宇宙開発レースに参加している「HAKUTO(ハクト)」の今後:課題は資金面(1/2 ページ)
国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に日本から唯一参加中の民間月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」が、今後の打ち上げ計画を発表した。同チームは月面探査車を使った縦孔(たてあな)の調査を行いたい考えだが……。
グーグルによる賞金総額3000万ドル(約36億円)の国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE(GLXP)」に参加中の民間月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」は2月23日、今後の打ち上げ計画を発表した。月への輸送手段を持たないハクトは、レースに参加している宇宙開発企業Astrobotic Technology(アストロボティック・テクノロジー)と月面輸送契約を結び、2016年後半に米フロリダ州ケープカナベラルより打ち上げを実施する予定だ。
発表会は、日本科学未来館の地球ディスプレイGeo-Cosmos(ジオ・コスモス)に月面を映し出す中で行われた。ハクトのチームリーダーで宇宙開発を目的としたベンチャー企業ispace代表の袴田武史氏は「宇宙開発に特化したベンチャーだと、高性能な技術でいろいろなチャレンジを低コストでできるようになった」と民間参入の意義について語った。
グーグルがスポンサーとなり、XPRIZE財団が運営するレースには、現在世界各国から18チームが参加。月面に純民間開発の無人探査機を着陸させ、着陸地点から500メートル以上走行、指定された高解像度の動画や静止画データを地球に送信することがミッションになっており、1位のチームには賞金2000万ドル(約24億円)、2位のチームには賞金500万ドル(約6億円)が与えられる。ハクトのチームは、探査車の開発で課題達成が有力視されているとして「中間賞」を受賞。袴田氏は「探査車の技術ではトップ」であることを強調した。
ハクトは、探査車を4輪の「Moonraker(ムーンレイカー)」と2輪の「Tetris(テトリス)」の2タイプを開発している。どちらもボディに炭素繊維強化プラスチック、ホイールに耐熱性に優れた「ULTEM」樹脂を採用。夜マイナス150度以下、昼100度以上という厳しい月面の温度環境にも耐えられるという。また、360度全方位カメラも装備している。
開発にあたった東北大学大学院の吉田和哉教授は「ムーンレイカーの重量は約10キログラムとこれまでの探査車と比較して小型。民生品でも宇宙環境で動作できる実績が上がっている」といい、自身の研究室で小型の人工衛星の設計や打ち上げなどを実践してきたノウハウも生かされているという。
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