「ボタンを押すだけでクラウドに」 エリソン会長がPaaSを積極アピール:Oracle OpenWorld San Francisco 2014 Report
3日目を迎えたOracleの年次カンファレンスでは、ラリー・エリソン会長が再びキーノートに登場。同社クラウドサービスの強みを繰り返した。講演冒頭では珍しいシーンも。
米Oracleはカリフォルニア州サンフランシスコで年次カンファレンス「Oracle OpenWorld 2014」を開催している。イベント3日目となる9月30日(現地時間)、午後のキーノートには、初日に講演したラリー・エリソン経営執行役会長兼CTOが再び登場した。
冒頭でエリソン氏は「1年前のこの場に私は姿を現さなかった。(国際ヨットレースの)America's Cupで1対8の状況から米国チームははい上がろうとしていた。結果、見事に優勝したわけだが、あのときは申し訳なかった」と陳謝して聴衆を大いに沸かせた。
気を取り直し、エリソン氏は同社が提供する包括的なクラウドサービス「Oracle Cloud」においてPaaSレイヤを重点的にアピールした。
エリソン氏が繰り返し主張するのは、Oracleが今回まったく新しいプラットフォームサービスを実現したということだ。その基盤となっているのが、昨年に発表したデータベースのクラウドサービス「Oracle Database Cloud Service」である。最新版の「Oracle Database 12c」の特徴であるマルチテナント性を生かすことで、ユーザーは既存アプリケーションをオンプレミスからクラウドへ移行すれば、一行もソースコードを書き換えることなくマルチテナント性を継続できるという。
「ボタンを押すだけでクラウドに移行できる。それだけでなく、データは10分の1に圧縮されるためオンプレミスよりも構築、運用コストが下がるほか、データ自体は暗号化される。さらに基盤となるデータベースはインメモリで稼働するため、今まで以上に高速処理が可能になるのだ」(エリソン氏)
加えて、モバイルやソーシャルメディア、アナリティクスの機能もアプリケーションに容易に実装することができるという。
エリソン氏はこう語る。かつて企業システムの世代が移り変わるとき、常にOracleはデータベースをシステムの形態に調和させてきたと。システムがクライアントサーバ型になれば、メインフレームから容易に移行できるようにした。クライアントサーバからインターネット型への移行も同様である。そして今、クラウドの時代において、ボタン1つでデータやアプリケーションをオンプレミスからクラウドへ移動できるようにした。
「もはやOralceのオンプレミスとクラウドは、ほとんど大差ないものになっている。ユーザーは双方を自由に行き来し、自社にとって最適な選択を行うことができるのだ」(エリソン氏)
なお、いかにオンプレミスのデータベースをクラウドに移行するのが容易であるかを示すために、エリソン氏自らデモを行う一幕もあった。「CTOになったのでデモも自分自身で行わないとならない。以前はサポートしてもらったが、今は部下として仕事してくれる人がいない。ただ、デモをすることは楽しいと感じている」とエリソン氏はおどけて見せて、会場の笑いを誘っていた。
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