毎週3分、情シスドリル コレ1枚で分かる「人工知能」:即席!3分で分かるITトレンド
銀行で活躍するIBMのWatsonや、奇怪な絵を出力して楽しませてくれるGoogleのDeepDreamなど、人工知能(AI)は身近な存在になりつつある。ビジネス分野での活用が本格化する前に、人工知能の基本をおさらいしておこう。
この連載は
カップ麺を待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスのみなさんのこんな課題を解決します。
AIの2つのアプローチ
従来の機械は人が操作するか、手順を教えてその通り動かすものでした。「人工知能(AI:Artificial Intelligence)」は自ら学習し、状況を把握し、推論して判断できる能力を機械に与えます。
人工知能には、「人の知的活動を再現する」「人の脳の活動を再現する」という2つのアプローチがあります。
前者は、知能を使ってすることを機械にさせようとする取り組みで、知能そのものを造るのではなく、知的振る舞いを実現できればよいという考え方です。「弱いAI」とも呼ばれています。例えば、馬のように走りたいからといって、馬を造るのではなく、自動車を造ろうという考え方です。
これに対して、後者は、知能そのものを持つ機械を作るという取り組みで、脳の活動を機械にやらせようという考え方です。「強いAI」とも呼ばれています。
“知能”の技術進化が世界を変える!?
「弱いAI」は、あらかじめ「ルール」をたくさん用意しておく「ルールベース」が始まりでした。外国語翻訳者や医者、弁護士といった専門家のノウハウをルール化して組み入れた「エキスパートシステム」が実用化されています。ただ、人がルールを作り、登録しなければならないため、多大な手間がかかります。また、さまざまな知的活動を全て人間がルール化するには限界があり、結果として普及しませんでした。
この状況を変えたのが、「機械学習」です。例えば、ビッグデータを統計的に解析して、「日本の首都」と「東京」の関係を見つけ出し、「日本の首都が東京である確率は99%」といった確率を導き出し、それに基づいて「日本の首都は東京である」というルールを自動的に生成するというものです。ただ、「おなかがすいた」が、空腹の表明や食事の催促なのか、仕事が終わった開放感の現れなのかといった、文脈に即した意味は解釈できず、限界も指摘されています。
一方の「強いAI」は、人の脳の仕組みを模倣して、機械に人のように学習させ、考えさせようというものです。神経細胞(ニューロン)のつながりをモデルにするため、「ニューラルネットワーク」と呼ばれています。これを使えば、人がルールを教える必要はありません。例えば、ネコと人間が映っている画像を大量に見せることで、両者の特徴を自分で学習し、両者の違いを区別できるようになったという事例が報告されています。最近では、脳神経科学の研究成果を取り入れ、より人間の脳の活動に近づける取り組みも進められています。
現状では、前者の実用化が先んじていますが、後者の研究も急速に進んでおり、両者ともに、実用レベルでの適用範囲が大きく拡大するものと期待されています。
参考文献:「クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場」(著者:小林雅一 朝日新書刊)
著者プロフィール:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィールはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤリティフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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