、ビジネスパートナーを含めたマーケティングなどを担当していたこともあり、日本IBMでもビジネスパートナー・マーケティングのマネジャーを務めた。
だが、中小IT企業のIT活用を支援したかった坂本社長は独立を考えるようになっていく。日本IBMは基本的に大企業向けサポートをメインにしており、社員数十人、数百人の中小企業を得意にしていなかったからだろう。
坂本社長は2003年にスマイルワークスを設立したが、実は同時に会計ソフトの弥生の社外取締役に就いた。「弥生で中小企業向け業務ソフトを知り、中小市場の存在も知った」(坂本社長)。2007年に弥生を辞めて、スマイルワークスに集中し、クラウド型業務ソフトの開発、販売に取り組み始めた。クラウドはインターネットの登場以上に、IT業界に大きなインパクトがあるという。日本市場にも、そのテクノロジーが変革を迫り始めているのだ。
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