第5回 見落としがちな「マイナンバー記載時期」と「例外・注意点」:税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(3/3 ページ)
中小企業のマイナンバー対応は「士業への委託を考慮した対策」が必要。5回目は「税務関係番号記載への記載時期」と「例外や注意点」、中小企業や税理士に向けたサービス選定のポイントを解説する。
源泉徴収票の本人交付の際に注意すべきこと
年末調整では、本人に交付するためにも源泉徴収票を作成しなければなりません。この本人交付用の源泉徴収票にも個人番号の記載は必要なのでしょうか。
国税庁の「国税分野におけるFAQのQ2-8」では、「本人及び扶養親族等の個人番号を記載して本人に交付しなければならない」としています(支払いをする者=会社などの個人番号または法人番号の記載は不要)。
この本人および扶養親族などの個人番号が記載された源泉徴収票が、実際に「マイナンバー法」に沿ったかたちで使用されるケースは、従業員が医療費控除などのために所得税の確定申告を行う際に申告書へ添付して提出する場合です。
一方、住宅ローンなどでの所得証明のために民間金融機関などへ源泉徴収票を提出するケースではどうでしょう。こちらはマイナンバー法において、個人番号を提供することが認められていないとなります。このため、記載されている個人番号が分からないようにマスキングなどを施して提供するようにとされています。
……このようなことも、2017年の年末調整で源泉徴収票を本人交付する際に、従業員へ注意を促す必要があると言えます。
会社としてより親切な対応を考えるならば、あらかじめ従業員の希望を聞いて、本人や扶養親族等の個人番号をマスキングして印刷できる仕組みやシステムにするのもよいでしょう。金融機関などへ源泉徴収票を提出する予定がある従業員も安心できます。マイナンバー対応の年末調整システムを税理士事務所が選択するならば、このような機能の有無も選定のポイントになると考えます。
もう1点、源泉徴収票の本人交付に際して注意してほしいポイントがあります。税理士事務所が年末調整を行う(委託される)ケースでは、これまで税理士事務所で印刷して顧問企業へ送付し、企業から各従業員へ配ることが一般的だと思います。
しかし、個人番号が入った書類の受け渡しには漏えいや紛失のリスクがどうしてもつきまといます。そこで提案したいのが、第3回で紹介した「マイナンバーを持たない」クラウド型サービスでの運用です。税理士事務所で作成した源泉徴収票データは、クラウドを経由して企業も共有できます。社内に印刷までできる環境があるならば、税理士事務所で作成した源泉徴収票データを企業側で印刷すれば、物理的な送付・受け渡し時の紛失や盗難のリスクがなくなります。
個人番号が記載された源泉徴収票を本人に交付する際の運用でも、「マイナンバーを持たない」かつ「中小企業と顧問の税理士事務所がデータを共有できる」クラウドサービスがベストに近い選択と言えそうです。
まとめ
「税務分野でマイナンバーを記載する時期」や、番号の記載が予定されている申告書などの変更イメージは随時更新され、公表されています。ただし、申告書などの書式については、まだ決定ではありません。これらが決定に至るまでの間に、さまざまな細則などが2015年10月までに各省庁から更新・公表されることが想定されています。
そのため、年末調整の機能を持つ給与計算ソフトの分野では、(多くは制度開始までにバージョンアップなどで対応予定としているものの)仕様が定まらず、ソフトのマイナンバー対応の詳細を公開しかねているところがある一方で、マイナンバーではとにかくセキュリティ対策が大事と、中小企業へセキュリティに関わる商品を売り込む動きも活発になっています。
すべての企業へ影響のあるマイナンバー制度ですが、中小企業の対応にあたっては顧問の税理士事務所と連携した対応を考えることが何より大事です。図2のような「マイナンバーを持たない」仕組みで、企業と事務所が連携して対応いくことがよりよい方法であることも今いちど確認していただき、対応を進めてください。
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