月面無人探査レースに挑戦中の日本チーム、次なる計画とは?:宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)
Googleがスポンサーとなる民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」の中間賞が発表された。日本から唯一参戦しているチーム「ハクト」も受賞。2016年後半の打ち上げ計画に向けたハクトの取り組みとは――。
この連載で以前取り上げた民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」が、2015年に入ってから大きな動きが続いている。1月26日にXPRIZE財団が計600万ドルに及ぶMilestone Prize(中間賞)の結果発表を行い、世界18チームから5チームが選定された。日本から唯一参戦しているチーム「ハクト」も受賞した。同チームは2月23日、その受賞報告と今後の打ち上げ計画に関する記者発表を日本科学未来館(江東区青海)で実施した。
Milestone Prizeというのは、最終的な月面ミッションを成功させるための要素技術を、地上で立証することを目標に設定された。具体的にはLanding(月面着陸のための飛行制御技術)、Mobility(月面でのロボット走行技術)、Imaging(月面での映像撮影技術)の3部門があり、XPRIZE財団が組織した審判団による書類審査、各種環境試験、フィールド試験などで評価される。審判団は欧米の宇宙関連企業、宇宙研究分野の専門家、宇宙飛行システムやロボットシステムの専門家など8人で構成されている。
議長を務めるデビッド・スワンソン氏は、米空軍に25年勤めた後に、現在は打ち上げサービス企業の米Orbital Sciencesで安全とミッション保証のシニアディレクターを務める。副議長のアラン・ウェルズ教授は英国レスター大学の名誉教授であり、同大学の宇宙研究センターの創設者だ。過去にNASA(米航空宇宙局)を始めとする宇宙ミッションに10以上かかわっており、その功績でNASAやESA(欧州宇宙機関)からも複数回表彰を受けている宇宙研究分野の先駆者だ。
こうした専門家により選出された5チームは、ハクト以外は、米国から2チーム、ドイツとインドから1チームずつだ。米国からは米Astrobotic と米Moon Expressが選出された。Astroboticはカネーギーメロン大学発のベンチャーで、フィールドロボティクス分野の権威が技術開発を主導しており、今回3部門すべてで受賞となった。
残りの2チームは、独Part Time Scientistsと印Team Indusだ。特にTeam Indusは全18チーム中唯一インドから参加しているチームだ。リーダーのラウル・ナラヤン氏を中心に20人強で構成されており、事業&技術アドバイザーには米Lockheed Martin、米Alcatel-Lucent、ISRO(インド宇宙研究機構)などの元シニアメンバーが名を連ねる。ランダー(月面着陸船)とローバー(月面走行車)を開発しており、打ち上げロケットは、ISROのPSLVロケットを活用する予定だ。
インドの宇宙開発自体の歴史は1960年代にさかのぼる。ISROが1969年に設立されてから旧ソ連、欧州、米国などから積極的な技術導入を行い、近年は2008年に月探査衛星「チャンドラヤーン」の打ち上げに成功し、2014年にはアジア勢として初めて火星探査衛星「マンガルヤーン」を火星周回軌道に投入するなど、実力をつけてきた。Team Indusも「月探査にとどまらず、次世代の宇宙探査と航空技術において世界をリードするのがミッション」と掲げている。
関連記事
- 宇宙開発レースに参加している「HAKUTO(ハクト)」の今後
国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に日本から唯一参加中の民間月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」が、今後の打ち上げ計画を発表した。同チームは月面探査車を使った縦孔(たてあな)の調査を行いたい考えだが……。 - 宇宙ビジネスの新潮流:GoogleがSpaceXに巨額出資、その先に描くビジョンは?
2015年に入って早々、宇宙ビジネスを巡る大きなニュースが飛び込んだ。Googleなどがイーロン・マスク氏率いるSpaceXに10億ドルを出資したのだ。その背景にあるのは――。 - 宇宙ビジネスの新潮流:宇宙ビジネス先進国の法整備はいかに進んでいるか
2015年初に政府が決定した「宇宙基本計画」では、今後10年間の宇宙関連産業の政策方針が定められた。この分野で日本の先を行く米国では、どのような政策や法整備がなされているのだろうか。 - 宇宙ビジネスの新潮流:「はやぶさ」に続け! 今日本の民間宇宙ビジネスが熱い
小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げ成功に日本が沸いた。これまで日本ではこうした国家主導の宇宙開発プロジェクトが中心だったが、今や民間企業ベンチャーの参入が始まっているのだ。 - 宇宙ビジネスの新潮流:イーロン・マスクら宇宙ビジネス開拓者たちの横顔
現在、宇宙ビジネスの最前線で活躍するのは、ベンチャー起業家や投資家が中心だ。彼らはいかにしてこの新市場を切り拓いたのだろうか? - 宇宙ビジネスの新潮流:衛星写真を巡る新旧企業たちの攻防
衛星によるリモートセンシング市場が活況を呈している。米国や日本の新旧企業が相次いで参入し、さまざまなアプローチで競い合っている。 - 宇宙ビジネスの新潮流:Googleの月面ロボット探査レース、“第8の大陸”を目指す企業たちの狙い
月面無人探査を競う国際レース「Google Lunar X PRIZE」には、日本を含め全世界からさまざまな宇宙開発チームが参戦している。3000万ドルという賞金総額も魅力的だが、参加企業には別の狙いがあるという。 - 宇宙ビジネスの新潮流:“現代版ゴールドラッシュ”に沸く惑星探査ロボットビジネス
人類移住や資源開発などを目的に、ロボット技術を駆使した無人惑星探査ビジネスが始まりつつある。実際に関連法案の議論が米国では進んでいるのだ。 - 宇宙ビジネスの新潮流:宇宙とITの交差点に巨額の投資マネーが動く
GoogleによるSkybox Imaging買収が好例であるように、衛星分野は宇宙ビジネスにおいてホットな領域である。特に注目すべきなのは、この衛星分野でIT技術の役割が大きく広がっているのである。 - 宇宙ビジネスの新潮流:Googleらシリコンバレー企業が宇宙にのめり込む理由
今まさに、米国を中心とした民間主導型の“宇宙ビジネスビッグバン”が起きている。従来のような国家主導といった重厚長大なプロジェクトではなく、草の根的に大小さまざまなベンチャー企業が積極的に宇宙ビジネスに投資しているのだ。 - 日曜日の歴史探検:到達から探査、そして有人へ――火星探査今昔物語
有人火星探査が発表されて20年がたとうとしています。映画「WALL・E/ウォーリー」さながらに火星で人類を待つ火星探査機は、あとどれくらいで人類に再び会うことができるのでしょうか。 - Google、衛星企業Skyboxを5億ドルで買収──Project Loon推進へ
“残り50億人”のためのインターネット網プロジェクトを推進するGoogleが、小型低軌道衛星による画像サービスを手掛けるSkybox Imagingを買収すると発表した。Google Mapsの精度向上だけでなく、インターネット接続と災害救助に役立てるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.