Dr.コトー「甑島」をつなぐIT、薩摩川内市×Skype for Businessが示した可能性:「自治体×IT活用」どうする?(1/3 ページ)
「甑島国定公園の誕生」を記念した式典が鹿児島県・薩摩川内市で開催された。本土と神秘の島「甑島」を結んだ式典中継システムとして活躍したのは、意外なほど身近なITシステムだった。「地域コミュニティでの活用」を積極推進する、ある地方自治体の事例を紹介する。
離島と本土 これまで困難だった、自治体が“距離を隔た相手と相互交流する”手段
離れた拠点での社内コミュニケーションをもっと円滑にしたいと考え、メールや音声電話以外の社内情報共有基盤を整える企業が増えている。この一環としてビデオ会議システムを検討する例も多いが、中でも想像以上の効果から、これをきっかけにもっと身近になりそう/企業にも参考になりそうと考えられてるのが、自治体や公共機関でのITコミュニケーション活用の事例だ。
交通網が整備された都市部と違い、地方都市は人口密度が低いところに複数の拠点が離れて存在している。ちょっとした会議のための移動だけで半日/1日仕事になるケースも珍しくない。ゆえに地域間連携におけるIT活用は、より重要な意味を持っている。
今回取材した鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市もその1つだ。薩摩川内市は鹿児島県北西部で東シナ海に面した場所に位置する自治体で、面積は東京23区と同程度ながら人口密度は100分の1ほど。また薩摩川内市の特徴として、九州本土から30キロメートルほど沖合いにある甑島(こしきしま)も市域に含まれている。1日最大4便のフェリー、高速船航路こそあるものの、物理的な交流に際してハードルが存在している。
甑島は上甑島、中甑島、下甑島の3つの大きな島と多数の群島からなる地域で、手つかずの自然が残る神秘の島と言われている。リアス海岸の特徴を持つ切り立った岸壁や起伏に富んだ地形が存在し、比較的暖かい気候と相まった、それは風光明媚な場所だ。人口は3島合わせて5000人ほどで、主要産業は水産業。前述した課題から、鹿児島エリアの観光離島として挙がる屋久島、奄美大島、与論島などと比べると来訪者は少なく、観光開発もほとんど行われてこなかった。島内には高校がないため、進学を機に子供や家族が本土へと旅立っていく姿も見られる。ちなみに、テレビドラマにもなった『Dr.コトー診療所』(山田貴敏氏作)のモデルは、この下甑島の診療所である。
こうした本土の喧噪とは隔離された甑島にも変化の波が訪れている。1990年代には上甑島と中甑島を結ぶ2本の橋が整備され、さらに2015年現在は2017年度の完成を目標に、中甑島と下甑島を結ぶ橋の工事が進んでいる。甑島列島は集落が島に点在しており、これまでの移動手段は船が中心だった。これが橋を通して道路で結ばれることで、島内移動時間が大幅に短縮されるとともに、船の運航時間に左右されず自由な往来が可能になる。
そして2015年3月16日、甑島はその優れた景観などが評価され国内57カ所目の国定公園に指定された。対外的認知の高まりとともに観光客の増加が見込まれている。
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